ピティナ調査・研究

開業資金0円 夫婦二人三脚でピアノ教室運営

開業資金は0円から。

二人三脚で目指す「音楽での社会貢献」

どのようなきっかけで、指導の道に入られましたか?

慎一郎先生(以下、慎): 大学では作曲、特に現代音楽の分野を専門に学んでいました。入学したときにはそれこそ「作曲で食べていきたい!」とはりきって目指していましたが、在学中にそれは難しいということに気づきました。そして「現代音楽により近いところで仕事をしたい」と考えなおし、卒業後は大学や大学附属音楽教室での非常勤講師の職につきました。大学や附属音楽教室でも「指導」はしていましたが、作曲や和声学など専門的に学びたい人に向けての指導がメインでした。
「音楽教育全体」のことを考えるようになったのは30歳目前です。音楽以外の一般企業の方々との交流の中から、音楽を学ぶ人口のうち更にごく一部しか触れることのない「現代音楽」だけではなく、もっと広く"音楽を学ぶ人たち"への興味が湧き、指導をしてみたいと思いました。その後、結婚も経て「せっかくだし2人で教室やってみない?」と始めたばかりです。なので、指導者としては本当に新米です。

真唯子先生(以下、真): 私は大学卒業後、島村楽器音楽教室でピアノ講師をした後、Kバレエ・カンパニー(熊川哲也氏主宰)の専属ピアニストを勤めていました。バレエピアニストの仕事は常にたくさんの曲を演奏するのでレパートリーは一気に広がりましたが、片手間にはできません。充実した時間を過ごしましたが、子どもたちがバレエを教わっている様子を見る中で、やはり自分が音楽を「指導したい」という気持ちに気づきました。
私個人の考え方ですが、「演奏活動」というのは確かに社会と関わることができるけれど、『社会から求められている』『社会の役に立っている』ことかと問うとちょっと疑問も残ります。『音楽で社会に貢献したい』と思ったらやっぱり「指導する」のが一番ではないか、という考えに至りました。

「教室をやってみよう」と思って最初に着手したことは?

慎:まずは宣伝しないといけないのでWEBサイトの作成です。僕たちは開業資金0円でしたので、できることは全部自分たちでやりました。ゼロから全て自作です。文章や構成を私が考えて、デザインやプログラミングは妻が担当しています。

▲「ゼロから2人で自作」のWEBサイト。

真:WEBサイト作成の本を読んでみたら自分でできるかもしれない!と思い、やってみました。始めてみると結構面白くって。

慎:Googleアナリティクス等を活用しながら、SEO対策なども自分たちでやっているのですが......なかなか難しいですね。
WEBサイト作成に限りませんが、自分で教室を運営することになって初めて、「音楽・教育的なこと」と「経営・ビジネス的なこと」のバランスをとる難しさに気がつきました。
もちろん、教室として経営が成り立たなければならないので、「経営・ビジネス」の視点を忘れてはいけないし、だけどそこばかり強くなってしまうと、今度は僕たちが大事にしたい「音楽の本質」から遠ざかってしまうような気が......。

真:SEO対策ばかり意識してしまうと、どんどん胡散臭い営業文句ばかりになってしまって......(笑)

慎:試行錯誤しています。

WEBサイトを拝見し、「お二人での二人三脚指導」のほかに慎一郎先生の経歴のところにも特徴を感じました。

慎:発達障がいの一種であるADHDと診断されたこと、を公開していることでしょうか。以前は公開せずに仕事をしていましたが、現在は少しずつオープンにしていこうと考えています。
自分自身が生きづらさを感じていた経験も踏まえながら、当教室では、発達障がい(軽度)の方や、心の不調を抱える方も積極的に受け入れています。

▲発達障がいのピアニストとして有名な野田あすかさんからのお礼の手紙。 慎一郎先生が、野田さんの自作曲のオーケストラ編曲の担当もしている。

現在、生徒さんの半数くらい、なんらか不調を抱える方が通われています。もちろん、そのような方に限定しませんが、音楽が社会のなんらか助けになればと心から願っています。

宮川 慎一郎

1983年生まれ、山梨県甲府市出身。5歳からピアノを始める。 桐朋学園大学作曲専攻を卒業後、東京藝術大学大学院作曲専攻修了。音楽修士。 相愛大学音楽学部、桐朋学園大学音楽学部、桐朋学園大学附属子供のための音楽教室で講師を歴任する。現在、美ゞ音楽教室主宰、日本クラシック音楽コンクール審査員。楽譜はカワイ出版、アスコム、日本トロンボーン協会から出版されている。

宮川 真唯子

1989年生まれ、神奈川県出身。5歳からピアノを始める。 桐朋学園大学ピアノ専攻卒業。中高教員免許状取得。

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