ピティナ調査・研究

甦る系譜
金澤攝さんの音源を一旦、すべて配信停止

ピアノ曲事典に390種にのぼる音源を提供していただいていた金澤攝さんの演奏を、このたび、配信停止と致しました。一旦、すべての音源を撤去したいというご意向があり、ピティナ・ピアノ曲事典の編集部は、これに同意しました。金澤さんからは今回の決定に至った経緯を文書で頂いています。下記に掲載致します。


2006年以来、「ピアノ音楽事典」に多数の音源を掲載してきましたが、この度、一旦全てを撤去させて頂くことにしました。ただ漫然と弾き続けても歴史的な脈絡は見えてきませんし、不本意な演奏も多く、現状のままでは作曲家に申し訳が立ちません。

こうした作業はある程度時代の的を絞るなど、予め全体のプランを設定した上で取り組まないと、収拾がつかなくなってしまいます。幸いここ数年の調査によって、ショパン・リスト世代のピアノ音楽の概観については、かなりの見通しが得られました。ピアノの中心世代ともいえる、その実態をなるべく簡潔かつ楽しい形で公開出来るよう、新企画を検討中です。

有名曲を弾いてこそ、演奏家としての王道・本流であるといった認識や、収益を第一とする業界関係者の要求によって、演奏家の活動は画一化し、「定番曲」ばかりが異常なまでに繰り返されています。近年そうしたマンネリに失望する聴き手の声にしばしば接します。今や聴き手の理解や造詣が、演奏者のそれより勝っているという現実を考えなくてはなりません。未知の世界への好奇心や探求心を失った活動は、芸術に関わる者にとって致命的なことです。

実際、知られざる音楽の領域はまさに未開の原野の如く、その広大さと豊かさは想像を絶するものがあります。いかに多くの優れた作曲家が存在し、忘れられていったか。その事実が明かされれば、音楽史は相当な書き直しを余儀なくされます。演奏家の未来はそこに開かれていくことでしょう。

これまでの録音活動について、応援と支持を下さった方々に、深く感謝申し上げます。

2012.7.16 金澤 攝


金澤さんもお書きの通り、新たな企画についても既に準備中です。これまでよりも充実したコンセプトで、ピアノ曲事典の根幹に関わる企画になるのではないかと、編集部としても、非常に楽しみにしております。今回の決定について、どうかご理解を賜りたく存じております。今後も、どうぞご期待下さい。

ピティナ・ピアノ曲事典編集長 実方 康介

金澤 攝(かなざわをさむ)
作曲家、ピアニスト、研究家。1959年、石川県金沢生まれ。70年から74年までピアノを宮沢明子氏に師事。15歳で渡仏、パリに学ぶ。作曲を独学で学び、ピアノのレッスンに並行して広範囲にわたる作曲家の研究に取り組む。78年、知られざる名作を日本に紹介すべく帰国、研鑽を重ね、現在200人の音楽家を対象として研究、演奏を行っている。第7回ラ・ロシュル国際コンクール第2位(1位なし)、第1回現代音楽コンクール審査委員長(故・園田高弘氏)奨励賞、第3回村松賞大賞、金沢市文化活動賞、石川テレビ賞ほかを受賞。エピックソニーよりアルカン選集全8巻、自作アルバムを発表。
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