ピティナ調査・研究

ピアノ指導で感じた「働く喜び」

スタート!ピアノ教室

ピアノ指導で感じた「働く喜び」

高3の夏、先輩の演奏がきっかけで音大進学を決意

音楽の道を志したのはいつ頃からでしょうか?

私は高校までは教育学部志望で、ピアノは続けていたものの音楽の道に進もうとは思っていませんでした。恩師から芸大を勧められても躊躇していたんです。そんなとき、同門の先輩の演奏を聴く機会があり、演奏を聴いて涙が止まらないくらい感動しました。こんなにも人の心を揺さぶる音楽の道に進みたいと、高3の夏から芸術系コースに移りエリザベト音大に進学。翌年からは、京都市立芸術大学に移って学びました。たくさんの課題に向き合うのに精いっぱいで…でも、忙しくも充実した毎日でした。

では、指導をするようになったきっかけは…?

大学3年の頃に知人からレッスンの依頼をいただいたのをきっかけに、少しずつ指導するようになりました。できないことができるようになる姿を見て喜びを感じたのを覚えています。小さいうちから人間形成に関われる、指導という仕事の魅力に気づいたのもこの時でした。

教える喜びに触れて指導の道へ

卒業後はすぐに広島に戻り、音楽教室に講師として勤務しつつ、音楽以外に4つ以上のアルバイトを掛け持ちしていました。とても大変でしたが、他の分野のアルバイトを経験することで、人との関わり方、仕事の責任の持ち方、気遣い、心配り等、音楽だけではない社会人として大切なことの多くを身に付けさせていただけたと思います。そして「自分のスキルを活かせる、働いていてもっとも喜びを感じられるのはピアノ指導だ」と確信できました。勤務先の音楽教室を主宰していた先生には、保護者とのコミュニケーションや運営ノウハウなど教室経営に必要な知識をたくさん教えていただき、独立することも温かく応援してくださいました。いただいたアドバイスも参考にしながら、マンションにチラシをポスティングしたり、広告会社と契約して路線バスに広告を出したり、自営業の会に入ってウェブサイト作成方法を学んでサイトを自作したりと、独立に向けて生徒募集に力を注ぎました。

一番効果があったのは?

もっとも反響が大きかったのはウェブサイトでした。ウェブサイトは何度か作り直していますが全て自作です。現在のページは「写真で教室の雰囲気を感じられること」「最初のページで教室の理念や自分の思いが伝わること」を心掛けて作成しました。現在は満員になったので更新頻度は下げましたが、当時はブログを毎日投稿していました。更新を途切れさせないことで見てくださる方が増え、教室を立ち上げてから2年ほどで独立できるくらいの生徒数になりました。

転勤の多い地域…引っ越し後もピアノを続けてもらうために

レッスンで気をつけていることは?

私の教室があるエリアは転勤される方が多いので、早めに基礎力をつけ、引っ越して教室を離れるまでにたくさんの曲を弾けるようにしてあげたいと考えています。なので、小学1年生になるまでに自分ひとりで高音域まで楽譜を読めるように指導します。教材も効率よく力がつくものを研究しました。
教材を進めるのに苦戦する子には、ポップスなど好きな曲を弾かせます。ただし好きな曲を弾く前に、通常の教材・テクニックを先に片付けるのが条件です。そうすると、レッスンで弾きたい曲を指導してもらえるよう頑張って練習してくれるんです。子どもによって一冊すべてコンプリートするのが性に合う子、本人のやりたい順番で取り組んだ方が向いている子がいるので進め方はそれぞれですが、ペースは落とさないよう、宿題もきちんと出します。

宿題の量はどのくらいですか?

ハノン・スケールと曲を何曲か…だいたい1時間のプログラムが組めるような量を出しています。忙しくて練習時間が取れない場合は30分に調整します。これから譜読みする曲に加え、過去に合格した曲も弾き続けてもらいます。本人に必要な課題が入っている曲を提案する場合もあれば、本人のやりたいものを選んでもらう場合もありますね。過去に合格したレパートリーを弾き続けることで、必要な技術を絶えず訓練することができます。どんなに短い曲でもいいので、基本的に5曲以上のレパートリーを持って、読譜力とテクニックの向上を目指します。
この宿題の出し方はレッスン見学で学んだものなんです。見学先の先生が「1曲につき3回花丸をつける」と仰っていて、本人の頑張りを認めつつ課題を継続できる良いやり方だと思い、自分に合った形に発展させて今の形に行きつきました。

音楽を共有する場づくりがしたい!

今後はどのような活動をされたいですか?

伴奏ピアニストとしてのお仕事に加えて、久しぶりに自分のコンサートを企画しています。私自身も舞台に上がり続けなければ本当の意味で生徒に共感するのは難しいと思うし、曲を仕上げる過程で今作品の解釈、文化的背景への理解を深められ、生徒にもそれを還元できると感じています。
10月には新教室をオープンし、今までより広い空間と良い音響でレッスンできるようになりました。ゆくゆくは、生徒たちが集まってチェルニーやインベンションなどの一人では意欲が上がりにくい練習曲に皆で取り組むイベントをしたいですね。仲間と共に音楽を共有し、お互いを高め合える教室にしていきたいと思います。

宮本祥子

エリザベト音楽大学を経て京都市立芸術大学音楽学部ピアノ専攻卒業。ペトロフピアノコンクール第3位。ハンガリーリスト音楽院マスタークラスに学費免除で推薦され修了。2021年にはピティナ指導者ライセンスを全級取得するなど自身の研鑽を継続しながら、主宰する宮本ピアノ教室で後進の指導にあたり、多数の指導者賞を受賞している。ピティナ(全日本ピアノ指導者協会)正会員。