ピティナ調査・研究

ピアニストから指導者への転換、その道のり

スタート!ピアノ教室
「演奏する側」から「教える側」へ

20代は伴奏者、転換して指導者に

「教えるほうが好きかもしれない」

ピアノ指導を始めたのは、大学院を修了してから1年たったころです。知り合いの紹介で音楽教室の講師を週1回務めるようになりました。また、当時近所だった保育園の園長先生からお声がけいただいことがきっかけで、園内の施設をお借りして自分のピアノ教室をはじめました。現在は、その教室で毎週25人ほどを教えながら、大人の方への出張レッスンや週3回の外部音楽教室での勤務も並行しており、全体で約50人を指導しています。

大学院を卒業してから20代の間は、合唱などの伴奏をメインに活動していました。当時は「演奏がやりたい」という思いの方が強かったんですね。指導に関していうと、子どもは好きでしたしピアノを教えること自体には興味はあったのですが、彼らを教えることに責任が持てるだろうか、という考えがありました。ただ、あるとき伴奏のお仕事を色々と引き受けすぎてしまって、疲れがたまってしまったんです。ちょうどそのころ自分の生徒さんが増えてスケジュールが安定するようになっていた時期でもありました。「自分は教えるほうが好きなんじゃないかな」と考えて、指導者の仕事に軸足を移していきました。ただもう少し現実的な理由もあって、伴奏だとどうしても単発の収入が多くなるんです。対して、ピアノの先生ならば毎月のお月謝の収入があります。不安定な伴奏の仕事と比べて、定期収入のある指導者業に魅力を感じたというのもひとつの側面です。また、ピアノを弾くことは好きだけれども人前で弾くのは緊張するタイプで、他の演奏者を見ると「自分は弾く側の人間ではない」と感じたこともきっかけだったかもしれません。

縁あって開講した主宰教室
生徒には早くからバッハに触れてほしい

導入初期の5、6歳の生徒には自作プリントとソルフェージュの教本だけ渡して、ドレミファソだけで弾けるようにアレンジした曲を弾いてもらいます。指導者になって間もないころに出席したセミナーで出会った永瀬まゆみ先生の「さきどり!ピアノテクニック」という教材がしっくりきて、この手法はずっと続けているんです。演奏する様子を聴いてから、それぞれの生徒に適した教材を複数組み合わせて取り組んでもらうようにしています。まだ試行錯誤の段階ではありますが、ようやく自分なりのパターンが固まってきたところです。また、生徒にはプレインベンションなどポリフォニーには早めに触れさせておくようにしています。なぜかというと、自分が構造とフーガの説明を受けずにいきなりインヴェンションを弾かされたので、あまりバロックが好きじゃなかったんですね。生徒たちにはつまずいてほしくないと思って、レッスンでは自分の書いた絵を見せて説明したり、工夫をしています。ただ理論より感覚から入る生徒にはあまり響かないみたいで、同席した保護者の方から「数学みたいなお話でしたね」と言われてしまったこともありました(笑)ちょっと説明がくどかったのかな、と反省しています。

わかりやすく楽しく伝えたい!レッスングッズの数々
細やかな感染対策のもと行った発表会
保護者から感謝の声

コロナ禍のなか、7月に教室の発表会を行いました。自粛期間中もオンライレッスンで指導は続けていましたし、発表会は中止するにしても動画発表など何らかの形で生徒に演奏の機会を持たせようとは考えていたんです。けれど5月の終わりに保護者の方から「発表会はやらないんですか?」とお声がけいただいたことがきっかけで、6月に現地レッスン再開してから保護者の方々に意見を伺ったうえで、発表会を開催することに決めました。演奏者は30人、休憩時間を通常より短くし、二部制で行いました。舞台袖に演奏者が集まらないように人数調整をするなど感染対策に気を遣う一方、終演後の全体撮影をなくす代わりに舞台上での撮影は自由にするなど工夫をしたおかげか、終演後のアンケートでは「細やかな運営ありがとうございます」と好意的なお言葉をいただくことができました。

発表会での感染防止対策
前田和弘

洗足学園音楽大学を優秀賞を得て首席で卒業。同大学院を首席で修了。読売新人演奏会、日本ピアノ調律師協会による新人演奏会等に出演。アンサンブルピアニストとして、多くのフルーティストや声楽家と共演。ソロリサイタル、フルートとのデュオリサイタルを定期的に開催。現在、約50名の生徒を指導。コンクール入賞者や音大合格者を輩出するなど、音楽教育にも力を注ぐ。

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