特級2021「二次予選を聴いてみよう」vol.1
7月31日・8月1日に、特級の二次予選が行われます。二次予選進出者の素顔に迫る「インタビュー動画」や特別番組もピティナ・ピアノチャンネルにて随時公開中です♪
特級2021 特設サイト今回は特級の二次予選に先立って、二次予選進出者25名が演奏曲目の中から自ら選んだ「推し」曲を作曲家ごとに紹介します。
二次予選はライブ配信も予定しています。こちらもお楽しみに!
シューベルトはこの作品を「幻想曲」と名付けていますが、第2楽章に自作の歌曲「さすらい人」の旋律を用いていることから「さすらい人幻想曲」という通称で呼ばれています。第1楽章では、和声の変化や音楽要素を駆使することによって、主要モチーフに多彩な音色を与えています。そして第4楽章は壮大なフーガで始まり、第1楽章の主要モチーフを力強く再現し華やかに曲を締めくくります。
ショパンは元々この作品をピアノとオーケストラのための作品として作曲し、のちにピアノ独奏用の曲に整えました。先に完成された「ポロネーズ」を出版する際に、その序奏として「アンダンテ・スピアナート」が作曲されました。「なめらかにする」という意味がある「スピアナート」は滑らかで甘美な旋律が魅力的です。このどこか静かで輝かしい旋律からは、晴れた日に小舟が湖を軽快に滑っているような情景が想起されます。
ショパンの練習曲は全部で27曲、作品10「12の練習曲」と作品25「12の練習曲」を主として、この他に作品番号なしで発表された「3つの新しい練習曲」があります。作品25はリストの愛人であったダグー伯夫人に献呈されています。ABAの3部形式でまとめられた第5番 ホ短調は、A部分ではスケルツォ風な楽想が展開され、中間部では同主調であるホ長調に転調し内声に甘美な旋律が現れます。
ピアノソナタ第2番から5年後に作曲された第3番は、全体を通して雄大な作品となっています。この曲は、ノアンでジョルジュ・サンド(恋人)と一緒に生活を送っていた時期に作曲されました。第1楽章は力強い和音によって重々しく開始されますが、ニ長調に転調しカンタービレの旋律が登場すると、やがて美しい平穏が訪れます。そこには、どこかセンチメンタルな瞬間が垣間見られるかもしれません。
舟歌はヴェネツィアのゴンドラ漕ぎの歌に由来し、8分の6拍子の基本のリズムとします。ショパンはゴンドラの歌のリズムを採用し、長いリズム・フレーズを生かしてこの作品を作曲しました。実は「舟歌」を作曲した頃、ショパンはサンド(恋人)と破局寸前の状況に陥っていたそうで、もしかしたら失われそうな愛の寂寥感や孤独さを感じながら書いていたのかもしれません。舟歌のリズムの上で複数の音を同時に演奏しながら旋律が歌われ、優美なハーモニーが奏でられます。
副題にある「4つの音符」は、実らなかった恋の相手エルネスティーネの出身地アッシュ(ボヘミアの町)を「A S C H」ドイツ音名へ置き換えたものを表し、「アベック変奏曲(A B E G G)」同様にアルファベットの音形化に着想を得て作曲されました。それぞれの性格小品はどれも機知に富み詩的に描かれ、加えて情感のコントラストが織り込まれとてもユニークな内容になっています。
シューマンの書いたピアノ曲の中でもっとも力強い大曲の一つです。この曲は元々、リストが提唱した「ベートーヴェン記念碑建立募金」に寄付するために「大ソナタ」として作曲され、のちに「幻想曲」という題名に変更されました。「どこまでも幻想的にかつ熱情的に演出する」という曲想標語が添えられた第1楽章は、楽想も雄大で熱情に溢れています。トリルや半音階の効果的な使用によって楽曲に緊張感もたらしています。