課題曲チャレンジから広がる音楽の世界
皆様、ゴールデンウィークはどのようにお過ごしでしたか。「課題曲チャレンジ」へのエントリーを決めて、いつもより多めにピアノの練習をした方も多かったかもしれません。こちらはピアノ、ひいては音楽を心から楽しむため、ぜひ「ピティナ・ピアノ曲事典」を活用していただきたい、というおススメ記事です。
A2
- クレメンティ :段階的な6つのソナティナ 第1番(ソナチネアルバム第7番)
学習が進んだら、クレメンティの易しくも、とてもよく書かれたこの曲にチャレンジしてみましょう。表情の変化、右手と左手のバランスがとてもよく考えられています。
- アルカン:オクターヴのカノンで
課題曲の「フレール」とは、兄弟という意味のフランス語。日本では「ぐーちょきぱー」の歌ですね。フランス人作曲家アルカンの、しなやかなカノンを聴いてみましょう。どのパートが追いかけ合っているでしょう?
- バッハ:メヌエット BWV Anh. 116
メヌエットの軽快なリズムを感じ取りましょう。右手と左手の掛け合いが特徴的です。
- プレイエル:メヌエット
メヌエットの軽快なリズムと、中間部の短調とのコントラストを意識して聴いてみましょう。
- クーラウ:ソナチネ(ソナチネアルバム第1番)
繰り返すようなリズムの左手の伴奏、右手の旋律は、18世紀後期に流行し始めたスタイルです。発展形として、クーラウの《ソナチネ》を聴いてみましょう。
- フォーレ::組曲「ドリー」より、子守歌
課題曲はフランスの子守歌。フランスの作曲家フォーレが、お世話になっていたバルダック家の女の子のためにかいた、優しい子守歌も聴いてみてください。
- バスティン:いたずらねずみ
左手の軽やかな伴奏がねずみを表しているように聞こえます。
- カバレフスキー:かわいいねずみ
軽快なスタッカートが、ねずみの動きを描写しているかのようです。
- チャイコフスキー:「くるみ割り人形」、金平糖の精の踊り
課題曲は、どこか悲しげで、民俗的な色合いの舞曲です。伴奏パートは、有名な「金平糖の踊り」弦楽器のピッツィカートをイメージしてみては?
- バルトーク:野外にて
課題曲の作曲者ラヨシュはハンガリーの作曲家。ハンガリーを代表する近代の作曲家、バルトークの作品にも触れてみましょう。
- ベートーヴェン=リスト:交響曲第6番「田園」より、第3楽章
2020年はベートーヴェン生誕250年。「田園」第3楽章「田舎の人々の楽しい集い」には、村の人々たちが集まって踊るシーンがあります。
- ドビュッシー :12のエチュード(練習曲) 5本の指のために(チェルニー氏による)
A1
- ブルグミュラー:貴婦人の乗馬
躍動感あるリズムは、軽やかに走る馬を表しているように感じられます。
- シューベルト:魔王
ピアノ伴奏の三連符に注目しましょう。夜道を走り抜ける馬の蹄の音に聴こえます。
- バッハ:メヌエット BWV Anh. 116
メヌエットの軽快なリズムを感じてみましょう。右手と左手の掛け合いが特徴的です。
- キルヒ:リゴドン
2拍子と快活なテンポが特徴的なフランス由来の舞曲です。
- テレマン:ジーグ
急速なテンポで演奏されます。右手と左手の掛け合いが特徴的です。
- バッハ:メヌエット BWV Anh. 116
メヌエットの軽快なリズムを感じてみましょう。右手と左手の掛け合いが特徴的です。
- サン=サーンス:動物の謝肉祭より化石
中間部に民謡「きらきら星」と共に「月のひかり」が登場します。聴いて探してみてください。
- ドビュッシー:前奏曲集第2集より月の光が降り注ぐテラス
冒頭に「月のひかり」に基づくモチーフが登場します。和音の微妙なニュアンスの移り変わりが、光の降り注ぐ様子や影を表しているように感じられます。
- ダカン:クラヴサン曲集第1巻 かっこう
短-長の跳躍音程によるかっこうの鳴き声に耳を傾けてみましょう。
- ドイツ民謡:かっこう
「かっこう、かっこう」の歌詞で有名な民謡です。
- テュルク:ソナチネ第1楽章
同じ作品の第1楽章です。
- クレメンティ:ソナチネOp.36-1
同じハ長調のソナチネです。作曲家テュルクより4つ年上のクレメンティは大量の作品でも知られますが、作曲家の枠をこえて活躍する実業家でした。
- ハイドン:ピアノ三重奏曲「ジプシー」
「ジプシー」は主にヨーロッパ圏内で、移動しながら生活する人々です。近年はロマと言い換えることが多くなっています。すべての「ジプシー」がロマというわけではありませんが、ここではハイドンによるピアノ三重奏曲の第四楽章を聴いてみてください。ロマの音楽スタイルを採り入れており、技巧的な部分とゆっくりな部分が交替するのが特徴です。
- ハイドン:弦楽四重奏「ごきげんいかが」
ハイドンの弦楽四重奏作品33の中に、「ごきげんいかが」という愛称で親しまれている曲(動画)があります。冒頭、お辞儀をしているように聞こえませんか?
