ピティナ調査・研究

第30回 家での復習、練習が苦手な生徒への指導方法 永瀬礼佳先生

指導者が答える お悩みQ&A
家での復習、練習が苦手な生徒への指導の仕方に悩んでいます。
永瀬礼佳先生にお答えいただきました。
ながせあやか◎永瀬音楽教室主宰。当協会正会員。

ピアノという習い事はスイミングなどと違い、家庭学習ありきで進んでいきます。それなのに、家庭での練習が苦手となると、なかなか曲が進まなくて指導者としては困ってしまいますよね。「練習してって毎週言ってるのに、全然練習してこないのは生徒のせい!」かもしれませんが、私は「練習してこないのは先生の責任」だと考えています。なぜならば、出来ないことや苦手なことには必ず原因があるからです。

楽譜の仕組みが分かると練習も楽に、楽しくなる

練習が苦手な生徒の大体は、「楽譜が読めない→弾けない→つまらない→練習が嫌になる→読んでいないからさらに楽譜が読めなくなる→…(以降繰り返し)」という場合が多いと思われます。そこで大切なのは、年齢の小さな時期にきちんと基礎的な能力を身に付けてあげるということです。

私の教室では、導入期にピアノを弾くのに必要なことを5つの分野(読譜、音感、リズム、楽典、テクニック)に分けて指導していきます。そうすることで入り口はとても簡単なことをやっていますが、気が付いたら色々なこと(書く、弾く、読む、聴く、歌う)がバランス良く身に付くようになります。そして趣味で習いたい生徒も、コンクールに出ている生徒も全員、ドがどこか分からない状態で入会してから約二年間で音楽大学の入試問題が解けるところまで楽典の知識を入れていきます。

楽譜の仕組みが理解できれば、どんどん弾けるようになるので、ピアノが楽しくなり練習も楽になってくると思います。

一音一音ではなく、「もよう」で楽譜を読む

いつも練習をしてこない子も、家でやってきたくなるような具体的な工夫の一つとして、私はレッスンの時に生徒と一緒に楽譜を細かく分解し、自分でも簡単に楽譜が読めるような方法を教えています。

例えば、「ちょうちょ」という曲は、ソミミ~ファレレ~と始まりますが、下記のように1つずつ音を読んで進めていくよりも、音程や「同じもよう(ゼクエンツ)」を先にノートなどに書いて教えてあげてから譜読みをすると、簡単にあっという間に弾けるようになります。つまり、

  1. ソを読んで弾いて
  2. ミを読んで弾いて
  3. もう一度ミを読んで弾く
  4. 次にファを読んで弾いて
  5. レを読んで弾いて
  6. もう一度レを読んで弾く

…と譜読みをするよりも、

  1. ソから3度下がって
  2. 同じ音(ミ)を二回弾く
  3. ファから同じもようで弾く

というように譜読みをしていくと、順番に1つずつ音を読んでいくことに比べて半分の労力で楽譜が読めます。このように楽典で教えた音程や、同じもようの作り方などを利用し、楽譜の簡単な読み方を教えていくことにより、簡単に楽譜が読めて弾けるようになるので、練習が苦になることはありません。

本番の機会を与えて目標に

また、練習のモチベーションを上げるもう一つの方法として、本番の機会を与えています。大人でも、今日は何も予定がなく一日中暇という日の過ごし方と、15時からレッスンがある日とでは、午前中の過ごし方が変わると思うのです。やはり目の前に何か目標を持たせると生徒もやる気になりますので、ピティナ・ピアノステップやピティナ・ピアノコンペティションなどを活用しています。

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