ピティナ調査・研究

第28回 気持ちを込めて演奏するために 宮谷理香先生

指導者が答える お悩みQ&A
気持ちを込めて演奏することが難しい生徒の、心の動かし方に悩んでいます。
宮谷理香先生にお答えいただきました。
みやたにりか◎ピアニスト。当協会正会員。第13回ショパン国際ピアノコンクール第5位入賞。桐朋学園芸術短期大学非常勤講師。
心の響き、熱量は必ず届くと信じる

「相手の心の奥は震えている」と信じて伝え続けることが大切です。私自身、いつもお客様や生徒さんを信じて、出会った瞬間に心を開くよう努めています。音あるいは言葉での語りかけに共感を持っていただければ幸せですし、心の響きは必ず届くはずと人間同士として「信じる」。いのちを燃やして表現していく、その熱を伝え続けるのです。熱量として相手に伝わった時、内容は忘れても感情の波や情熱はきっと記憶に刻まれます。

音楽以外の経験からコミュニケーションの引き出しを増やす

 音楽以外にヒントがあることもありますね。

 私には二学年違いの兄がおり、小さい頃は木登りや、探検ごっこなど、男の子に混じって半ズボンで駆け回っていました。やんちゃな一面が育ちました笑。たくさんの習い事=ピアノ、聴音、フルート、バレエ、絵、習字、塾などの課題を次々と計画的にこなし、多感な時期に多様な状況に身を置いた経験から、人とのコミュニケーションの引き出しを増やしてきたように思います。

日常生活で、心の感度を上げる「素」を探す

 生徒さんにも「嬉しい」「楽しい」「哀しい」「怒った」など、日常生活で心が動いたことを尋ねて、気持ちが動く「素」を一緒に探してみてはどうでしょうか。生徒さんが挙げられなければ、先生が心動かされた例・・・季節、食べ物、映画、絵、演奏会、スポーツ選手、ニュース等々の日常的な話から、能動で語りかけ続けます。その結果、心の感度を上げる「素」が見つかれば素敵ですし、相手の笑顔を引き出せたらそれも素晴らしい。たとえ音楽表現に結び付かなくとも、先生とのお話が楽しくて大好き!というレッスン時間になれば、生徒さんの人生の中で輝く一瞬となることと思います。

 人間の無限の想いを音に繋げていく、それこそが芸術であり音楽表現です。音楽を奏でる技術は、それらを具現化していく手段に過ぎません。巧みな指の動きではなく、上にお話したような人間力こそが、人に伝わり心を動かすパワーの源となると信じています。

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