- ドビュッシー:子供の領分より雪は踊っている
冒頭の単音の連続は、雪景色の幻想的な風景を思い起させます。
- ギロック:雪の日のソリのベル
和音の連打は雪が降る様子を表現しているように聞こえます。
B
- プレイエル:メヌエット
メヌエットの軽快なリズムと、中間部の短調とのコントラストを意識して聞いてみましょう。
- フランス組曲第2番 BWV813よりメヌエットI
- ベートーヴェン:ソナタ Op. 49-2
学習が進んだら、この曲にも取り組んでみましょう。「やさしいソナタ」として出版された曲です。18世紀のソナタによくみられる冒頭の「ジャーン」は、当時の交響曲や序曲の堂々とした始まり方を模しています。
- メヌエットBWV Anh. 116
メヌエットの軽快なリズムを感じてみましょう。右手と左手の掛け合いが特徴的です。
- ラヴェル:古風なメヌエット
メヌエットは18世紀に多く書かれましたが、19世紀後半~20世紀はじめにかけても、軽快で優雅な「ギャラント様式」は憧れの対象だったため、メヌエットは好んで書かれました。
- ドヴォルザーク:スラヴ舞曲集 第1集より「ドゥムカ」
「ドゥムカ」は、深い悲しみを表す東欧の哀歌。チェコのドヴォルザークとロシアのグレチャニノフ、それぞれ旋律のどこが共通しているでしょうか。
- シューベルト:魔王
ピアノ伴奏の三連符に注目しましょう。夜道を走り抜ける馬の蹄の音に聴こえます。
- マイアベーア:《悪魔のロベール》第3幕第1場アリスの歌
ブルクミュラーの「貴婦人の乗馬」のメロディは、ほぼ確実に、この歌から来ています。当時大ヒットし、ショパンもたいへん感動したというフランスのオペラの名作です。
- ベートーヴェン:6つのバガテルOp.126
「バガテル」とは、取るに足らないもの、ささいなもの、といった意味です。そんなタイトルのもと、作曲家たちは競うように、それぞれのセンスが光る作品を発表しています。ベートーヴェンもまた・・・。
- ベートーヴェン:バガテル「エリーゼのために」
- ハチャトゥリアン:剣の舞
ハチャトゥリアンといえば、剣の舞!無窮動な伴奏と精力的な木琴の旋律が特徴的です。
- ショパン:24の前奏曲 作品28-4
半音階で下行する和声が、ハチャトゥリアンと共通しています。嘆きを表す「ラメント・バス」と呼ばれる、典型的な悲しみの情緒表現です。
- ショパン:前奏曲集より雨だれ
作曲者の森山先生がインスピレーションを受けたと仰っている作品です。ぜひ聴き比べてみましょう。
- ギロック:雨の日の噴水
細かい音の内声部は水の流れを、跳躍音程を含む旋律は、水が跳ねる様子を表しているかのうです。
C
- バッハ:シンフォニア(3声のインヴェンション)
インヴェンションは「2声」です。では「3声」の響きはどう変わるでしょう。3声のインヴェンション=シンフォニアと比べてみてください。
- フランス組曲第2番
同じ組曲の中の他の曲も聴いてみましょう。
- スカルラッティ:ソナタ K.9
同じニ短調のスカルラッティのソナタです。雰囲気は似ている?聴き比べをしてみましょう。
- クーラウ:ソナチネOp. 55-6 第1楽章
同じ作品55-6の第1楽章に触れて、第2楽章との違いを感じ取ってみましょう。
- クレメンティ:ソナチネOp. 36
クーラウとクレメンティ。「ソナチネ観」の違いはありそうでしょうか?
