日本人作品あれこれ 第1回
私は、日本人作品の演奏をライフワークにしているピアニストで、ピアノ教育家の杉浦菜々子です。ピティナでは、2016年から公開録音コンサート「日本人作品の夕べ」シリーズを開催させていただいており、ピアノソロ曲を始め、共演者を迎えアンサンブル作品を録音しています。
クラシックのピアノというと西洋の作曲家の作品が主なレパートリーになると思いますが、私自身は日本人作品に取り組むようになってから音楽の世界が広がりました。
その理由は、存命の作曲家であれば直接会えることであったり、作曲家が書いた本や資料などの自筆を原文日本語で読めることであったり、他にも様々ありますが、一言で言うと、作曲家やその作品を身近に感じられるということかもしれません。
現役の作曲家の新曲を発表する演奏会などに足を運べば、演奏後、作曲家ご本人が拍手で壇上に迎えられ、演奏家、作曲家、観客が新しい曲の誕生の喜びを共有する特別な瞬間に立ち会うことができます。
白金に在する明治学院大学の図書館の中には、日本近代音楽館という日本の近代・現代音楽を対象とする専門資料館が併設されており、作曲家の自筆譜や資料を閲覧することができます。マイクロフィルムを紐解きカラカラと映写機に映し出すと、作曲家の肉筆が生々しく迫ってきます。音符以外にも、ゴシゴシと消された跡であったり、殴り書きの文字であったり、誇らしげな達筆で「昭和〇〇年 完」などと書かれた文字であったり、それらを見るのは心震える時間です。
この連載では、お役立ていただけるような作品に関する情報や、日本人作品を一層身近に感じていただけるようなトピックを掲載させていただく所存です。
演奏会用、生徒さんの指導用としておすすめの曲のご紹介、作曲家や演奏家へのインタビュー、また、私の日本人作品の様々な取り組みの中での徒然なることもざっくばらんに書かせていただきたいと思っています。
どうぞよろしくお願い致します!