090.音楽性を引き出す言葉かけ
前回の「理想の指導者」に「わかりやすく伝えるという」という意味の事を書きました。たとえ話などで、伝えたい事を相手がわかる言葉に置き換えることは、とても大切だと思います。
ある箇所を、その部分にふさわしく音楽的に弾かせたい時、楽器の音色のことや、お話に例えて、「男の人や女の子の感じ」などという例えで、簡単に音楽が変わる事がよくあります。
そこで、音楽性を引き出す、言葉を挙げて見たいと思います。
◆ 楽しい表現をしたいとき
- わくわくしない?
- ウキウキ、ルンルン弾きたいね
- 飛び跳ねるくらい元気に
- 踊るように
- 天にのぼるくらい喜びを持って
- 100点を取った時の嬉しさのように
- 犬がクルクル舞いしているような気分で
- 心が弾んでる?
◆ のびのびとした表現をしたいとき
- 広い野原の真ん中で、背伸びしているように
- 海の向こうまで広がっている気分(レッスン室から海が見えます)
- この部屋だけで聴こえるのでなく(遠くに見えている)海のところまで飛んでいく音で
◆ 堂々とした太い音
- ドイツのビール腹のおじさんの音
- 太い気の根っこのしっかりしているような音
◆ 華奢な繊細な音
- 色白な細い人のような感じ
- 透明な澄んだかき氷のような感じ
- 細いガラス細工のような音
◆ はっきりした音
- キラキラした音
- 宝石のような音、ダイヤモンドのような音
- 輝いた音
- 冷たい水が一滴肌に当たったような音
- クリスタルブルーな音
◆ ドルチェの音
- チョコレートが溶けるような音(今井顕先生から聞いた言葉)
- とろけるような甘さ
- やさしく犬をなでてあげるような気持ち(びっくりさせると噛み付く)
- 柔らかい絹のスカーフのような音(あなたのは木綿のハンカチ)
- ねばねば納豆が指先についているような感じ
◆ 悲しい表現をしたいとき
- 涙がでそう?
- しっとりと
- 歩けないほどの悲しさで
- 足が上がらないほどの絶望感で
- 悲しみの深さが地の底くらい
- 命の絶えるような悲しみで
まだまだたくさんありますが、自分の弾いている時も「ここはこんな感じかな?」と想像して音を出してみると、それなりに変化してくるはずです。
指導者も、表現が足りないと思う時、抽象的なことを伝えたい場合でも、他のこと、日常のちょっとしたわかりやすい言葉で置き換えてあげると、生徒の音が変わると思います!
先日、ヤシンスキー先生のお話を聴きました。感動感涙!!
モーツァルトとショパンについてのお話でしたが、二人は共通して「うたうこと」に興味があったと言われていました。モーツァルトを、たくさんの解説してくださり、「わっはっは!」とオペラの笑い声のようにとか「天国のようなものを感じる」といったお話しをしながら、その言葉どおりの音で弾かれました。イマジネーションを膨らませて弾く事が大切だとおっしゃいました。
「作品を理解する時、音楽家としてではなく、その前に、ふつうの人間として理解しようとします。オーケストラの色々な楽器が出て来ていると思う時、それは、庭に色々な鳥が来ているような感じにも思います。」
2時間のセミナーの間じゅう、とてもお元気で、幸せそうに喜びをもって弾かれていました。「ピアノってこんなに楽しいよ!」という気持ちがあふれ、まるで、おしゃべりしているようなピアノで、幸せも伝わってきました。