- グリーグ:ペールギュントより「朝」
同じ「朝」というテーマに基づく作品を聴いてみましょう。オーケストラの楽器の音色の違いも感じ取れます。
- グリーグ:ピアノ協奏曲
「北欧のショパン」と称されるグリーグ。あまりに有名なピアノ協奏曲はぜひ聴いてみましょう。叙情的な旋律が特徴的です。
- グリーグ:ペールギュント 朝
グリーグのオーケストラ作品で人気の高い作品の一つです。
- ショパン:ピアノ協奏曲第1番
この曲と同じくショパンの若かりし頃の作品であるピアノ協奏曲と聴き比べてみましょう。
- ショパン:ポロネーズ「英雄」
マズルカと同様にポロネーズも。発祥はポーランドの民族舞踊ですが全ヨーロッパで流行しました。ショパンはその流行も踏まえた上で集大成的な作品を残しています。
- シャミナード: 6つの演奏会用練習曲,Op.35より「秋」
モシュコフスキの妻は、フランスのピアニスト兼作曲家セシル・シャミナードの妹です。シャミナードもまた、旋律的に美しい練習曲を作っています。
- メンデルスゾーン :無言歌集 第6巻 「紡ぎ歌」
メンデルスゾーンの時代は、糸車という回転する器械をつかって、細い糸をより合わせ、丈夫な糸を作っていました。かたかたと回転する様子を思い浮かべてみよう。
- プロコフィエフ:ロメオとジュリエットよりモンタギュー家とキャピュレット家
プロコフィエフのバレエの代表作《ロメオとジュリエット》に基づくピアノ小品を聞いてみましょう。
- プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番
ピアニストとしてプロコフィエフ自身が演奏したピアノ協奏曲です。オーケストラとの掛け合いに耳を傾けてみましょう。
- ドビュッシー:「牧神の午後」への前奏曲
羊飼いの神が昼間にまどろみながら妄想にふける様子を表現しています。原曲はオーケストラ。初演当時は、名ダンサー、ニジンスキーの振り付けが物議を醸しました。
- ドビュッシー:グラドゥス・アド・パルナッスム博士
同じ曲集の第1曲です。曲集のほかの作品とも聴き比べてみましょう。
- 湯山昭:シュークリーム
同じ曲集に収められている曲です。ワルツ風の伴奏と優美な旋律に注目しましょう。
- チャイコフスキー:くるみ割り人形より金平糖の踊り
オーケストラ版では、チェレスタが用いられています。可憐で少し怪しげな響きがしませんか?
- ドビュッシー:アラベスク
旋律と内声、バスの響きの混ざり合う余韻に耳を傾けてみましょう。
- 香月修:古風な歌
作曲家、香月先生の別の作品です。ポリフォニックな書法に注目してみましょう。
D
- ヒンデミット :ルードゥス・トナリス-対位法、調性およびピアノ奏法の練習
近現代ドイツのピアノ音楽の演奏機会は多くないのですが、鍵盤音楽における対位法の精神は、20世紀まで受け継がれました。その精華の一つは、ヒンデミットの《ルードゥス・トナリス》でしょう。調の配置。最初の曲と最後の曲のアッと驚く関係・・・みどころがたくさんあります。
- フランソワ ・クープラン:クラヴサン曲集 第2巻 第6組曲
バッハはフランスに行ったことはありませんでしたが、研究熱心でヨーロッパ中の最新の情報に目を配っていました。当時フランスでは宮廷でクラヴサン音楽がたくさん書かれました。謎めいたタイトルの「オルドル」とよばれる性格的な組曲です。「神秘的なバリケード」はとくに有名ですね。
- メンデルスゾーン《6つの前奏曲とフーガ》作品35
19世紀、バッハ「復活」の立役者の一人、メンデルスゾーンによる前奏曲とフーガ集です。前奏曲とフーガの伝統は、ドイツ語圏を中心に、19世紀も脈々と受け継がれていました。
- C.P.E. バッハ:専門家と愛好者のための6つのクラヴィア・ソナタ 第1集 Wq.55
大バッハの次男カール・フィリップ・エマヌエル・バッハは、啓蒙主義の潮流の中で、バロックの様式に重要な変化をもたらしました。演奏者の情緒(感情)を自由に即興的に表現する様式が、その大きな魅力です。
- A・ソレール ソナタ第90番
スペインのカタルーニャ地方の作曲家、ソレールは、ドメニコ・スカルラッティとほぼ同時代にスペインの宮廷に仕えていた人物です。スカルラッティから直接手ほどきを受けたかは定かではありませんが、ソレールがスカルラッティの作品に精通していたようです。二人のソナタを聞き比べてみましょう。
