ピティナ調査・研究

音大生と指導者の二足の草鞋 ピティナG級にも参加

指導と自身の演奏活動を両立。

『憧れのピアニストに教えてもらえる教室』を目指す!

幼い頃から、ピアノの先生とピアニストになりたかった

母がピアノ指導者で家がピアノ教室だったので、3歳ぐらいからずっとピアノに触っていました。「ピアノの先生になりたい!」と初めて思ったのは、たぶん5歳くらいです。その頃、母が企画したブルグミュラーリサイタルに出演したのですが、メディアなどにも取り上げられ、たくさん拍手をもらえたのがすごく嬉しかったんです。元々引っ込み思案な性格だったのですが、ステージに出ることで自信がつきました。この経験から、自然と「ピアニストにもなる!」と考えていたと思います。

小学校高学年からは母以外の先生にも習うようになったのですが、中学校の時、視野を広く持つためにも勉強を一生懸命やると決め、3年間コンクール出場をやめた時期がありました。そのぶんこの期間は、ピアノの基礎訓練は日々おろそかにしないようにしました。晴れて受験が終わった時は、「これで勉強に関しては、やれることはやったぞ」と自由になった気分で(笑)、その先はピアノに集中しようと決意し、音大を目指すために本格的に毎週外部のレッスンを受けるようになりました。

教室運営は、スタート時から実践主義!

18歳で音大に入学しすぐに小4・中3の生徒さんの指導を開始しました。音大ではピアノ教室運営のノウハウはあまり教えてもらえないので実践を積むしかないと思い、母や先輩の先生方から教室運営の方法を学びながら、手探りで指導を始めました。

最初の生徒さん2人が比較的指導しやすい年齢だったのですが、その次の出会いは3歳の生徒さんでした。5分も椅子に座っていられない、来る道中で眠っていたのでレッスン開始時には眠くてぐずぐずしてしまう......といった状況で、どうやって「ピアノ」を教えるのか。
指導経験が全然なかった当初は、本当に試行錯誤の連続で苦労したのですが、初めからこうした経験を積んだことはその後の大きな糧となりました。

指導・演奏・勉強の「三足の草鞋」で駆け抜けた大学時代

大学入学後すぐに指導も始めましたが、2年生までは大学の単位もぎっしりでした。日中、大学で実技の練習と、演奏を深めるために歴史や作曲家の思想を勉強して、家に帰って3歳ぐらいの生徒さんを座らせるところからレッスン開始、といった生活でしたので、2つの活動のギャップに翻弄される毎日でした。

演奏活動については、毎年必ず数本のコンクールに出ていましたが、2003年のピティナのG級参加はとても貴重な体験でした。決勝で、審査員の先生方が一回演奏を聞いただけで「その参加者に必要な指導・練習法」を指摘できてしまうことにすごく衝撃を受けましたね。この決勝の経験で、学生のうちは毎年のように全国レベルのコンクールの見学をするようになりましたし、現在自分や生徒達のコンクール出場の際に役立っています。

一方指導も、大学3年生以降少しずつ空き時間が増えたので、どんどん生徒を増やしたのですが、生徒の幅が増えれば当然勉強しなければいけないことも増えました。なので、時間があれば講座に参加したり、幼児教育の本を読んだり、各種資格や検定に挑んだり......という生活でした。大学院時代にピティナの特級を受けた時に見たチラシがきっかけで指導者検定も受けるようになり、5年ほどかけて全級を取得しました。

ちなみに留学は、大学一年生の時から交際していた年の離れた夫との結婚を優先したために断念しました(笑)。代わりに、入籍後に世界旅行をしていろいろな国を見て回りました。今後も家族旅行や、短期の海外講座などへの参加で、留学できなかった分の見聞を広げる機会にしていきたいと思っています。

目指すは、「憧れをはぐくむ」教室

私自身、恩師や同門の先輩に強い憧れを持って「ピアニストになりたい」と思うようになりました。なので、教室では「憧れをつくること」を重視しています。私自身も生徒の先輩ピアニストとして良い見本でありたいですし、同門のお兄さん・お姉さんが弾いているのを見て、「私もあんな曲をいつか弾いてみたい!」と小さい子が思えるような教室運営を目指しています。
憧れを生み出す場として、発表会とは別に「試演会」をやっています。「ワルツ」「ソナタ」「エチュード」など回ごとにテーマを決めて、好きな作曲家の曲を生徒たちに弾いてもらう会です。たとえばエチュードの回では、小さい子はブルグミュラーを選んで、大きい子はショパンを弾く。間近で年上のお兄さん・お姉さん、そして先生がかっこいい曲を弾くのを見ると、小さい子は「いつかあの曲を弾きたい!」と思いますよね。そういう気持ちを育てることを大切にしています。

▲レッスン室には、トロフィー・演奏会ポスターなど、子どもの「憧れ」をくすぐるグッズがたくさん。
指導者の醍醐味は「子育てを何回もできること」

18歳から指導を開始しましたので、その頃小さかった生徒さんが今ではお茶を飲む友達になっていたり、リトミックから始めた子がショパンのバラードを弾けるようになっていたりするんですよね。
一人ひとりの成長をずっと見てきて、子育てを何度もしているような気分。この成長を見られるのが生きがいです。

ピアノ指導者は、ピアノを通して人を育てる仕事なので、子どもを本気で好きになることが必要不可欠です。私は今、二人目の子どもがお腹にいて、今でこそ親の気持ちも分かるようになりましたが、指導を始めた時から、生徒さんや親御さんの声としっかり向き合い、1人1人に合わせた対応を試行錯誤してきました。
こうした意識は、実経験から徐々に得られるようになることだと思います。これから指導の道に進む若い方には、臆せずなんでも挑戦し、実践を積んでいく精神を大事にしてほしいなと思います。

塩田 藍 しおた あい

京都市立芸術大学院首席修了。 コンサート、リサイタル等で演奏を重ね、現在は一児の母。全日本学生音楽コンクール、日本音楽コンクール、ピティナG級・特級、各種コンクール全国大会で研鑽を積む。ピティナ新人指導者賞、ショパンコンクールin Asia 指導者賞、ピティナ指導者ライセンス全級取得。現在、神戸親和女子大学講師、あしびピアノ教室主宰。