ピティナ調査・研究

映画『言えない秘密』劇中曲紹介

言えない秘密
2024年6月28日(金) 全国ロードショー!!
映画公式ページ

1つの旋律が繋いだ運命の出会い。
映画初単独主演・京本大我×恋愛映画初ヒロイン・古川琴音で贈る珠玉のラブストーリー
本編を彩るショパン楽曲の数々をピティナ・ピアノ曲事典の解説・演奏動画とともにご紹介いたします。

Introduction

留学先での経験からトラウマを抱え、音楽大学に復学しながらもピアノと距離をおこうとしていた湊人は、取り壊しが決まった旧講義棟から聴こえてきたピアノの音色に引き寄せられるように雪乃と出会う。ミステリアスな雰囲気を持つ彼女に湊人は惹かれ、次第に2人は心を通わせていく。授業をさぼって海を見に行き、連弾し、クリスマスを共に過ごし...お互いにかけがえのない時間を過ごしていたはずだったが、湊人の前から雪乃は姿を消してしまう――。

青春時代に誰もが経験する淡く切ない恋を描きつつ、誰も予測できないミステリアスな展開が大きな話題を呼び、アジア全域で支持された台湾発の純愛ラブストーリーを原案に、新たな珠玉のラブストーリーがここに誕生した!その「秘密」が明らかになる時、これまで見えていた世界は180℃変わる――。

劇中曲のご紹介

本編を彩るショパン楽曲の数々を、楽曲解説とともにフルバージョンでお届けします。

ショパン:エチュード「黒鍵」op.10-5

ショパンは、作品10と25のそれぞれ12曲ずつ、その他3曲のエチュード(練習曲)を作曲しましたが、それらはもはや演奏のテクニックの習得という目的を超え、多様な色彩や表現の豊かさを追究したものであるということができるでしょう。1830〜32年に作曲されたこの曲は、右手が黒鍵のみを弾き続けることから、「黒鍵」という名で親しまれています。色彩豊かに移り変わる和音の上で、きらびやかなパッセージが繰り広げられます。
作中では、登場人物が一気に畳みかけるようにこの曲を演奏しています。その迫力ある演奏からは、何かに突き動かされるような強いエネルギーを感じ取ることができるのではないかと思われます。

エチュード「木枯らし」op.25-11

ショパンのエチュードに付けられたタイトルは、作曲者自身によるものではなく、後の時代に名づけられたとされています。この曲は、「木枯らし」という通称から想起されるように、静寂をまとった序奏から一転して、激しく雪崩れ落ちるような右手のパッセージと、左手の力強く厳格なリズムが激しく鳴り響きます。中間部では、明るさが垣間見られますが、再び高音域から勢いよく下降するパッセージが回帰します。
作中では、先に紹介したエチュード「黒鍵」に続いて演奏され、波のように容赦なく押し寄せる激しさが、場面の緊迫感を引き立たせているように感じられます。

ワルツ7番 op.64-2

ショパンは、1831年頃から数多くのワルツを作曲しましたが、とりわけこの曲は、ショパンの晩年にあたる1846〜47年に作曲されています。曲全体に漂うメランコリーな雰囲気は、作曲当時、ショパンが長年同棲していたジョルジュ・サンドと破局した際の複雑な心境を思わせるかのようです。中間部は、一見すると優雅に感じられますが、華やかというよりはむしろ、どこか郷愁に浸りながら展開されます。全体を通じて絶妙に揺れるワルツのテンポ感が、登場人物の揺れ動く心情と相まって鳴り響きます。

華麗なる大円舞曲 op.18

この曲は、ショパンの生前に出版された最初のワルツです。「華麗なる大円舞曲」というタイトル通り、華麗で爽快な曲想をもっています。冒頭で同音の反復によるモティーフが鳴り響くと、軽やかで歯切れのよい3拍子のリズムが刻まれます。その上に、次々と華麗な旋律が繰り広げられながら、美しくしっとりと歌いあげるような抒情性も感じられます。情感豊かで華麗なこの曲は、場面描写に彩を添えると同時に、演奏する登場人物の心情を効果的に映し出しているように思われます。

ノクターン1番 op.9-1

この曲は、2番、3番とともにショパンが最初に出版したノクターンです。仄暗さを漂わせる伴奏の上で、感傷的で情緒豊かな旋律が歌われます。中間部では、緩やかな場面の移り変わりを経て、極めて甘美な旋律が浮かび上がってきます。その後、冒頭の旋律が再現され、最後は憂鬱さが解き放たれるかのような安堵感で締めくくられます。
作中では、この曲が複数回にわたって使用されます。「ピアノの詩人」ともいわれたショパンのロマンチックで甘美な旋律を奏でながら、それぞれの場面で登場人物たちはどのような想いを抱えているのでしょうか。映画を鑑賞される際には、是非、登場人物の奏でる音楽にも耳を傾けてみてください。

column

ショパンは、生涯にわたって各国で演奏活動を行い、旅先で多くの人物と交流しました。ショパンが、フランツ・リストの紹介で作家ジョルジュ・サンド(1804–1876)に出会ったのは1936年末。その後、病弱なショパンは、サンドとともにマヨルカ島やパリ、ノアンで療養生活を送ります。ショパンとサンドとの恋愛関係には諸説ありますが、病を患うショパンが作曲に没頭できたのは、少なくともサンドの献身的な支えのおかげであったといえるでしょう。
しかし、ショパンの病状は徐々に悪化。さらに追い打ちをかけるように、10年間続いたサンドとの関係は破局を迎え、数年後、ショパンは39歳の生涯に幕を閉じました。

楽曲解説・コラム執筆=飯島帆風


白熱の「ピアノバトル」、湊人と雪乃の連弾、ステージでの演奏シーンにて、ショパンの名曲、そして富貴晴美さん作曲の「Secret」が美しく映画を彩ります。その「秘密」をぜひ劇場でお楽しみください。

作品情報
出演 京本大我 古川琴音
横田真悠 三浦獠太 坂口涼太郎/皆川猿時 西田尚美 尾美としのり
監督 河合勇人
脚本 松田沙也
音楽 富貴晴美
原案 映画『言えない秘密』
主題歌 主題歌「ここに帰ってきて」 SixTONES (Sony Music Labels)
配給 ギャガ
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