- クレメンティ:グラドゥス・アド・パルナッスムより第14番
クレメンティが創作の集大成として編んだ練習曲集グラドゥス・アド・パルナッスム。練習曲といっても単に指の独立を目指す曲だけではなく、カンタービレな作品が含まれています。クレメンティの理想としたピアニスト像を思い浮かべてみましょう。
- クレメンティ:ソナタ作品2-1
モーツァルトは、1781年12月にヴィーンの皇帝ヨーゼフ2世の御前で、クレメンティと競演しています。その時のクレメンティの演奏について、モーツァルトは後々、3度や6度の重音ばかりで「機械的な演奏だ」と痛烈に批判しました。当時人気を博していたクレメンティのソナタを聞いてみましょう。
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第29番「ハンマー・クラヴィーア」
1817年に作曲されたベートーヴェンの晩年のソナタ第29番と、初期の第6番を聞き比べてみましょう。第29番の第4楽章は、それまでの軽やかなタッチが特徴のヴィーン製のピアノとは異なる、イギリスから送られてきたブロードウッド社の深みがあって重厚な響きが特徴的なピアノで作曲されたと考えられています。初期のころに比べて厚みのある和音が多用され、音域も広くなっていることを感じてみましょう。
- ゴドフスキ-:ゴドフスキー :ショパンの練習曲による53の練習曲(全5巻)
今年は、ゴドフスキーの生誕150年でもあります。ショパンのピアノ芸術は、彼の没後、それだけで特種なジャンルを成していきました。ゴドフスキーの《ショパンの練習曲による53の練習曲》は、左手だけで「別れの曲」を弾くようにアレンジしたり、複数の練習曲をポリフォニック的に結合するなど、徹底して技巧を追究しています。それが、どれも「演奏可能」になように書かれているところが、驚くべき点です。
- ゴドフスキ-:ゴドフスキー :ショパンの練習曲による53の練習曲(全5巻)
今年は、ゴドフスキーの生誕150年でもあります。ショパンのピアノ芸術は、彼の没後、それだけで特種なジャンルを成していきました。ゴドフスキーの《ショパンの練習曲による53の練習曲》は、左手だけで「別れの曲」を弾くようにアレンジしたり、複数の練習曲をポリフォニック的に結合するなど、徹底して技巧を追究しています。それが、どれも「演奏可能」になように書かれているところが、驚くべき点です。
- モシュコフスキ :スペイン奇想曲 Op.37 イ短調
モシュコフスキは、晩年は度重なる不運に見舞われましたが、若いころは名人として名を馳せました。そんな彼の活躍ぶりが伝わってくる作品がこの《スペイン奇想曲》です。往年の巨匠ヨーゼフ・ホフマンによる見事な演奏の録音を聴くことができます。
- ショパン:幻想即興曲
即興曲は、即興を書きとったということではなく、即興のときに思い浮かべるような着想を、性格的小品の形式に流し込んだジャンルです。ショパンがフランスで書いた幻想即興曲と比べてみましょう。シューベルトの即興曲は、なんと長大なことでしょう。フランスでは簡潔さが好まれるのに対して、ドイツ語圏はじっくり考えこみ、語ることを好みます。
- M・ベルクソン: 4つのマズルカ 第1番 Op.1-1
ショパンと同世代のポーランドの作曲家によるマズルカはあまり知られていませんが、ポスト・ショパン世代で優れたマズルカを書いた人物を紹介します。哲学者アンリ・ベルクソンの父ミハウ・ベルクソンです。ショパンより10歳年下で、彼の作品1は10代の作ながら、大変に円熟しています。
- メトネル :2つのおとぎ話 Op.8
「寓話」と「おとぎ話」は少しちがいます。寓話には、教訓や風刺が盛り込まれますが、おとぎ話は妖精たちが表れる不思議な作り話です。もっとも、おとぎ話にも風刺がないわけではありませんが。ロシアの作曲家メトネルは、20世紀はじめ、「おとぎ話」と題する幻想的な小品をいくつも発表しました。国が違えば見えてくる世界も違いますね。
- ブゾーニ :対位法的幻想曲(最終版)
アルファベットを音名に当てはめて、名前を旋律にするという習慣は古くからあり、バッハ自身も自作品に「署名」をしています(「フーガの技法」、未完成の終曲)。ブゾーニは、この未完のフーガを主題とし、「対位法的幻想曲」を仕上げました。
- バルトーク :戸外にて 3. ミュゼット
