ピティナ調査・研究

まとめ 個と個の音が融合する

何を聴いている?~グローバル時代のための聴力
まとめ
個と個の音が融合する
自分を聴いて、他人を聴く

グローバル時代の聴力とは、あらためて何だろうか?世界には多様な音がある。美しく協和する音もあれば、不協和音もある。過剰に強調される音や、消えてしまいそうな音もある。今まで聞いたことはないが魅惑的な音もある。自分はどの音に共鳴するのか?その音の先には、どんな世界が広がっているのか?

プロセスのイメージ

音楽はまとまった形で示される創作作品であるが、われわれが日常生活の中で見聞きしているのはあくまで音情報の断片である。後者の前後関係を解釈するには、自分で時系列的に聴き取り、読み解かなければならない。音の刺激を得ると、次第にそれらがつながって文脈として認識されるようになり、いくつものパターンが記憶されていく。そしてあるときふと新旧の情報が結びつき、より深い思索や創造が行われる。そうした学びを積み重ねるうちに、音楽家のほんのわずかな音色や間の取り方に感情や思考が聞き取れるように、音情報の断片から多くの情報が得られるようになるだろう。

第1章から第5章まで、聴覚をどのように広げるかについて述べてきた。自分の耳をひらくということは、自分の認知を広げること。すると今まで聴こえていなかったものが、聴こえてくる。ちょっとした音色の差異や変化にも、多くのメッセージが含まれていることに気づく。耳を広げるというのは、むしろ、耳を繊細にしていくことかもしれない。

そうしてキャッチできる音の層が広がっていくと、他人が発する音と出会い、共鳴する層が分かっていく。自分の聴覚を研ぎ澄ませるほど、他者が発する音を掘り下げて聴くことができる。連弾・室内楽・コンチェルトなどのアンサンブルにおいて、「共に合わせる」→「共に創る」という段階になるには、自分をどれだけ知っているのかが鍵になるのだろう。

「『弦楽四重奏はまるで16本の弦でできた弦楽器で弾いているように聞こえなければならない』と言われますが、私はNO!と言いたい。皆が同じ本を読み、同じことを考えていたら会話は面白くありません。それぞれが確立した個人であることが大事。一人一人がしっかり個性を持っていれば、そこから議論が生まれ、互いの考えを共有することができます」(vn.マーク・ダネル氏/2011年ムジカ・ムンディ音楽祭にて

※「音を知覚するプロセス」図を追加しました。

新刊のお知らせ

まもなく新刊『音楽で未来型人材を育てる!5つのリベラルアーツ・マインドを学ぶ(仮題)』が、アルテスパブリッシング社より出版されます。どうぞお楽しみに!

“古今東西の芸術作品には、過去の音楽家や芸術家が発揮してきた才能や感性の断片が刻まれている。彼らは鋭い感性をもって、多くの人が気づかない音色や色彩を発見し、自己や他人の心像風景を読み解き、世の中の動きを察知し、物事の本質や自然の摂理を見抜き、作品を通して人々に伝えた。音楽や芸術の歴史とは、それらが積み重なってできた人類記憶の宝庫であり、さらには「新しい未来を創造したい」という想念も刻まれている。そこに、これからの時代を生き抜くヒントがあるのではないだろうか? 本書では、「未来世代はどんなマインドや思考を、教養として身につけるべきか」 を5つ挙げた。過去の音楽家の作品や生き様からヒントを得ながら、未来社会を考えるきっかけにできれば幸いである。”(まえがきより)

まとめ(続)ハーモニーを見出す

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