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テーマ型情報交換会レポート:低年齢の子どもの指導を考える

テーマ型情報交換会レポート
低年齢の子どもの指導を考える

2022年1月27日(木)、テーマ型情報交換会が実施されました。「低年齢の子どもの指導を考える」というテーマのもと15名の指導者が集まり、指導状況や工夫していること、使用している教材についてお話しいただきました。たくさんのアイディアを共有しましたので、その一部をQ&A方式でご紹介致します。

何歳から教えていますか?

お集まりいただいた先生15名に現在の最年少の年齢を伺ったところ1歳が1名、2歳が5名、3歳が7名、4歳が2名でした。

  • 3、4歳から始める方が多いですが、次の4月から2歳になったばかりの生徒の入会が決まり、現在準備しているところです。
    普段の低年齢児レッスンでは、リトミック的な内容のほか、鍵盤で山登りしよう!と低いところから高いところに上がってみたり、100均で売っているポンポンを「1と2の指でつまんでみよう」「今度は1と3で…」というようにお皿からお皿に移す練習をしたりしています。1と2の指でつまむのは簡単ですが、1と4、1と5の指でつまむのは小さい子には難しいので、指先を使う訓練になります。テキストは主に「プレ・ピアノランド」(樹原 涼子:著/音楽之友社)を使用しています。(三幡 奈美枝先生/愛媛)
  • 昨年から1~3歳コースを設定しました。主に保護者へのコーチング、ピアノ学習の向き合い方を理解してもらう趣旨でやっています。最初に来た生徒は1歳児の男の子で、保護者には将来ピアノを習うための準備、という趣旨を説明して始めました。石黒加須美先生のリトミックや、脳トレ、挨拶、リズムの運動、グーパーの指の体操、好きな歌を聴かせる、鑑賞の時間などの複数のプログラムを猛スピードで切り替えて進めています。鑑賞は短くリズミカルで盛り上がる曲だと集中して聞いてくれますよ。歌のときは弾くと自分が歌えないのでDVDを流しています。生徒の集中力が切れたときは外に出て「丸を探そう」と誘うとご機嫌に取り組んでくれますが、それだけになってしまうので室内のプログラムをやった後にしています。(勝場 かおる先生/広島)
  • 1から5まで数字が数えられること」「12色の色鉛筆をなんとなく区別することが出来ること」を条件にしています。3歳の誕生日を迎えてすぐ習いに来る生徒も多いですが、個人差があり中には数字が数えられない子もいます。その場合は保護者とよく対話し、(リトミックなどの導入ではなく)ピアノレッスンをご希望の場合は「他の人と比べない」ことを納得してもらってからスタートする。テキストにこだわらないご家庭でしたら、リトミック要素を多めにして始めています。「ともだちわーく」(石丸 由理:編著/ドレミ出版)のCDを使って音が流れている間にシール貼りや塗り絵をすると喜んで取り組んでもらえます。(道場 英子先生/大阪)
ピアノを弾く前段階のレッスンでは何をしますか?
  • クラスターでリズムを感じる鍵盤遊びをオリジナルで作ったり、「コンコンクシャンのうた」など季節の歌を歌ったり、視覚的に楽しんでもらえるよう子どもに人気の絵本を使ったりしています。例えば「おべんとうバス」(真珠 まりこ:作 ひさかたチャイルド出版)という絵本に曲をつけて、本の内容に合わせて「はーい」と返事をしてもらう、ということをしています。
    個人教室なので出来る範囲は限られますが、身体を動かすこともしています。またマグネットを使って線と間を感じてもらったり…
    月謝をもらう以上は生徒のためになることをしたいですが、本人の気が乗らず転がっているだけのこともあります。(佐藤 秀佳先生/栃木)
五線の上にマグネットを置いて自分の感覚で「線」「間」を学びます。(佐藤先生)
佐藤秀佳先生のレッスングッズ。色や絵を多用して子ども心をくすぐります。

