「続けること」が自信に。師とのご縁に感謝し、生徒の「自発性」を育む指導へ
「続けること」が自信に。師とのご縁に感謝し、生徒の「自発性」を育む指導へ
私がピアノ指導者を目指すようになったのは、恩師である松波知子先生に憧れていたからです。大学卒業後、いよいよ指導のキャリアをスタートさせました。
当初の仕事は、すべてが楽器店だったわけではありません。火曜日はそちらの教室、水曜日は紹介を受けた別の教室(講師の方の産休代理として5年ほどお世話になりました)、そして木曜日は自宅での指導という形でした。
特に、最初に採用していただいた楽器店とは深いご縁を感じています。実は卒業当時、新規講師の募集はなかったのですが、これまでお世話になった先生方が掛け合ってくださり、面談の機会を得て採用が決まったという経緯があります。
その後、退職される先生を引き継ぐ形で外での指導が増え、週4日の午後を楽器店の教室で過ごすようになった頃、同時に自宅の生徒さんも増えてきました。それを機に、少しずつ自宅での指導へ軸足を移していき、現在は自宅で30人、楽器店で4人(週1日)を教えるという今のスタイルにたどり着きました。
自宅のレッスン室自宅での指導がメインになった今も、楽器店でのレッスンは生徒さんがいる限り続けたいと思っています。
それは、まず第一に、先生方のご尽力のおかげで指導者人生をスタートさせてもらえたという感謝の気持ちがあるからです。そして、自宅の生徒さんが楽器を買う際も、とても親身になって相談に乗ってくれたり、経過を逐一連絡してくれたり、その楽器店の面倒見のよさには感謝しきれません。
また、自宅ではない自分のテリトリー外でレッスンすることや、他の先生方とお知り合いになれたりするなど、「楽器店講師」という立場が、私自身の成長にとてもプラスになっていると感じています。もちろん、今教えている楽器店の生徒さん方への思い入れもあります。たった1日になってはしまいましたが、可能な限り続けたいですね。
自宅の生徒募集では、最初は友達の紹介がメインでしたが、現在はInstagramのDMからの入会が意外と多く、そこまで入会希望がくるとは想定していませんでした。
指導者になってすぐは、私自身と生徒さんとのギャップに苦戦しました。他人のレッスンを見た経験がほとんどなかったので、全てが自分基準です。「なんでこれが理解できないんだろう」と思うことがたくさんあり、自分が苦労せずに理解したことを説明することの難しさに頭を抱えましたね。
逆に、私が苦労したことをあっさりこなす生徒を見ると、「みんな得手不得手があるのだから、上手く説明できない私が悪い」と考え、できる限りみんなの「分からない」を「分かる」に変えられるよう、目視で分かるように手作りの教材を作ったりしました。


私は練習を真面目にやるタイプだったので、当初は「練習した回数色塗り」のシートを渡していました。「1週間で100回くらいあっという間に終わるだろう」と思ったら、生徒が私の想像より弾いていないことが発覚して(笑)。
ただ、回数は弾いていないのに曲が完成していくことに気づき、「回数じゃない、自分に合う練習方法を見つけられたらいい」と思うようになりました。現在は練習時間記録に変わっています。記録は向き不向きがあるので、真面目につけてくれる子とくれない子がいるのは気にしていません。小学生の間に生徒自身が自分の練習方法を確立することをテーマに奮闘中です。
私が「自発性」を大切にする指導を意識し始めたきっかけは、生徒のワークの丸つけでミスを指摘した時に「答えを教えて」と言われたりしたことが積み重なり、「今の子たちは分からなかったら調べる、ということをしないんだ」と感じたことです。楽譜を少し確認すれば答えが書いてあるのに、分からなかったら探してみるという発想があまりない。
そこでまず、調べる機会を作ることにしました。数年前から「作曲家を調べよう」という課題を始め、調べるだけでなく、発表する所までをワンセットにしています。他の生徒が見られるように発表動画を撮るようにしたら、不思議と手を抜くことがなくなりました。
最初はみんな何を書いたらいいか分からず、インターネットの情報をまるまる書き写してくるような原稿もありましたが、発表、添削、返し、を繰り返していくうちに、だんだん「どんなことを書けばいいか」「どこを削ればいいか」が分かり、内容の精度が上がっていきました。



そして、次第に「困ったら前にやってないか遡る」という行動が同時にできるようになっていき、私があれこれ言う必要が減ったという感じです。自分で調べることへの抵抗を少し削れたのだと思っています。
この「前に得た知識を新しいことに活かす」ということを続けていたら、演奏面でも生徒に「言わなくてもいいこと」が増えていき、「どうしたら上手くいくか」や「ここが上手くいかない」と相談してきてくれるようにもなりました。
今は、できるだけ早いうち、成長度合いによりますが早い子は年長くらいから「どうして上手くいかないのか」「どこがどう違うのか」を自分で考えて、自分の言葉で話すという考えるきっかけを作っています。
また、「こうしなさい、やりなさい」ではなく、「そうした方がいい理由」を小さなうちからでも伝えるようにしています。「手の形を整えた方がいい理由」などの姿勢面から、「打鍵と離鍵によって音色が変わる理由」などのピアノの構造を踏まえた技術面も、私が説明できる範囲はできるだけ説明しています。自分で意識していける下準備をするのが理想ですが、これも上手くいっているパターンとそうでないパターンがありますね。
私の教室は、ただピアノが弾けるようになるだけではなく、演奏だけではない経験もたくさん与えられる教室にしていきたいです。
特にやってみたいと思っているのが、生徒同士のレッスン見学会です。他の生徒がレッスンを受けている様子を見ることで、自分のレッスンを客観的に見直すきっかけになってほしい。生徒同士が互いに刺激しあい、演奏だけでなく人間的な部分も成長できる、そんな教室を目指して、これからも指導を続けていきます。

名古屋音楽大学 音楽学部 音楽学科 ピアノコース卒業
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