コロナ禍の1年を振り返る:その2「オンラインレッスン、今はどうしている?」
アンケート「コロナ禍の1年を振り返る」への回答から見る、ピアノ指導者たちのこの1年の活動。その1では、指導者たちがこの1年どのような内容に関心を持ってきたかを、ピティナウェブ連載「今、わたしたちにできることStay Home, Keep On Music」のコンテンツの閲覧状況から読み解いてみました。
その2では、コロナ禍で急遽注目を浴びた「オンラインレッスン」のその後について、特集します。
- アンケート集計は、2021/4/14時点、205名が回答
- 作曲、和声、編曲、分析
- 発表会、入試前の補講
- 緊急事態宣言が出た時
- 前後の生徒と会わないように隔週で対面とオンライン
- 練習をしてこない子へ動画提出の課題
- 保護者の都合、送迎が間に合わない時
- 中高生のテスト期間中はオンライン
- 遠方(海外含む)、大学生や受験生、帰宅が遅い高校生
感染対策をきっかけに新しくオンラインレッスンを取り入れた方が多かった中、実践していく中で、「オンラインでできること、できないこと」「自分の教室や生徒にはどのようなスタイルが合っているのか」を判断し、各教室ごとに、オンラインレッスン実施の条件が徐々に形作られてきたことが分かります。
その結果、1年経過した現在、「希望する生徒」に実際にオンラインレッスンを継続されている方が約半数、「遠方」「天候や体調、感染状況の悪い時」「ソルフェージュ」のように、条件を限定してオンラインレッスンの選択肢を残している指導者は回答者の約8割に上りました。
また、今までだったら諦めていた、お休みや振替、遠方や遅い時間の生徒などにも、オンラインという手段が増えたことで、レッスンが可能な対象が広がったというご意見もありました。
回答中に言及のあった使用アプリはおよそ多い順にzoom / LINEビデオ/ Facetime / Skype / Google duo / LINE電話 / Messengerなどでした。以下のようなご意見もありました。(あくまでも個人的な見解です)
- zoomは無線よりも有線接続の方が安定します。
- 個人レッスンはFaceTimeで、グループレッスンはパソコンのZOOMと使い分けています。
- 今の所、FaceTimeとiPad proで繋ぐのが音の質が一番良いです。
- zoomを使う場合は、無料の枠は40分なので、週2回に分けています。
- zoomのホワイトボードやMicrosoft Whiteboardを使用して画面共有。タッチパネルディスプレイで五線・音符他自由に手描き。課題の貼り付け、両者で書き込み可。
- 複数のカメラで撮影し、ATEM-miniとStream Deckで複合画面に。
- ピアノの音は、YAMAHAのミキサー MG12XUKで、コンデンサマイク(AKG)2本とダイナミックマイク(Shure)2本でピアノ上下からの音を調整。
- ピアノを弾きながら喋る声はダイナミックマイク、リトミックで動きながら喋る声はピンマイク使用。
- 聞々ハヤえもんは、再生速度と音程を個別に変更できるメディアプレイヤー。移調奏の練習や楽曲調音にも重宝。
様々なオンラインレッスンの形を見聞きし、試行錯誤した後、現在はどのような形で続いているのでしょうか?
