ピティナ調査・研究

習い事に留まらないピアノ教室を目指して

スタート!ピアノ教室

習い事に留まらないピアノ教室を目指して

幼いころから音楽を届ける喜びにふれて

私は4歳の頃、登坂睦子音楽教室でピアノを習い始めました。登坂先生のもとで楽しく学ぶうちに「将来はピアノ関係の仕事がいいな…」と思うようになったんです。
その時はまだ漠然とした思いでしたが、小学3年の春休みに菊地麗子先生主宰の国際ピアノ・シュロス研究会でポーランドに行き、コンチェルトを演奏する機会を得ました。その後、4年生でコンペの全国大会に進出。独特の緊張感や表彰式の華やいだ雰囲気が思い出に刻まれました。そして教室の恒例行事である老人ホームでの慰問コンサートで、自分の演奏を聴いて誰かが涙を流して喜んでくださる経験を経て「音楽って何て素晴らしいだろう!」と確信しました。
登坂先生に音楽の道に進みたいと相談したのは小学5年のこと。中学生になると菊地麗子先生に師事し、その後は東京音大の附属高校に進学しました。

コンチェルト体験やコンペ全国大会、慰問コンサートなどピアノにまつわる思い出がたくさん
コンチェルト体験やコンペ全国大会、慰問コンサートなどピアノにまつわる思い出がたくさん
思い出の教室で初の指導経験

東京音大進学後も懸命に自分の演奏を磨き、目の前の課題をこなす日々でした。変化が訪れたのは大学3年の春。登坂先生から「教室で教えてみない?」と声をかけてもらったんです。ちょうど大学でも指導法の授業を受けていて、理論だけでなく実践で学べることは自分の力になると思い、指導を始めました。教室では年中~大人の方まで幅広い生徒さんを担当させてもらい、音楽を専門に学んでいない相手にどうやって伝えたらわかってもらえるのか、指導の難しさ・奥深さにどっぷりとハマっていきました。
また、ただ教えるだけでなく教室運営や事務のお手伝いもする中で、子どもたちに様々な体験を提供できる、教室の中だけでなく地域を盛り上げる活動ができる指導者になりたい!と思うようになりました。登坂先生からも「このままうちで教えたら?」と仰っていただき、正式に講師になりました。
講師として駆け出しのころは、どれだけ手を尽くしても生徒がピアノの前に座ってくれないこともありました。そんな時は登坂先生に来てもらって、先生がその子にどんな対応をするのか間近で学びました。空きコマでは、登坂先生や他の講師の先生のレッスンを見学し、様々なタイプの子どもの反応とその対処法を知ることができました。登坂先生は「まずは教室に来ることと、先生を好きになってもらうのが大事」という考えのもと子どもたちと接していて、「楽しい」という気持ちがすべての起点になるんだと気づかされました。リアルな現場で勉強できたことは、私にとって大きな財産になっています。
最近、指導者としての成長を感じられる機会がありました。コンペの全国大会で入賞する生徒や、私の母校である東京音楽大学に進学する生徒が育ったことです。ピアノを通じて得られる、かけがえのない経験のたすきをつなげたような気がして嬉しく思います。

木のぬくもりが感じられるレッスン室
木のぬくもりが感じられるレッスン室
長くピアノを続けたくなる教室づくり

現在は、年少から85歳の方まで60人ほど指導しています。85歳のおばあちゃまは、娘さんと息子さん、お孫さんと親子3代で教室に通ってくれているんです。他にも親子2代で通っている方、35年間ブランクなく通い続ける方、昔生徒だった子が親になって、子どもを習わせたいと来てくださる方…と教室に関わる期間が長い人が多いですね。実は、私の息子もリトミックコースでお世話になっているんですよ。音楽大学ではない大学生や、学校の先生等もいらっしゃるので、夜の10時半までレッスンが入っていることもしばしばです。
音楽を楽しむ基盤として、正しく音符を読みリズムを取る力は徹底して身に着けさせます。受験などで離れる期間があっても、基礎ができていれば再開しやすいからです。音楽大学や音楽高校の先生をお招きした公開レッスン、親子セミナーなど、生徒の意識を高める取り組みも行っています。
また「この教室で楽しい経験ができる」、「仲間ができる」ことも長く続けるための原動力になります。ですので発表会ではソロだけでなく4人以上の連弾(2台8手)を必ず行います。発表会では、年42回のレッスンと発表会、そして水海道ステップすべてに休まず出た人を「皆勤賞」、一回だけお休みした人を「準皆勤賞」として表彰し、金メダル、銀メダル、賞状を用意しています。昨年第57回の発表会では皆勤・準皆勤あわせて86人も受賞者がいたんですよ。
またお楽しみ会や夏祭りなどピアノと直接関係のないイベントも開催しています。生徒さんがずっと続けたくなる、また一度離れても戻ってこれるような教室のあり方を常に考えています。

「習い事」以上の経験をプレゼントしたい

教室では「子どもの心が豊かになる経験を」という考えのもと、様々な催しを実施しています。例えば「卒園記念コンサート」。ドレスなどの正装で写真を撮影し、一人ひとりポスターを作成しています。そして、きちんと衣装を着て、カメラが見守る特別な雰囲気の中で演奏も披露してもらいます。その他にも、ピアノに限らずオーボエや指揮等で専門の道に進んだ教室OBを招いて、地域の方も聴きに来られるコンサートや楽器体験企画も開催しています。教室の庭をイベントスペースにして、保護者の皆さんにハンドメイドの小物や食べ物を販売してもらったこともありました。
振り返れば、私にとってピアノは単なる習い事以上の様々な経験、出会い、ターニングポイントをくれたものでした。人生にとってかけがえのない経験を、自分の教え子にも提供できる指導者になりたいと思います。

金田千佳

東京音楽大学付属高等学校、同大学ピアノ演奏家コース卒業。これまでポーランド国立クラクフ室内管弦楽団、N響団友オーケストラ他、国内外においてオーケストラと多数共演。ピティナ•ピアノコンペティションをはじめ、各種コンクールにおいて入賞者を多数輩出。ピティナ・ピアノコンペティション新人指導者賞、指導者賞受賞。現在、登坂睦子音楽教室主任講師、認定こども園音楽指導講師として後進の指導にあたる。リトミック初級•中級•上級指導資格、幼稚園・保育園のためのリトミック指導資格1級取得。