【特集】音楽的感性を磨くためにできることは~アンケートより その4
【特集】音楽的感性を磨くためにできること
その4:林苑子先生インタビュー~音楽的感性を磨くために
まず、指導者自身が感性豊かな生活を送ることを心掛けましょう。そしてレッスンする曲をよく弾き込んでイメージをふくらませ、必ず生徒の前で弾いてあげられる準備をしておくことが大切です。先生の音と豊かな言葉が、生徒への一番の説得力を持つはずです。
曲に向き合う時も、明るい、悲しい、元気、 安心する…など、沢山の形容詞を引き出して情景を話し合います。大学生に「亜麻色の髪の乙女」は何歳だと思いますか?と質問しただけで、音色が変わったこともあります。
ご家庭でも、形容詞や副詞の表現を多く取り込み、豊かな言葉で会話していただくよう、お勧めされるのも効果的だと思います。ともすれば親御さんたちは、「よく出来た」「がんばって」などと、短い言葉で励ましがちではないでしょうか。普段から色々な言い回しの引き出しを増やしておくことが、子どもたちの基礎的な表現力の幅を広げることにつながります。子どもが成功した時にも、どうやったら成功したかを考えさせ、言葉にしてまとめておくと、次に役立ち、良い習慣が身に着くと思います。
楽譜は文章のようなもの。言葉と文章の関係は、楽譜の読み方に通じるものがあります。楽譜を読んでどれだけ想像力を働かせられるか、ということが大事なのです。ですから、本をよく読む子は、語彙力だけでなく、曲の構成やフレーズ感への反応も早いものです。
絵本も、少ない言葉と絵からどれだけ想像力を広げられるか、という点でとてもよいと思います。私は生徒さんから絵本を借りて感想を話し合ったこともあります。こちらの想定外の感じ方をしていることもありますが、それにも感心すると、距離が近づいたように感じました。想像力は創造力につながります。
また素晴らしいピアノを弾く生徒さんは、素晴らしい作文を書かれるように見受けられます。文章でも絵でも、表現欲ということで音楽と共通していることの表れでしょう。
美術鑑賞もよく取り上げられますね。これもどれだけ想像力を発揮するかが大切です。例えばルノワールの『ピアノを弾く少女たち』でしたら、彼女たちは何を弾いて、何を話しているのか?時間はいつ頃だと思うか?など、たくさんの会話が生まれると思います。4本のロウソクがつく燭台つきのアップライトピアノは、19世紀後半に裕福な家庭に広がり、ブルグミュラーなど子ども向けの曲集も出版され、ピアノは幸せな家庭の象徴だったかもしれません。立っているのがお姉さんで、妹に教えているようにも見えますね。彼女たちの服には多くの色彩があしらわれ、少し離れてみると布地の手触りまで伝わってくるようです。それが全体にどのような効果を与えているでしょうか。光の当たり方を描く印象派の絵画は、ドビュッシーが光や影、風や温度を音に表したのと通じます。そのように、世界史的な背景を交え、音楽には当時の人々の生活が表れることなど、一枚の絵画からも会話の糸口は尽きないはずです。
正しい音楽というものは存在しません。生徒さんには、表現には無限の可能性があることを知って、音楽に向き合ってほしいと思っています。デジタルな世の中だからこそ、人としての感性を広げ、美しく心に響く音楽を楽しみたいと思いませんか?
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