課題曲と同じ作曲家、バルトークの作品から、「戸外にて」の第3番「ミュゼット」をご紹介します。単なるミュゼットの模倣に留まらない躍動感に溢れた作品です。
- ラヴェル:古風なメヌエット
課題曲の和声と旋法の色合いは、ラヴェルのスタイルと重なる部分があります。すこしノスタルジックで懐かしい雰囲気が、共通しているのかもしれません。
- 小山清茂:雁雁わたれ変奏曲
大正生まれの小山清茂の変奏曲には、筝曲の模倣があったかと思うと、突然モダンな響きに切り替わったりします。しかし、それが不思議に調和しています。
E
- チェルニー :古典的な様式によるピアニスト Op.856
バッハの遺産は、ピアノ音楽が花盛りを迎えた19世紀にも受け継がれました。チェルニーは晩年、バッハに倣って前奏曲とフーガ集を書いています。練習曲のイメージとはかけ離れた濃密なポリフォニー作品で、神谷郁代さんがCDを出されています。
- フランソワ ・クープラン:クラヴサン曲集 第2巻 第6組曲
バッハはフランスに行ったことはありませんでしたが、研究熱心でヨーロッパ中の最新の情報に目を配っていました。当時フランスでは宮廷でクラヴサン音楽がたくさん書かれました。謎めいたタイトルの「オルドル」とよばれる性格的な組曲です。「神秘的なバリケード」はとくに有名ですね。
- A・ソレール ソナタ第90番
スペインのカタルーニャ地方の作曲家、ソレールは、ドメニコ・スカルラッティとほぼ同時代にスペインの宮廷に仕えていた人物です。スカルラッティから直接手ほどきを受けたかは定かではありませんが、ソレールがスカルラッティの作品に精通していたようです。二人のソナタを聞き比べてみましょう。
- J.S. バッハ:ゴルドベルク変奏曲
パッヘルベルは、北ドイツの名手D. ブクステフーデにこの変奏曲《アリア・セバルディーナ》を捧げています。バロック時代の鍵盤楽器用変奏曲として、白眉と謳われるのは、バッハの「ゴルトベルク」変奏曲ですが、バッハもまた、ブクステフーデに大変敬意を払っており、約400キロの道のりを歩いて演奏会を聴きに行った話は有名ですね。
- ハイドン:弦楽四重奏作品33-2 「ジョーク」
ハイドンのソナタにユーモアのセンスを感じる方は多いと思います。そのセンスがとくに光っているのは、なんといっても弦楽四重奏や交響曲でしょう。「ジョーク」の愛称で親しまれるこの弦楽四重奏曲の終楽章では、最後にお客さんを微笑ませる仕掛けがなされています。
- クレメンティ:ソナタ作品2-1
モーツァルトは、1781年12月にヴィーンの皇帝ヨーゼフ2世の御前で、クレメンティと競演しています。その時のクレメンティの演奏について、モーツァルトは後々、3度や6度の重音ばかりで「機械的な演奏だ」と痛烈に批判しました。当時人気を博していたクレメンティのソナタを聞いてみましょう。
- シューベルト:ピアノ五重奏「ます」
1819年にシューベルトは、彼の代表的な室内楽曲である「ます」を作曲します。第4楽章はますと釣り人の情景が描かれた歌曲に基づく変奏曲。ますが釣り人に吊り上げられてしまうまでの物語がどのように音楽で表現されているでしょうか。
- ゴドフスキ-:ゴドフスキー :ショパンの練習曲による53の練習曲(全5巻)
今年は、ゴドフスキーの生誕150年でもあります。ショパンのピアノ芸術は、彼の没後、それだけで特種なジャンルを成していきました。ゴドフスキーの《ショパンの練習曲による53の練習曲》は、左手だけで「別れの曲」を弾くようにアレンジしたり、複数の練習曲をポリフォニック的に結合するなど、徹底して技巧を追究しています。それが、どれも「演奏可能」になように書かれているところが、驚くべき点です。
- ゴドフスキ-:ゴドフスキー :ショパンの練習曲による53の練習曲(全5巻)
今年は、ゴドフスキーの生誕150年でもあります。ショパンのピアノ芸術は、彼の没後、それだけで特種なジャンルを成していきました。ゴドフスキーの《ショパンの練習曲による53の練習曲》は、左手だけで「別れの曲」を弾くようにアレンジしたり、複数の練習曲をポリフォニック的に結合するなど、徹底して技巧を追究しています。それが、どれも「演奏可能」になように書かれているところが、驚くべき点です。
- モシェレス:練習曲作品70
