ピティナ調査・研究

シンフォニア第7番

シンフォニア探求
シンフォニア第7番

はじめに

石井なをみ

ホ短調の物哀しい雰囲気を持ちつつも、全体的にまるで語るように歌うフレーズが特徴的な曲です。バッハの求めた人間の奥深い精神やこころを感じ、表現出来るといいですね。 3声がそれぞれ語り合いながら調和していることが鍵になるでしょう。

コラム

上田泰史

ニ短調の第4番に引き続き、短調の悲しげな情緒の曲ですが、そこに垣間見えるほのかな救いの光に注目してみましょう。まずは構成の把握からです。楽曲は大きく四部に分かれています。

第1部:第1~13小節
第2部:第14~24小節
第3部:第25~36小節
第4部(ストレッタとコーダ):第37~44小節

 では、主題の性格を見てみましょう。上声部の主題は冒頭、hからまで6度上行します。短六度上行するのはエクスクラマツィオでした(⇒第4番)。ここではその間にe-fisが挟まりますが、それでも訴えかけるような表出力の強い出だしです。主題の最高音はaで、短7度まで広がっています。第3小節でcisが現れることによってドミナントが強く感じられ、主題の区切りが示され中声部に主題が移ります。主題は、上声→中声→下声の順で出てくるので、天から地上に主題が下りてくるようです。この主題には第1~2小節の左手のh-e-d-cという対位句が付随しています。主題のアウトラインと同じくアーチ形を基本にしています。これらがこの楽曲の展開の基本素材です。

 第2部は、第1部といくつかの点で対照的です。まず、主題が中声部で提示され(第14~15小節)、続いて上声部(第16~17小節)へと移ります。そして、下声での主題提示はありません。第1部の上から下へ、という順序と逆になっており、その後、ニ長調に転じることもあり、悲しみの中に光が指す部分です。第1部と対象をなすもう一つの要素は、16分音符による下声部の新しい対位句です。よく見ると、第1部の対位句と同じ音程で作られるモチーフが二倍の音価になって展開されていることが分かります(第14小節のfis-h-a)。細かい音符で動き続けるリズムは、「生」の象徴でもあります。第20~23小節で、この生き生きとした対位句はゼクエンツを形づくりながらすべての声部に響き渡り、ニ長調へと推移します。

 第3部は、冒頭で訴えるような悲しみだった主題が、対位句とともに上行する音型(アナバシス)によって、ちょうど天に上っていくようです。第2部で下声部でうごめいていた対位句は、いまや上声部を舞い踊っています。最後の第4部は、主題が主調で戻ってきますが、全体の要約のようになっていて、最初の対位句と第2部の新しい対位句が組み合わされます。しかし、それは冒頭の悲しみの要約ではありません。最終小節は長三和音で終止し(ピカルディ終止)、最終的な救いが訪れます。 

シンフォニア第7番をよく理解するための「練習問題」

橋本彩

問題
譜例のあたりから何調に転調しているでしょう?
また、その調はこの曲の主調からみて《 下属調 ・ 属調 ・ 平行調 》です。

第9~11小節

印が付いているテーマは、何調で再現されていますか?
また、この調は主調の《 下属調 ・ 属調 ・ 同主調 》の平行調です。

第25、26小節

このように動機(モティーフ)が重なって出てくることを何というでしょう?

第37、38小節

印の部分のように、1つの声部が自由に歌う部分のことを何というでしょう?

第41、42小節

この終止は何というでしょう?

第43、44小節

答え
h moll、主調 e mollの属調です。
D dur (最初のテーマより長2度の音から始まる、durのテーマです) 主調 e mollの属調の平行調です。
ストレッタ (追拍、ストレットとも。「緊迫した」という意味で、まるで畳み掛けてくるように重なって出てきます)
カデンツァ (一般には、ソリストが自由に即興的に演奏する部分のことを言います)
ピカルディ終止 (Ⅴの和音から、同主調のⅠの和音に進行する終止形です。短調の曲の最後で使われるもので、明るい和音で終止します)
J.S. バッハ / シンフォニア第7番 和音譜

山中麻鈴

1.両手で全て和音にしたもの
2.右手は和音、左手は1番下の旋律をそのまま弾く
3.左手は和音、右手は1番上の旋律をそのまま弾く
  • 楽譜は一例です