ピティナ調査・研究

第34回 幼児のレッスンでのコミュニケーションのポイントは? 石黒加須美先生

指導者が答える お悩みQ&A
幼児のレッスンで特に気を付けたい、保護者や生徒とのコミュニケーションのポイントを教えてください。
石黒加須美先生にお答えいただきました。
いしぐろ・かすみ◎かすみミュージックスクール主宰、ピティナ一宮ステーション代表、ピティナ名古屋支部会長、当協会評議員
保護者の方とのコミュニケーション

小さなお子様のレッスンにはどうしても保護者のご協力が不可欠です。普段のレッスンから心がけてきたことですが、今回の新型コロナ感染症の拡大に伴い、安心してレッスンが続けられるように、保護者の皆様に早め早めに私たちの気持ちをしっかりご理解頂くために、メールなどで連絡をすることを大切にしてきました。

レッスン継続の必要性、適宜教育の大切さを伝える

2月の時点で保護者の方々へ、レッスン継続の必要性と、そのためにスクールが行う感染対策についてのお知らせをお送りしました。そこで改めて、日頃からの様々なご理解、ご協力に感謝するとともに、「音感・ピアノ」の継続的なおけいこがその後の進歩にとってどれだけ大切かをお伝えしました。リズム感、拍子感、リズムパターン、想像力、創造力、アンサンブル力、ソルフェージュ能力など、生徒それぞれの成長時期に合わせた大切なスキルを、タイミングを逃さずしっかりとつけてあげるため、いつでも子供達が受け取れる様、可能な限り発信し続けたいということを、お手紙に綴りました。

この時期だからこそ「特技」を伸ばし、「苦手」も克服

そして、この様な暗い時期だからこそ、子供達に自宅で出来る「特技」を伸ばして心に栄養を与え続けて欲しいこと、自宅での時間がある時に、いつもはなかなか時間を取れない、苦手な部分への練習も向かいやすくしてあげたいこともお伝えしました。

レッスンのスタイルについて丁寧に説明

2月からは参加できない方のためにグループレッスンのライブ配信を始め、3月からはレッスンも徐々にオンラインに変更していきました。6月から対面レッスンを再開しましたが、まだ心配な方はもちろんオンラインでも構わない旨を丁寧に説明しています。またその際には安心してスクールに通って頂けるように、具体的なコロナ対策を提示し、徹底している旨を周知する努力をしました。

常に保護者に寄り添い、子どもの成長を一緒に見守る姿勢

毎回のレッスンについて、直接お話をする機会がない時には必ずお電話やメールでレッスンの内容や様子をお知らせしています。また、お母様からのご意見・ご要望・ご質問をいつでも受け付けていることをお話しています。このように常に保護者の方に寄り添い、大切なお子様の成長を一緒に見守っていることをご理解頂くことが一番大切なことですね。

幼児に対する声かけ・レッスンのポイント

「コミュニケーション」という視点から、小さい生徒さんのレッスンの場合に特に留意しているポイントをお伝えします。

レッスン時間をしっかり配分する

まずは個人レッスン時間(20分~40分)を「音感・読譜・うた・リズム、拍子・脱力・ピアノレッスン(表現力・テクニック等)・五線ノートなど宿題の確認・予習」にしっかり配分しておきます。

子どもの目線の高さで、明るい声のトーンで

今はレッスンの始めに握手やハグが出来ない分、しっかりと顔を子どもと同じ高さにして目線の高さをしっかりそろえて、少し高くて明るい声のトーンでまず挨拶することが大切です。先生の顔と表情で、「あなたに会えることを楽しみに待っていたよ!」という気持ちを伝えるようにします。マスクをして距離を取っていても、子どもの感じ方が違います。

短く簡潔に、感情表現を豊かに

喋る基本は、分かりやすいことばで短く簡潔に、ということです。声のトーンの抑揚、緩急をつけると効果的です。突然「シーッ!」と言って黙ってみたり、子供と一緒に「びっくり!」してみたりと、感情表現を豊かにすると、子どもの注目を集め、伝わりやすくなります。

先生が楽しんでいる様子を子どもに見せる

「え~っ!見て見て!」「面白そうだね。」など、ついつい子どもが覗き込んでしまうような言葉がけをして、先生が楽しむ様子を子どもも見せることで子どもを惹きこみます。

子どもの言葉をしっかり拾う

子どもがポロっと言った、発した言葉を先生が拾って答えてあげると、子どもも受け入れてもらったことを感じ、こちらの言葉も受け取ってくれやすくなります。

子どもの気持ちを尊重する

「今、こっちの方がやりたい。」「今日は眠い」などという子どもの気持ちは、認めてあげてください。そして、「そうか○○したいね。まずやってみようか」「眠いのね。お母さんのお膝で聞いていてね」などと、提案してあげるとよいでしょう。

レッスンの順番も柔軟に

レッスンの順を準備していたとしても、子どもの様子を見て、順番に関係なく柔軟に対応できるとよいですね。

活動は留まらずにジグザグと

ピアノの前にずっと留まっていることなく、「ピアノ→机→ピアノ→足踏み→ピアノ→○○」などと、活動をジグザクとさせると、子どもの集中力と興味を保つことができます。

体のより大きな部位を使って分かりやすく

子どもの理解を促すには、体でまず乗らせることです。「指で(ピアノを弾く)」よりも→「グーで(たたく)」よりも→「手拍子する」よりも→「足踏み」のように、小さい部位よりも、より大きな部位を使った方が小さい子は簡単に出来、そしてしっかりと吸収できることを知っておくとよいでしょう。

オンラインレッスンでは言葉と視覚をうまく使う

オンラインで子どもと離れている時は特に、伝えたいポイントを言葉でしっかりと伝えることです。目で見てはっきりと理解できるようにするために、〇×、OKやもう少しなどのサインが画面上ですぐに分かるように、プレートを作りました。色々なメッセージを作りましたが、「大変よく出来ました」や「ちょっと シー」などが、一番出番が多かったように思います。また、小さな子ども達の気持ちが離れていきそうな時には、パワーポイントや動画アプリを使うのも有効でした。zoomの画面共有や書き込みもよく使ったものです。

レッスン内容の動画や資料を送信

基本的にはこのコロナの状況の中では、年中さんまでは保護者1人同伴、年長以上は1人で参加することにしていますので、お母様がレッスン室に入られないご家庭へはレッスン内容を携帯電話で動画を撮ってお送りするようにしています。またレッスンの前後に、書き込みした楽譜やポイントを送る時には、「よく頑張ってレッスンできました」や「次のレッスンも楽しみ」などのプレートもいつも入れていました。

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