テーマ型情報交換会レポート: 「導入期の教材の使い分け」について考える
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テーマ型情報交換会レポート「導入期の教材(ブルグミュラーに入るまで)の使い分けについて考える」
2021年8月3日(火)、テーマ型情報交換会が実施されました。「導入期の教材(ブルグミュラーに入るまで)の使い分け」というテーマのもと11名の指導者が集まり、使用している教材や指導法などをお話しいただきました。たくさんのアイディアを共有しましたので、その一部をQ&A方式でご紹介致します。
どのような基準で教材を使い分けていますか?
- 入会時は年齢で使い分けています。2歳の子には石黒加須美先生の「おんがくあそび」や音符の塗り絵をやり、その後「ゴーゴーピアノ」に移ります。
私は石黒先生の”スパイラルラーニング”の考え方に共感していて、ほぼ共通の内容で少しずつ違う課題をたくさんこなすことで力がつくようにしています。(南 麻紀先生/兵庫) - 生徒さんの性格、家庭のサポート体制、生活の中での優先順位などから判断しています。慎重なお子さんには「ぴあのどりーむ」、音楽をとらえる感覚が優れている子には「なかよしピアノ」、家庭でも取り組む時間が多い子には「オルガン・ピアノの本」と使い分けている。
中期には「はじめてのギロック」、「バーナム」を追加。なるべく4期に触れることを意識しています。(天野 玲美先生/神奈川)
2,3歳の初めてピアノを習うお子さんに合う教材は?
- バスティンの「パーティー」シリーズが、楽譜ではなく絵で書いてあるのでおススメです。右手が赤、左手が青で書かれているので、左右が分からなくても色で示すことができます。
しかし、教本だけでは飽きてしまうので、リズムや音階、聴音を遊び要素を含めて教えるようにしています。(H.K.先生/神奈川) - 年齢で決めつけずに、その子の出来る範囲でやるように気をつけています。石黒加須美先生の「乳幼児の発達とレッスン」を読んで2~3歳の子ができること/できないことが分かり、より柔軟に対応できりようになりました。
急いでテキストを進めるのではなく、近くの公園で音探し、葉っぱで音符作りなどをしながら楽しむことを大切にしています。(柳平 淳哉先生/長野)
リトミックの教材でおススメは?
- 毛糸をつかって音符の長さを感じてみたり、いろいろなものを触って指先の感覚を鍛えたり、部屋の中の家具を触って高低差を感じたり。音が鳴っている間は動いて止んだらストップする、おはじきやビーズを混ぜてどんな音がするか聞いてみる、窓を開けて風の音を聴いてみる…など、教材がなくても身近なものを使って教えられますよ!(S.S.先生/栃木)
- 本を読むだけでは想像がつかないので、YouTubeで検索すると参考になります。「リトミック フープ」で検索するなどしてみてください。沢山の動画が見れますよ!(柳平 淳哉先生/長野)
- 「ミッキーのこのおとなあに?」(※現在絶版)はCD付きで、絵も沢山あるので子どもたちも楽しみに使っています。(南 麻紀先生/兵庫)
1曲あたりどのくらいの期間をかけますか?
- あまり同じ事を繰り返さないように気をつけながら、1,2回でどんどん丸をあげて先に進んでいます。小さいうちは特に、テキストにかける時間よりもリトミック的な取り組みに使う時間が多いですね。(貝島 直子先生/福岡)
- 完璧は求めず、曲ごとにひとつポイントを定めてそれをクリア出来たらOKにしています。「おまけで丸」は納得感が下がるのでやらないようにしています。(柳平 淳哉先生/長野)
- 性格を鑑みつつ、同じ曲を完璧に仕上げたいタイプの子は時間をかけ、飽きっぽい子は1つポイントがこなせたら先に進んでいます。(里見 恵先生/千葉)
ハノンはいつごろ始めますか?
- 先ずは「バーナム ピアノテクニック」のミニブック→導入書→1巻の順で進め、一巻では移調奏を取り入れてスケールの練習にも応用しています。指もしっかりするので、そこまでできたらハノンへ。
移調がそこまで出来ない子は♯3つくらいまでやり、「こどものハノン」→「全訳ハノン」の順で進めています。(南 麻紀先生/兵庫) - 「バスティン ピアノベーシックス」は2巻に入るとスケールがでてくるので、そのタイミングで取り入れています。(青木 麗子先生/東京)
読譜が難しい子へのアプローチで工夫していることはありますか?
- 最初の時期にどれだけ音符を読むかが大事だと思っているので、初期はペース早めでテキストを進めるようにしています。(南 麻紀先生/兵庫)
- なるべくお勉強という感じにならないようフラッシュカードを使っています。線と間を理解してもらうためにボードを使って説明したり、鍵盤と楽譜をリンクさせることを意識しています。(天野 玲美先生/神奈川)
- 私は自作のワークシート(画像参照)を作成しています。音階をドからいう、次はレからいう、一つ飛ばしで言う…などの訓練(画像一番右)や、クレ譜読みのように一本線の楽譜(画像左上)を使って「最初の音をレだと思って読んでみよう、次はミだと思って読んでみよう」といった訓練をさせています。
読譜の他にもリズムや音の高低差を理解する課題などワーク集にしています。ゲーム感覚でできるように、各課題ごとに都道府県を一つ塗りつぶして全国制覇するシートを作って教室のみんなで挑戦しています。(柳平 淳哉先生/長野)
参加しての感想
- 色々な先生方の話が聞けてよかったです。ピアノの先生は時に孤独なので、このような機会をまたつくっていただきたいです。(M.M.先生/群馬)
- 先生方がどんな状況におられるのかも知ることができましたし、先日方同士で問題解決をしていくような場というのは、とても有意義なことだと感じました。(貝島 直子先生/福岡)