「コンコンクシャンのうた」(曲:湯山昭)の型紙は様々なWebサイトから配布されています。「コンコンクシャンのうた ペープサート」でご検索下さい。(本部事務局スタッフ)

  • 現在2歳の子が保護者とともにレッスンを受けています。「おんぷの学校」(江口 寿子:著/全音楽譜出版社)をテキストに使い、季節の歌を歌いながら、簡単なリズム打ちをいろんな楽器で取り組んでいます。それから、人形を「どれみの階段」の上で動かして音階の感覚を覚えさせたり、ミュージックベルを音階カードの上に置いて、先生の歌に合わせてベルを鳴らしてもらったりしています。気分が乗らない日は人形に声をアフレコして興味を引いています。(船留 麻衣子先生/大阪)
宮戸有子先生製作の「どれみの階段」(船留先生)
大きめのサイズのため、上にミニ鉄琴をのせて使用できます。
  • 最近入ってきた生徒がまもなく4歳になります。指、リズム、ドレミ、鍵盤の4本柱を低年齢の子にも適応できるように、指の体操をしたり、歩きながら楽器をたたいたり、ドレミの歌などを歌いながら「音の階段」を上り下りしたりしています。(「音の階段」は)いろいろな先生方の実践等を参考にさせていただいて、手作りしました。(川村 いずみ先生/福島)
川村先生自作の「音の階段」ブロックに色画用紙で飾り付けしています。
  • 2歳の生徒を教えています。それまでは年少以上の経験しかなかったので試行錯誤しながらの対応です。マラカスなどを使ってのリズム打ちや、お手玉をつかって握る練習などをしています。
    先生がピアノを弾いている間だけ塗り絵をするのが子どもたちのお気に入りで、10分くらいそれに費やすときもあります。4歳の息子に協力してもらい反応を確かめ、毎週手探りで取り組んでいます。(A.E.先生/栃木)
お手玉を握ることで、ピアノを弾く手の形や筋肉の感覚を覚えます。 その他のグッズもカラフル!(A.E.先生)
教材は何を使っていますか?
  • それまでは年長以上の子だけだったのだが、最近2歳の生徒が入会し、以降小さい子の問い合わせが増えました。「よいこのリトミック」「ゴーゴー・リトミック」「ぴよぴよピアノ」「よいこのピアノ」(遠藤 蓉子:著/サーベル社)などで研究中です。先生方のインスタグラムを見ていて「知育」が良さそうだと思ったので勉強会に入り、自分のレッスンに導入しました。その結果、子どもの集中力が上がりました
    今はお返事、名前を言うところからレッスンをスタートすることをルールにしています。
    その後は動物と果物・野菜のカードを使ったリズムゲーム(2つ/3つの言葉でのリズム打ち)をし、季節の歌を歌います。コンコンクシャンの歌は小学生も好きですよ。
    2歳の生徒、2か月間はずっと見ているだけで反応がなかったが、最近になって急に「家で歌い始めました」「先生の真似をして踊ってます」と保護者から報告があり、安心しました。
    下の子のお世話など、保護者がともにレッスンに入れない場合、音源を流して一緒に体を動かしています。ただ、生の音を聞かせられないので、そこが課題です。(武藤 ルリ子先生/広島)
  • バスティンピアノパーティ」(ジェーン&ジェームス・バスティン:著/東音企画)を使って"赤の手、青の手"に合わせて手袋やカードをそろえて色で右左がわかるようにしています。ただ、子どもによっては今使っているものとは別の教具を持ってくる子もいて難しい。その場合は、今やっている課題が終わったらやりたいワークをやろうね、と促しています。(甲斐 水貴先生/宮崎)
  • 数種類の導入テキストをピアノに置いて、そのときの興味によってテキストを使い分け、回数を重ねてからメインでお渡しするものを決めていきます。特に男の子は活発で興味が移ろいやすいと感じています。中でも興味がわきやすいのは「プチ・わかーるピアノ」(田村 智子:編/全音楽譜出版社)です。また"ピアノレッスンとはどういうことなのか""自分だけがレッスンを受けている状況が分からない"と思っているかもしれず、保護者や下のお子さんも巻き込んで一緒にレッスンすると集中するのかも…と考えているところです。(鍵矢 知佳先生/愛媛)
