ピティナ調査・研究

第10回 ソナタ第50番 Hob.XVI/37 ニ長調

ハイドンの世界
SONATA No.50 Hob.XVI/37 Allegro con brio-Largo e sostenuto-Finale

この曲はハイドンをはじめて聴く人に、ぜひ聴いてもらいたいくらい、ハイドンらしさに溢れる曲です。1楽章はどこまでも明るい快活なフレーズが愛らしく、2楽章ではハイドンの作曲したミサ曲のような荘厳な雰囲気がとても美しいです。3楽章は冒頭にinnocentementeという楽語が書かれており、これは、素朴で無邪気な、といった意味合いを持ちます。ハイドンの書く曲の中ではとても珍しい表現ですが、私は、ハイドンの音楽そのものを表現したようなその楽語をとても気に入っています。1楽章と3楽章は、ハイドンが作曲したクラヴィーア・ソナタで一番多く使用した調性、ニ長調で書かれていますが、2楽章はニ短調で書かれています。ニ短調は、ハイドンがあまり使用しなかった調性で、そもそもニ短調のソナタは存在せず、2楽章がニ短調の曲は、この曲を含めわずか3曲しか残っていません。

第1楽章
第2楽章
第3楽章
ハイドンひとことメモ
「第10回 ハイドンの容貌 その1」
ハイドンは、一体どんな顔で、どんな体で、どんな姿をして生きていたのだろう...、と私はよく想像します。ハイドンの真正な肖像画は26あるとされていますが、この肖像画をめぐる疑問は、今現在もハイドン研究の課題となっています。1768年(ハイドン36歳)以後、ハイドンは多くの肖像画を描かせたといわれていますが、特に、トーマス・ハーディのものや、ジョージ・ダンスが描いた鉛筆画が有名でよく見掛けると思います。ハイドンの容貌は同時代に生きた人々の報告によって、細部まで伝えられていて、ヴァーツラフ・トマーシェク(ボヘミアの音楽家)は、ハイドンの身なりがきれいさっぱりとしており、小柄で、あばたの多いその顔には、いつもかつらが深くかぶせられていた、と形容しています。また、ハイドンの伝記にもハイドンの容貌について書かれているので、次回、書いてみたいと思います。
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