ピティナ調査・研究

25曲を斬る!第08回 La gracieuse 優美

みんなのブルグミュラー
25を斬る!~大人のためのブルグミュラー
第八回 La gracieuse 優美

♪ 第8曲目 La gracieuse 優美 :YouTube 演奏:友清祐子

「優美」なのに、どこかダサい?!

今回は「優美」です。実はこの曲、かつてこのコーナーでアンケートを取ったとき、いまいち人気のない曲でした。

ほう。少しとらえにくい感じがあるんでしょうか。

譜面的にもちょっとね。

32分音符、これが子供のころ読みにくかったですね。

このタータタタタ タータタタタがなぁ・・・。これってお洒落なんですか?

いやぁ・・・あんまりお洒落に感じないですね、正直なところね。

そう。なんかちょっとダサいんですよ。

うん、でもタイトルは「優美」っていう、このちぐはぐな感じ。

特にダサいの、7小節目の左手、ドソ♭シの和音が3回続くあたり。

あ??(笑)。

確かに。

ダサいねぇ。

残念な感じです。ここもうちょっと変えてくれれば・・・。La gracieuseっていうのは、やっぱり「優美」なんですか?Laってことは、人を指しているってことはありえます?

あり得ますね。形容詞を名詞化するという方法で。優美な人。

それだとまだ少し、ピンとくるというか。ブルグ君にとって誰か特定のイメージの人がいたとか・・・

(かなり小声で)La gracieuse・・・貴族の階級かなんかで特定の呼び方としてあったのかなぁ、ま、でもここは素直に受け取ってあげたい気もします。

あと、ここのソも気に食わないなぁ。(12小節目最後の音)

そうそう!これね。

なにこれ?

らしからぬ感じがする。

もしや、この曲も、シニカルな批判的な曲?つまりその、貴族のちゃらちゃら、ふりふりした感じ、でも中身からっぽ、みたいな・・・。

あ、たしかに、32分音符はふりふりしてます。中身ない感じの。

・・・いやでもね!素直に受け取ってあげたい気もする。でも・・・

揺れますね。

ブルグだったらやっぱりこのあたり(12小節)、少し和声変えてもいいはず。それを単純に、タンタラララ、タンタラララ、ハイ、ハイ、みたいなことにしている。

あ、この右手と左手のソとソは、「ハイ、ハイ」という返事なんですね?!その前の32分音符が「あたし、綺麗でしょう?綺麗でしょう?」と訴えてくることに対しての・・・

そう。仕方なく「ハイ、ハイ」と。

適当な合いの手入れてますねー

まずいですね。

またシニカルな方向に来てしまいましたね。

前回の「澄みきった流れ」で、自然の美しさに対し本当に素直に心を開いているブルグを知った後なので・・・

やっぱり、人工的なものすべてに批判的なのかもしれません、ブルグ。

貴族のレッスン風景の描写?!

やっぱりこれは、ある階級の、ある「優美な人」なんだね、きっと。その人はブルグのところにピアノを習いに来ているのかもしれない。着飾った貴族の娘さんに対して、教師であるブルグが「ピアノ弾くときに、そのちゃらちゃらした帽子はないだろう?」と、内心思ってるんですよ。

でも口に出して言えない(笑)。

それで、このソ、ソ(12小節目)に、呆れて面倒くさい様子が出ているんですね?!でも、こうやって左で裏拍のリズムを取ってあげないと、貴族のお嬢さん、上手に弾けないんですよ。

そう。つまりこのLa gracieuseという曲は、貴族階級のふりふりしたお嬢さんに、ピアノのレッスンを付けてあげている、そういう場面を風刺的に描いている曲なのです。

左手はきっとブルグ自身なんですね・・・。

11とか15小節目なんて、もう投げやりだもんね(苦笑)。

この左手の単純さはね、いかにも怪しいですよ。

「澄みきった流れ」の左手の単純さとはワケが違う。

「優美」、これはまた化けの皮をはがしたような気がしますね。

やっぱり素直にばかり、見ていくわけにはいきませんね。「優美」というものの中にこめられている、貴族階級、格差社会に対する見方ですよ。

またしても「社会」ですね(笑)

どうしても透けて見えてしまうんですね。

いやでも、子供の頃は気付かなかった。でも何か直感的には思うんです。ずいぶんと華美だなぁ、とか。なにか見せ掛けっぽさを感じていたというか。

うん。それでなのかな。あまり心に残らなかったのは。

第八回 La gracieuse 優美 後記
この曲にそこはかとなく漂う、何かぎこちない美・・・貴族社会がたしなみのためにピアノを弾く姿を風刺しているなどとは、これまた大胆な発想ではありますが、右手と左手の対話がより鮮明に浮き彫りにできるかもしれません。華美な娘さんと、若干シニカルなピアノ教師。一人二役を演じてみようではありませんか。(広報)

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