  • バスティン、ゴーゴーピアノ等とにかくあらゆる教材をさらってみて自分に合うものを探しました。その中で、最短で弾ける教材と思ったのは丸子あかね先生の教材です。現在は「リズムのほん」(丸子 あかね:編/学研)全5冊を全員にやってもらっています。年少でも取り組めますし、早い子は年中のうちに全巻を終えることが出来ました。
    また、「ちいさなおんがくかい」(丸子 あかね:編著・轟 千尋:作曲/学研)も良いです。すべて先生の伴奏パートつきで、「1の指はド」と認識してしまわないようにひとつの音をいろいろな指で弾いたり、「グー」や「パー」のクラスター奏法から始まるため、2歳2ヶ月の子でもできました。伴奏が美しいので「上手に弾けた!」と達成感を感じてもらえるし、保護者の反応も良いのでお勧めです。(野澤 加奈枝先生/東京)
保護者も巻き込んで一緒に取り組んでもらうために工夫していることはありますか?
  • リズムカードの代わりにひらがな50音カードを用意して、それぞれの音から始まる言葉(好きなものや、お子さんの名前)に合わせてのリズム打ちをしてもらうようにしました。楽譜や音符に馴染みのない保護者でも、50音カードなら気軽に取り組めますよね。
    ピアノを弾きたがる生徒にはピアノを使ってリズム打ちをさせることもあります。
    とにかく「ほめる機会を増やす」こと、「家でテキストを開いて次のレッスンまで保護者と共に宿題をしてくる」ことの習慣作りを重視しています。(M.U.先生/宮崎)
これまでの話題に出てきた物の他に使用しているグッズはありますか?
  • 自分の娘が小さい頃、色付きの柔らかいブロックを使って歌いながら積み上げたり音と体の動きを組み合わせるワークをしていました。現在は幼稚園児の生徒に使っています。♪ド~レ~ミ~と歌いながらひとつずつ積み上げ、1オクターブ分積んだら「どうする?お片付けする?それとも壊しちゃう?」と生徒に聞き、お片付けなら♪ド~シ~ラ~ソ~と歌うのに合わせてひとつずつ片付けます。壊すなら、生徒がタワーになったブロックを壊すのに合わせて高い音から低い方にクラスターで音をつけます。子どもたちには壊すのが人気です。
    柔らかい素材なので崩すときに体に当たっても、万が一生徒さんが投げてしまっても安全です。男の子のレッスンで特に活躍しています。(里見 恵先生/千葉)
やわらかブロック
ブロックはやわらかいので小さいお子さんでも安心です(里見先生)
  • 鍵盤をなかなか触らない生徒には、パンダのハンコを鍵盤の上に置いて「パンダさんで 弾こう」と誘うと興味を示してくれます。(笹島 陽子先生/富山)
  • ボーネルンドしわくちゃボールをつかって、クラスター奏法の練習をしてもらったり、握る事で手の形を覚えてもらっています。ボーネルンドは知育グッズの会社として保護者の間でも有名なので、ただのボールを使うよりも反応が良いです。(野澤 加奈枝先生/東京)
参加しての感想
  • 現在、基本的には4歳以上にしていますが、以前は2歳児も受け入れていました。先生方の教えてくださった教材を調べて今後に活かしたいです。(R.T.先生/広島)
  • 低年齢児の指導のアイディアや接し方、レッスンの進め方について、たくさんのヒントをいただくことができました。どんな生徒を育てていきたいかという軸をそれぞれの先生がお持ちで、もっとお時間があれば、保護者との関わり等深く伺いたいなあと思いました。
    このような機会をいただき、ありがとうございます。(川村 いずみ先生/福島)

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