実は、今年はショパンが敬意を払っていたチェコの先輩モシェレスの没後150年でもあります。この練習曲は、モシェレスが学者のフェティスと編纂したメソッドに収録されたものです。彼の練習曲作品70は、ショパンに霊感を与えています(第3番)。第24番は前奏曲とフーガ。
- モシュコフスキ :スペイン奇想曲 Op.37 イ短調
モシュコフスキは、晩年は度重なる不運に見舞われましたが、若いころは名人として名を馳せました。そんな彼の活躍ぶりが伝わってくる作品がこの《スペイン奇想曲》です。往年の巨匠ヨーゼフ・ホフマンによる見事な演奏の録音を聴くことができます。
- ヘンゼルト :12の演奏会用性格的練習曲 Op.2
リストより3歳年下のピアニスト兼作曲家、アドルフ・フォン・ヘンゼルトは、のちにリストが書くようになった詩的な練習曲の先駆けとして重要な存在です。クララ・シューマンもレパートリーにしていました。ヘンゼルト本人は極度のあがり症だったとか。
- フォーレ:即興曲 第6番 変ニ長調
繊細でデリケートなレースを思わせるショパンの即興曲のスタイルは、19世紀前半のジャンルの模範となりました。一方、フォーレのような後世の作曲家は、ショパンのモデルを拡大していきます。フォーレの「即興曲第6番」では、オルガンを思わせる響きが様々に色彩を変化させます。
- グリーグ《心の旋律集》作品5
課題曲の原曲になっている歌曲です。アンデルセンの詩に曲をつけた叙情的な作品です。ピアノ編曲と原曲を比較してみましょう
- リスト:愛の夢第3番
リストの独唱歌曲〈おお、愛しうる限り愛せ〉に基づくピアノ作品です。リストは、グリーグの音楽的才能を見出し絶賛していました。
- フォーレ《マスクとベルガマスク》
マスクは仮面劇、ベルガマスクはイタリアの都市「ベルガモの」を意味します。フォーレやドビッュシーが活躍した19世紀末、象徴主義詩人ヴェルレーヌの詩集『艶なる宴』が読まれました。16世紀イタリアの仮面喜劇で繰り広げられる世界に、音楽家たちも心惹かれました。日本語訳も出ているのでヴェルレーヌの詩にも親しんでみてください。
- バルトーク :3つのチーク県の民謡(原曲)
本作の原曲は、フルートとピアノのために書かれました。現在のルーマニアのチーク県を訪れた際、バルトークは羊飼いの老人の吹く笛に感動したと言い、そのインスピレーションから、ピアノとフルートのための作品が生まれました。
- ローゼンブラット :タンゴ
クラシック音楽とジャズ、民俗舞曲、真面目さとエンターテーメント性の間を行く音楽という意味で、ローゼンブラットもカプースチンと合わせて聴くことのできる音楽かもしれません。説明するより、聴いた方がその楽しさが分かるはず。
F
- ブゾーニ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータよりシャコンヌ
バッハのパルティータと言えば、ブゾーニによるトランスクリプションが今日でもピアニストの演奏会レパートリーとして定着しています。もともとバッハがヴァイオリンのために作曲したパルティータを、ブゾーニはピアニストが高度な技巧を披露し、ピアノの能力を最大限に生かせるようにトランスクリプションしています。
- バッハ:フランス風序曲(パルティータ)
1753年に出版された『クラヴィーア練習曲集第2部』でバッハは、この《フランス風序曲》と《イタリア協奏曲》を収録し、フランスとイタリアの二つの様式を対置しました。《フランス風序曲》ではガヴォットやパスピエなどフランス由来の舞曲が取り入れられている一方で、《イタリア協奏曲》は、イタリアの合奏コンチェルトにみられるような、合奏と独奏の交代が「f」と「p」であらわされています。
- クーナウ :クラヴィア演奏のための6つのソナタによる聖書の物語の音楽的描写
神話や伝説に巨人はよく登場しますね。「一つ目の巨人」はギリシア神話ですが、音楽で生き生きと巨人を描いた作品に、クーナウの通称「聖書ソナタ」があります。クーナウは聖トーマス教会におけるバッハの前任者。この曲の冒頭のソナタは、旧約聖書にある若きダビデと異教の巨人ゴリアテの決闘の模様を、生き生きと描いています。
- ヴェルフル :ピアノ・ソナタ 第1番 Op. 6-1 イ短調
ベートーヴェンと同時代にヴィーンで活躍したヴェルフル。近年、再評価の兆しが高まっています。彼のソナタ作品6はベートーヴェンに献呈されました。第1番第1楽章のベートーヴェンの「月光ソナタ」の冒頭と似ていませんか?
