特級2021「二次予選を聴いてみよう」vol.3
7月31日・8月1日に、特級の二次予選が行われます。二次予選進出者の素顔に迫る「インタビュー動画」や特別番組もピティナ・ピアノチャンネルにて随時公開中です♪
特級2021 特設サイト今回は特級の二次予選に先立って、二次予選進出者25名が演奏曲目の中から自ら選んだ「推し」曲を作曲家ごとに紹介します。
二次予選はライブ配信も予定しています。こちらもお楽しみに!
シマノフスキはポーランドの作曲家で、ポーランドの首都ワルシャワを中心に活動しました。この作品はシマノフスキ最初の大規模なピアノ作品で、変奏を繰り返す中で覗かせる多彩な表情が魅力です。曲は静かに始まりロマンティックな雰囲気に包まれますが、突如として速度をあげ緊張感を帯びて発展していきます。そして時には、民謡風の素朴なメロディを歌う場面もあり、その表情は多彩です。
副題「古い手帳から」は旧作の改訂であることを意味し、第1番・第3番同様にプロコフィエフが音楽院作曲科の学生時代の習作から改作された作品です。第4番は古典的な形式が厳格に守られているため、比較的ロマンティックな面影を留めています。第1楽章ではプロコフィエフらしい疾走感はあまりなく、落ち着きある温かみを帯びた曲想から始まります。
第9番は、「戦争ソナタ」で頂点に達したプロコフィエフのピアノソナタの最後の完成作となりました。若い頃に見せていたような急進的な性格とは異なり、彼の晩年の作品の特徴である抒情的な作風が垣間見られます。第1楽章は冒頭からロシア民謡風の旋律がなめらかに歌われ、そこに対照的な旋律が絡むことによって、秘められた深い情感が表現されています。
演奏動画を見る 詳しく読む「楽興の時」は、初期のラフマニノフの最後を飾る充実した作品です。奇数番目には抒情的な曲が、偶数番目には対照的に動きの速い活発的な作品が組み込まれています。悲歌的な雰囲気を展開する作品や明るく歌謡的な作品が含まれる前者と、連続する速いパッセージが繰り出されたラフマニノフらしい後者における楽曲のコントラストがとても楽しい曲集です。
ラフマニノフのピアノソナタは2曲ありますが、「ファウスト・ソナタ」とも呼ばれるピアノソナタ第1番はほとんど演奏されません。一方第2番は評判がよかった作品ですが、長大な作品であったため1913年に作曲されたのち、ラフマニノフ自身によって31年に改訂されました。第1楽章は装飾的な音型を伴う強烈な和音で始まり、最後は哀愁を漂わせながら静かに曲を閉じます。
スクリャービンの友人であるポドガエツキィが付けた「黒ミサ」という題名は、この作品の後半に向けての悪魔的な高揚に由来すると言われています。確かに曲の終盤では急き立てられる激情に導かれるように、徐々に速度を増しながら高潮していく様が表現されています。そして最高潮に達した後には静寂が回帰し、宗教的な邪悪と神聖という二項対立の構造を見事に映し出しています。
スクリャービンが独自の音楽語法を確立した、晩年の作品の一つです。「詩曲」と題名が付けられていますが、ピアノ小品集に分類されるような小規模な作品とは異なり、ソナタ形式から完全に脱却したスクリャービンの新たな音楽像を示した作品となっています。神秘和音とも呼ばれる独特の響きが特徴的な和音が旋律に絡むことによって、曲想を形作っています。曲全体がこの響きによって支配され、作品に統一感をもたらしています。
1953年の日本音楽コンクール作曲部門で第1位を受賞し、三善晃のデビュー作となった作品です。三善は、先人たちが長い年月をかけて完成させた作曲法の上に自分の創作様式を組み合わせ、オリジナルの作品を仕上げています。繊細さと濃厚さを合わせもつピアニスティックなこの作品では、冒頭から特徴的なリズムによって音楽に推進力を持たせています。