038.拍子感
「感」について、前回から引き続き。
この頃よくコンペティションの講評で聞いたり、講評用紙に書いてあるのをみる「拍子感」という言葉。
これも「感」ですね。
何となく漠然としていますが、でもその「感」という言葉のつくものが、表現力にとって大事な要素のような気がしています。
音楽は、ある一定の区切りによって繰り返されます。
2拍子,3拍子,4拍子、8分の6拍子などなど。
その区切りによって、音楽の流れが生まれます。
聴く人にも心地よいスムーズな流れがとてもその音楽を生かすと思います。
ではスムーズでない演奏とは?
よく、音を並べただけのような「1拍子」のような感じの演奏がありませんか?
出した音は確かに4分音符の長さなのですが、同じ4部音符を弾くのにも、リズムの良い悪いがあります(前回も同じことを書きましたね)。
また、水道の水のように、ずーっと流れ続けているようなものも、リズムがない、と言われます。
ある一定の脈のようなものを持つことが必要です。
拍子を考えた演奏とはどのようなものでしょうか。
どんな拍子でも1拍目は重みを感じる拍です。指揮が指揮棒を下へとおろすイメージを思い出してみてください。裏拍になる2拍目は必ず一拍目よりも軽くなります。 一方、小節の最後の拍はその小節で最も軽い拍です。この最後の拍、つまり3拍子なら3拍目、4拍子なら4拍目は、重みのある1拍目へのつなぎになる役目もあります。よりスムーズな流れを感じて欲しいところです。
拍子感を持った演奏を心がけるには、上で書いたような拍の「基本」を知った上で、心の中で拍を刻むことになります。
その「心の中での刻み」が自然と養われていくように、ピアノを弾く前に、拍子を言いながら、手でリズムを叩く練習をすると良いと思います。心の中に一定の拍の流れと「拍子感」を持ち、その上に表現していくことがよい演奏の一歩だと思います。
曲の演奏をする時にこの「拍子感」を持って弾くには、特に伴奏に当たるパートや、ベースラインの音などの一拍目の意識を持つと良いと思います。
また、この頃、メロディーの1拍目にアクセントをつけ過ぎる演奏に出会います。一拍目を「重く」という指摘に応えてのことなのかもしれませんが、やり過ぎれば、それも不自然に音楽の流れを止めてしまうことが多いです。
やはり、経験とともに「感」をセンスよく高め、だらだらとした演奏でも、区切りすぎる演奏でもなく、表現したいものがより生きる演奏になると良いですね!
ワルツ等の舞曲を弾く際、伴奏部分の出来がいまいちだと、それだけで全体がとても下手に聴こえます。
ワルツ等には一拍目が低音1音で、2拍目3拍目が、重音という曲が多くあります。 左手の小指はただでさえ力が弱いのに、遠く離れた低音に「ようやく届かせた」というだけの一拍目では、一拍目がしっかりと決まりません。太い親指の入った2、3拍の方が重くなってしまいます。
そんなとき、子供達には「太ったおばさんがドスンドスンと踊っているみたい!」というと(本当にそんな感じです)とてもわかりやすいらしく、すぐに2、3拍が軽くなります。軽くといっても、3拍目の音を短くし過ぎると、きつい音に聞こえがちです。
3拍目はやさしく手首の方から脱力して離し、次の1拍目に重みがのせられるようになると、素敵な人が、ワルツを踊っている軽やかな動きが想像できる伴奏になります。その伴奏にメロディーをのせると素敵なワルツになります。ショパンのワルツなどをレッスンする時には、右手の倍ほど左だけの練習をし、左手だけで楽しくならないといけないと心掛けさせています!
その曲に似合った拍子感を体で感じながら表現することが、その曲を生かす大きなポイントだとおもいます。