- 4歳児さんは動画をやり取り、小学生と中学生はFaceTime、LINEビデオ通話と、年齢により使い分けています。
- Skypeで幼児からレッスン。喋り方や小道具の工夫などをして、軌道に乗っています。
- LINEビデオ通話、Skypeを活用。スマホとパソコンを駆使し、手元とペダリングを確認。
- 動画を送ってもらい、添削(テキスト、動画)をして返す、LINEビデオでのチャットレッスン
- 事前に送ってもらった録音をもとにZoomでレッスンを行う→レッスンの録画を共有し,復習に活用→あと一歩だった曲は次回のレッスンまでに録音を送ってもらい最終チェックする。
- お休みの時はLINEで動画提出
- 遠方、大学生などはオンライン中心
- 発表の機会のなくなった生徒たちのために、毎月最終週に動画を撮りました。その結果、昨年までより生徒自身の曲を仕上げる意識が格段に上がりました。
- コンペの4期別作曲家のお話を面白おかしく説明したり、日本の歴史と繋いでみたり、演奏の違いをわかる様に短歌を作ったり、音を楽しむと言う私のモットーを100%楽しんでいます。
「オンラインレッスン」と一言で言っても、対象の生徒の特性によって、アプリやレッスン方法、レッスン内容を工夫して併用、使い分けをしている指導者も多いことが分かります。
- zoomでグループソルフェージュ
- zoomでリトミックレッスン
- 作曲、和声、編曲、分析などのレッスン
- LINEのグループビデオ通話で、小学生高学年を対象にソルフェージュ。楽典やコードネーム、曲作り、作曲家のお話などを今も継続しています。
- リズムやソルフェージュの課題を叩いたり歌ったりしたものを、LINE動画で送ってもらう。
- ソルフェージュについては、対面レッスンがないと正しい音程がイマイチ分からないままの場合もあるので、スマホやタブレットでカタカナで表示されるチューナーアプリを横に置いて歌ってもらい、音が低すぎたり高すぎたりしたら、小さな子供でも自分で視覚的に分かるようにしてもらっています。
- ミニコンサート(大人・子ども)、弾き合い会
- コンペ、ステップ、発表会の前の教室内での弾き合い会
- 月1回、教室のLINEグループでのコンサートで交流
- 大人の生徒さんの親睦会
- 保護者との交流会
- 最初の緊急事態宣言の時に、何かしなくては…と思い、zoomで週末演奏会を開催していました。ソロあり、親子連弾・姉妹連弾あり、歌ありなど、画面の中で音楽って楽しいと思える瞬間、笑いながら同じ時、同じ音楽を共有出来ることの素晴らしさを経験出来た事は私の宝物です。
- 休校期間中には、教室からの無料イベントとして、オンライン音楽クイズ大会を週2~3回、zoomで開催していました。日頃のレッスンではなかなか取り入れられない音楽史や作曲家の名前、鑑賞、リズム、楽典などの内容で、参加者からは好評でした。
オンラインの特性を活かして、現在不足している大人数での集まる機会を工夫して作っている様子が分かります。日頃の補完に留まらず、今までになかった楽しい企画も出てきたようです。
- 感染に関わらず、地方なので前向きに取り組みたい。
- 体の使い方や、音色、タッチなどについては、オンラインのみだとやはり限界があり、対面の方がベターだと考えています。ですが、オンラインのみでもやれることも、これまで想像していた以上にあることも、実感しています。
- これからはレッスンの中で出来ないことをオンラインで補充したり、サポート的に対面のレッスンと並行していこうと考えています。
- やっぱりナマが一番なので、学校が休校にならない限りは極力、対面レッスンをしていく。
- この1年で、オンラインレッスンができる事が、教師側や生徒さん側にも理解できたので、困った時のオンライン!という選択肢としては残しておきたい。
- オンラインも上手に併用して、お休みや振り替えなどを減らし、スケジュール調整に悩む手間をなくしたい。
- 対面レッスンの方が中心ですが、今後は購入した機材を生かしてオンラインのみのレッスンも募集していこうと思っています。
- グループのオンラインソルフェージュなどは、子供たちが生き生きと参加してくれたので、長期のお休み中にはやっていきたい。
- オンラインの可能性を広げること、感染予防対策をしながら対面でできることの双方向で研究したい。
- 最初は機材をいろいろと揃えた方が良いのかなと思っていましたが、こちらも生徒さん側も無理なく準備できるもの(スマホやタブレット1台)でできる方が、オンラインレッスンへのハードルが低くなると思いました。レッスンに慣れてくると、シンプルな環境でも満足感のあるレッスンができるなと感じました。
- 常に情報は収集し、使い勝手が良さそうな通信ツールがあれば、取り入れていきたい。
- 具体的に指導しにくいタッチの問題など、今後もオンラインならではの伝え方を工夫し続け、オンラインレッスンのレベルを上げたい。