こどものためのJAPANピアノ作品集1:『こどものための現代ピアノ曲集1』
前回の「子どものための ピアノ曲 MADE IN JAPAN 」では、中田喜直氏の「こどものピアノ曲」を特集し、大変ご好評いただくことができました!今回は、16名の日本人作曲家による「こどものための現代ピアノ曲集1」をご紹介します。民謡風、クラシック風、その2つを足して2で割った風など、様々な作品が収まっているこの楽譜。「あの子には○○風の曲を!」「この子は○○風が好きかしら?」など、生徒さんたちの好みを探ってみるのも面白いですよ!
こどものための現代ピアノ曲集1」(春秋社発行:桐朋学園付属子供のための音楽教室編)は、今から40年前に発行されました。各地のコンクールやピティナピアノステップの課題曲にも、時々採用されているこの楽譜。私は桐朋の音楽教室に通っていたこともあり、幼少時から馴染みのある楽譜でした。「こどもが弾くものではありますが、作曲者には、それぞれご自分の好きな様式で書いてくださるようにお願いしました」と"編集者の言葉"にもある通り、ここには様々な雰囲気の作品が集まっています。難易度としては、ツェルニー30番やソナチネ程度のものが多いですが、中には臨時記号や変拍子が頻繁に現れる「現代曲」的な作品もあります。
☆もくじ☆ 安部幸明:こどものえほん/別宮貞雄:組曲「にしきめがね」/林光:ソナチネ/石井歓:こどもの世界/石桁真礼生:組曲/入野義朗:ある日のペペ/清瀬保ニ:こどものための4つの小品/小山清茂:かごめ変奏曲/丸田昭三:ソナチネ/三善晃:ソナータ形式による練習曲/諸井誠:ソナチネ/中田喜直:変奏的練習曲/小倉朗:コンポジション/宍戸睦郎:ソナータ/戸田邦雄:ソナチネ/湯山昭:3つの自由画
生徒さんとも、長いお付き合いになると、「きっとこの子はこの曲好きだな」と分かってくる部分がありますね。子どもにとって、好きな曲との出会いには絶大な効力があるように思います。この曲を弾くといい気分になる、1日に1回はピアノに触りたくなる、などなど...。この曲集には、民謡風、クラシック風、2つを足して2で割った風など、外国の教本ではなかなか出会えない雰囲気の作品が詰まっています。子どもにとって、新しい「好き」に出会えるチャンスかもしれません。そこで以下ご参考までに、どのような雰囲気の作品をどのような子に与えるか、私の生徒を例に考えてみたいと思います。
清瀬保ニ作曲 「こどものための4つの小品」より
「I モデラート」&「IV モデラート」
作曲者の清瀬保二は、日本古来の音階を愛好した"民族日本派"の作曲家。その素朴な民謡風の音楽には独特な味わいがあります。この土臭~い感じ(「I モデラート」)、 そして天真爛漫な感じ(「IV モデラート」)がピタッときそうなのは...、昆虫好きの野生児くん (^O^)/ !(似た雰囲気を持つ作品には、小山清茂:かごめ変奏曲、小倉朗:コンポジションなどがあります。)
石桁真礼生 「組曲」より
「II ガボット」&「III カンティレーナ」
きちんとしたハーモニー(「II ガボット」)と、緻密な対位法的構成(「III カンティレーナ」)を持つこの曲は...、いつも宿題をちゃんとこなしてくるおりこうさん (^_^) に!作曲者の石桁真礼生は、ドイツ古典派に基礎を置く"エリート西欧派"。中でもこの曲は、簡潔かつ流麗なクラシック風の作品となっています。(似た雰囲気を持つ作品には、中田喜直:変奏的練習曲などがあります。)
安部幸明作曲 「こどものえほん」より
「おどるのははじめて」&「オルゴールを聞きながらおやすみ」
大人びた雰囲気、時に嘆かわしいこのメロディーが気に入りそうなのは...、演歌好きのオシャマさん (*_*) 。「クラシック風」の和声の中に、時に見え隠れする「民謡風」の旋律(「おどるのははじめて」&「オルゴールを聞きながらおやすみ」)。作曲者の安部幸明は、"中間折衷派"として、和洋折衷の音楽を試みてきた作曲家の一人でした。(同じ雰囲気を持つ作品には、宍戸睦郎:ソナータ、三善晃:ソナータ形式による練習曲、湯山昭:三つの自由画などがあります。)
様々な様式を持つ作曲家が、各々カラーを生かして書いたこの曲集。個性的な作品の数々は、子どもたちの感性を耕す教材として、強力な味方となることでしょう。また、いわゆる「現代曲」的な作品(別宮貞雄:組曲「にしきめがね」、入野義朗:ある日のぺぺ、戸田邦雄:ソナチネなど)は、ソルフェージュ的な音感を磨く教材としても、利用価値が高いと言えましょう。レッスンに彩りを添える曲集の一つとして、是非この「子どものための現代ピアノ曲集1」をご活用ください!