ピティナ調査・研究

海外留学中断から2か月でピアノ教室立ち上げに成功

案ずるより産むがやすし!

広報グッズを全て自作し、準備期間2か月で自宅教室オープン。

高校1年時に恩師に見抜かれていた「先生への素質」

中学高校は理系の中高一貫校に通いながら、ピアノを続けていました。漠然と『先生』という職業への興味はありましたが、高校1年時の進路指導で、恩師から「あなたは先生にむいているかもしれないね」と言われたことにも背中を押され、更に具体的に考えるようになりました。
進学先については、一般大学の教育学部と音楽大学の間で迷い、音大でも教職課程を受講すれば教員免許取得ができるということもあり、最終的にはそれまで続けてきたピアノでの進学を選択しました。

大学4年時には教育実習を経験し、そこで『クラス全員を一定レベルに導く集団教育よりも、1人1人に寄り添い育てていくことがしたい。』と思うようになり、そうなると『学校の音楽の先生』ではなく『ピアノの先生』だな、と。いつかピアノの先生になりたいなと思うようになりました。
が、その頃は自分自身の演奏の勉強もとても充実していた時期でした。ウィーンへの短期留学を経て、やはり演奏への意欲が刺激され大学院へ進学し、大学院卒業後は留学を希望しその準備を進めていました。

まずは事務作業に注力!2か月での自宅教室オープン準備

2016年8月、大学院を卒業後留学準備を進めていたところ、家族の事情で急に留学を断念・帰国を余儀なくされました。
ですが、帰国しても私は学生ではないし無職!(笑)これは急いで働かねばと思い、急遽自宅でのピアノ教室準備に着手しました。 教室を開くには「まずは生徒さんを募集しなければ」「そのためには何が必要か」と考え、えいっ!と腹をくくり、まずは事務作業に注力しました。

WEBサイト・教室看板・名刺・チラシ、全て一から自作です。

▲自身でデザインを手がけた教室看板・チラシ・名刺。
遠藤先生:「素人仕事なのでよーく見ると......ね(笑)、そこはご愛敬で。」

看板・名刺・チラシのデザインは全て自分でおこない、印刷だけ発注しました。そうすることで、経費は随分抑えることができます。また、家の前に設置した看板にチラシを備え付け、通りすがりの方に持ち帰っていただくだけでなく、ポスティング業者に配布依頼もしました。

私の持論として「やる気になったときに即やらなきゃ!」というのがあります。先延ばしにしてしまうと、次の「やる気」はいつ来るかわからないし、次の「やる気」の熱量は1回目より絶対に低くなるんです。事務仕事への苦手意識もなくはないですが、それよりも「今!」という気持ちで一気に片付けました。
そして事務仕事を片付けてから、教材研究に打ち込むために楽器店の楽譜売り場に通いました。

生徒募集の成果

即効性が高かったのは、やはりWEBサイトです。またポスティングは、チラシを手元にとっておいて時間が経ってから問い合わせをしてくださる方が多い印象です。
時期的には、4月は小学生の入会が、7月は未就学の方の入会が多く感じました。最終的に、現在(取材時2017年8月/週3日稼働)自宅教室開始10か月で22名の生徒さんを持つようになりました。
レッスン中は全力で子供と一緒に弾き・動き・歌い・汗だくになっていますので、それなりに大変ですが、毎回とても充実していて楽しいです。

レッスン開始当初、先輩から引き継いだ生徒さんに対し必要以上に『今まで先輩がやっていた通りにやらなければいけない』と思いこんでガチガチになってしまっていたことがありました。
教材は何を使っていましたか?どのくらいのペースで進めていましたか?......と根掘り葉掘り聞く私に、先輩からは『それは全部あなたがこれから生徒と一緒に作っていっていいんだよ』と言ってもらえて、気持ちが楽になり、自由にレッスンできるようになりました。

教室を始める前は色々なことが心配で心配でたまりませんでしたが、案ずるより産むがやすし!で思い切って始めてみて本当に良かったと思っています。

一人ひとりに寄り添い伸ばしていくことができる、それがこの仕事の魅力

自宅レッスンをスタートする前は、「自分はガミガミした先生になるんじゃないか」と漠然とした不安がありました(笑)。ですが、実際に始めてみたら、子供たちの小さな成長が本当に嬉しくて!!ピアノのことだけではなく、靴を揃えられるようになったとか字が書けるようになったとか......毎週毎週生徒に会うことが楽しみでしかたありません。

全員が同じ目的で音楽をやっているわけではないので、その子自身の成長を見つめ、一人ひとりに寄り添い伸ばしていくことができる、それがピアノ指導者という仕事の魅力だと思っています。
そして、自分のところに習いに来てもらっている以上、なにか一つでも生徒本人だけでなくご家族みんなに『ピアノを習っていて良かったな』と思ってほしい、そう思ってもらえるレッスンをしたいと思っています。

遠藤 史歩子 えんどう しほこ

東京音楽大学器楽科、同大学大学院器楽専攻鍵盤楽器研究領域(ピアノ)修了。ウイーン国際音楽ゼミナールにてディプロマ取得。中学校・高等学校教諭専修免許状(音楽)取得。ディヒラーコンクール2013(ウィーン)第3位、ほか入賞多数。 現在はソロ、伴奏、デュオ、室内楽など幅広く演奏活動を行い、文京区千石『ピアノ教室amabile』主宰の他、茨城県つくば市『アトリエ・ドゥ・ダルクローズ』にて後進の指導にあたる。

調査・研究へのご支援