ピティナ調査・研究

第19回 ソナタ第16番 Hob.XVI/14 ニ長調

ハイドンの世界
SONATA No.16 Hob.XVI/14 Allegro moderato-Menuet-Trio-Finale

初期の作品の中では規模も大きく、構成もしっかりとしています。私はこのソナタがとても好きなのですが、なかなか弾かれる機会が少ない曲です。
1楽章は、ハイドンが良く使ったAllegro moderatoという表記がされています。ニ長調のあたたかい雰囲気からロ短調に転調する箇所は本当に美しく、少し感傷的な雰囲気をもっています。その後ものどかで淡々としたメヌエットに移っていきますが、トリオでは一転、調号が書かれていない不安定なメロディーが聞こえてきます。ニ短調のような、美しい三声体がしばらく続き、ふたたびメヌエットに戻ります。フィナーレもハイドンらしさに溢れていて、チャーミングな間の取りかた、転調のしかたなど、どれをとっても素晴らしいソナタだと感じます。

第1楽章
第2楽章
第3楽章
ハイドンひとことメモ
「第19回 ハイドンのクラヴィーア・ソナタ ─ 真の曲数について ─」
現在、多くのピアニストがレパートリーとして弾いているハイドンのクラヴィーア・ソナタは、ハイドンが作曲活動のはじめに取り組んだもののひとつで、1795年、ロンドンで最後のクラヴィーア・ソナタを書き終えるまで、生涯中断することなく創作し続けていったジャンルです。50曲程といわれている現存するソナタの約半数が1770年以降に書かれ、あとの2/3強がそれ以前、1/3弱がそれ以降に書かれたといわれています。
各出版社別に見てみると、曲数については次のようになっています。
52曲:旧全集(ブライトコップ社のハイドン全集の中での校訂者Paslerが記す)
54曲:フェーダー(Georg Feder校訂、ハイドン研究所の新全集版)
62曲:ウィーン原典版シリーズ(Christa Landon校訂、未発見曲7曲含む)
ハイドンのソナタは、偽作が含まれていることが近年指摘されています。書いた事は、はっきりしていても、楽譜が残っていないものもあり、真の曲数は分かっていません。
主にいつも私が参考にしているのがウィーン原典版で、未発見曲7曲は第16回第17回の連載で取り上げましたので、ぜひお聴きください。