- シューベルト:ピアノ五重奏「ます」
1819年にシューベルトは、彼の代表的な室内楽曲である「ます」を作曲します。第4楽章はますと釣り人の情景が描かれた歌曲に基づく変奏曲。ますが釣り人に吊り上げられてしまうまでの物語がどのように音楽で表現されているでしょうか。
- シューマン :パガニーニの奇想曲による6つの練習曲 Op.3
パガニーニは、1810年代生まれの若者たちに、決定的なインパクトを与えたヴァイオリンの名手です。ピアニストを目指していた若きシューマンもまた、パガニーニの演奏を聴いて恍惚とし、古典は静かなもの、という従来の芸術観から脱皮しました。シューマンの作品5もパガニーニによる練習曲です。
- ヘンゼルト :12のサロン風練習曲 Op.5
リストより3歳年下のピアニスト兼作曲家、アドルフ・フォン・ヘンゼルトは、のちにリストが書くようになった詩的な練習曲の先駆けとして重要な存在です。「12の演奏会用性格的練習曲」作品2の続編である作品5も、それぞれにタイトルがついたたいへん詩情と歌心豊かな練習曲集です。
- 2つの左手のための小品Op.9
スクリャービンは、モスクワ音楽院時代にピアノの練習で右手首を故障してしまいました。怪我が完治するまでの間、左手の訓練に時間を費やしたことで、12の練習曲でみられるような、左手の高度な演奏技術・奏法を生み出したと言われています。この左手のための小品にもスクリャービンの左手の奏法が色濃く反映されています。
- グリーグ :ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラード
ショパン以後、バラードは急速にピアノ曲ジャンルとして重要な地位を占めるようになりました。ショパン以外でバラードはリストやフォーレの作品が知られていますね。それらほど頻繁には耳にしませんが、グリーグもノルウェーの民謡を素材とした素晴らしいバラードを書いてます。ショパンが祖国と音楽のかかわりを不可欠と考えたのと同じように、グリーグも変奏形式のバラードに祖国の旋律を託しています。
- レーガー :6つの小品 Op.24
シューマン、ブラームスへと続くドイツのロマン主義的性格小品集の伝統は、どこにつながっているのでしょうか。19世紀後半になると、音楽史の関心は「フランス近代」へと移ってしまって、そのあたりが見えにくくなっています。しかし、その確かな継承者がいるとすれば、マックス・レーガーでしょう。オルガニスト特有の重厚な響きの中に繊細な詩情が見え隠れします。
- リスト :12の歌(シューベルト) セレナード「聞け、ひばり」
ヒバリをテーマにしたピアノ曲は数多くありますが、歌曲からの編曲となると、リストのシューベルト歌曲『聞け、ひばり』が有名です。伴奏音型が雲雀の鳴き声を表しています。
- ラフマニノフ=レスピーギ:音の絵
レスピーギはラフマニノフの音の絵作品33と作品39の楽曲をオーケストラ版に編曲しました。ラフマニノフのレスピーギ宛の書簡では、ラフマニノフが作曲時にインスピレーションを受けたものについて語っています。
- メシアン :前奏曲集 鳩
もともと、前奏曲はタイトル付きの性格小品とは異なり、タイトルがつくことは多くはありませんでした。フランスではアルカンやドビュッシーが「性格的」な前奏曲集を書いています。若きメシアンの「前奏曲」も、この流れに連なっています。
課題曲チャレンジで皆さんが演奏するのは、2020年度ピティナ・ピアノコンペティションA2級からF級までの指定課題曲です。例年、いくつかの級に跨って課題曲指定されているバッハや古典派のソナタ、ショパンのエチュードなどを除く今年度特有の課題曲にはほとんど、解説文を付けました。ぜひピアノ曲事典上で読んでみてください。
3月末の特集記事「 おうちで課題曲聴き比べ」では、級ごと期ごとに演奏を並べた再生リストを使えるようになっていますから、お目当ての曲を簡単に聴き比べられます。ここで視聴できる動画も、すべてピアノ曲事典に収録してあります。解説文を読みつつ聴きなおし、弾きなおしをしたら、曲の見え方(聴き方)が変わるはず。ぜひ目と耳、頭も使って、曲に詳しくなってみてください。
「4曲名人」という言葉をご存じですか。3月1日の課題曲発表から8月末の決勝大会まで半年近くの期間、コンペティションに向けた練習だけを重ねて、課題曲は見事に弾けるけれども、楽譜を読む力も応用力も身につかないことがあるのではないか、という批判的な指摘の言葉です。しかし4曲を見事に仕上げることだって立派なことですから、そんな言葉を気にせず、大いに4曲を練習していただきたいと思います。でも、他の音楽を聴いたり、ちょっと弾いてみることで、今練習している曲の別の面が見えることがあります。「寄り道だと思っていたら、実は近道だった」ということがあるかもしれません。『課題曲をとりまく作品を聴こう!』ページもぜひご一読ください。
長い時間と手間をかけて決められるコンペティション課題曲にはピアノ指導者の知見と心配りが詰まっています。課題曲選定委員長の本多先生に、2020年度課題曲の選曲テーマや、その取り組み方をうかがいます。
2020年のピティナコンペティションは、お家での動画投稿によるチャレンジ企画となりましたね。一度は「幻の課題曲」になる運命とも思われましたが、こうして再び皆さんの手元に戻り、生きた音となることを楽しみにしています。
今年はベートーヴェン生誕250年ということもあり、世の中はベートーヴェンのコンサートで溢れるはずでした。課題曲の中にもB級C級に(もちろんD,E,F級にも!)ベートーヴェンの曲が選曲されています。記念すべき年に偉大な作曲家ベートーヴェンの曲にも、触れて頂けたらと思います。 できれば課題曲のみ、そしてピアノ曲のみならず、オーケストラや室内楽も是非聴いて頂きたい。ベートーヴェン時代の楽器の音源聴くことができます。ピアノで奏でるときの音のイメージはより膨らむでしょう。
そして、是非ピアノ曲事典のサイトを活用して下さい!
皆さんが選んだ曲の作曲家はどんな人?どんな時代を生きた人?この曲が生まれた背景は?他にどんな曲を作曲している?多くのことを知ればその作品が身近に感じられ、豊かな表現に繋がります。
知る喜びと感じる喜び、そして表現する喜び、たくさんの喜びを手にして頂けたら嬉しいです。
ピアノ曲事典に最も多くの音源を載せている一方、ピティナ・ピアノコンペティションはじめコンクール指導者としても絶大な信頼を集める赤松先生。「音楽の世界の歩き方」をおうかがいします。
まず4曲を演奏するということの価値をあらためて強調しておきたいと思います。
自分の好みに関わらず、「四期」に基づいて音楽史の全体像を知ることは、若いピアニストにとって良い仕組みですね。
全体像は地図のようなイメージです。最初は大雑把なものだったのが、毎年チャレンジし続けることで、次第に縮尺の大きな地図が書けるようになってくる。
そんなチャレンジを進める上ではぜひ、ある作曲家のことを「知りたい」と思う気持ちを持っていただきたいです。そうしてまずは同じ作曲家の様々な曲を知ること。そして、同時代の曲も知っていただきたいです。
寄り道しないと新しい発見はありません。「その一曲」をしっかり読むのはもちろん大切ですが、他の人がその曲をどう見ているか、どう表現しているかを知ることも大切です。たくさんの「点」を持ってください。それらを組み合わせることで、新たな「線」をひくことができるようになります。
ある曲を弾いていて、「このフレーズは聞いたことがある」という瞬間があります。「ブラームスのこの曲のこの部分はもしかして平均律のあの部分かな?」といったことです。作曲家もそして我々も知らない間に「吸収」していて、それが、作曲や演奏にふと現れます。今年の課題曲なら田中カレンさんの「戯れる春の光」を聴いてみてください。初めて聴く曲でしたが、この曲の左手は以前課題曲になった同じ田中カレンさんの「きりん」と同じパターンですよね。これを知れば「きりん」の見え方、聴こえ方も変わるでしょう。影響関係は過去の音楽からだけでなく、新しい曲が以前の曲に影響を与えることもあるわけです。
さまざまな経験を重ねていけば、200年前も今も、音楽は一つの大きな流れの中にある、というような感覚を強く持つことができますね。
例年行われているコンペは、文字どおり「競争」です。でもそれが「チャレンジ」になって、すこし心のくつろぎが生まれたのでは?そんな心の「あそび」に、『ピアノ曲事典』を滑り込ませてみてください。
私は『ピアノ曲事典』の読者ですが、「書き手」でもあります。「事典」というと、知識をため込む場所とお考えの方もおられるでしょう。たしかに、事典には「知識の貯蔵庫」としての側面もありますが、その知識に生命を吹き込むのは、読者のみなさんです。
情報を覚えたりするのは単なる「勉強」で、学びのいち部分にすぎません。学びとは、もっと実感に根ざした「あそび」に近いものです。たとえば、自分で課題曲にまつわるクイズをつくってみるというのは、とてもよい学びの方法です。アメリカ民謡「ドナルドおじさん」のもとの曲はどんな歌?「フレール・ジャック」の「ジャック」ってだれ?ハチャトゥリアンの「小さな歌」によく似たショパンの前奏曲は?そして、友達と、生徒と、先生と、クイズをシェアしてみましょう。答えが分かっている必要はありません。
『ピアノ曲事典』も、全ての問いには答えられないでしょう。でも、誰かが作った答えを「知っている」ことよりも、みずから上手に問いを立て、答えを探しに行けることのほうが、きっと人生を豊かにするはずです。ぜひ、チャレンジしてみてください!
ゴールデンウィークが明けてもStay at homeは続きます。気候が良い季節なのに外へ行けないと考えると辛いですが、ピアノを弾ける時間が増えている人は多いと思います。 そんななか、5月1日からエントリーが始まった課題曲チャレンジに合わせ、ピアノ曲事典に解説文や動画などをたくさん載せましたので、ご紹介します。
クラシック音楽は「再現芸術」と言われることがありますが、200年前の曲を演奏したとしても、当然のことながらそれはそのままの再現ではありません。今の世相や演奏者のオリジナリティを反映して、鳴り響くとともに生まれる現代の音楽でもあります。
別の言い方をするなら、作曲された時点でその曲が完成するわけではありません。演奏され、それが聴かれて、また新しいアイデアが生まれて・・・音楽は生き物のように、常に変化し続けます。ピアノ曲事典は多種多様な音楽の姿をとらえることを、狙いとしてきました。そして今、この状況だからこそ生まれる音楽もあるはずです。2020年、オリンピックが延期となった年。課題曲チャレンジを通じて音楽を生み出す皆様を、応援します。