【特集】ピアノ学習者の練習環境~生徒さんにとって良い楽器とは~
ピアノの先生方は生徒さんがご家庭でどんな楽器で練習されているかご存知でしょうか?
製造企業44社を対象にした全国楽器協会による2017年度の調査によれば、アコースティックピアノ(グランドおよびアップライト)の国内向け販売台数(出荷数)は13,080台、それに対して電子ピアノは200,600台と実に15倍以上です。
1週間のうち6日間触れるのはご家庭の楽器。ピアノ学習者が楽器を購入される際、また買い替えをされる際、ピアノを弾く喜び、表現することの楽しさを知っていただくためにピアノの先生としてどんなアドバイスやお手伝いをしてあげると良いのか一緒に考えてみたいと思います。
住環境や経済面などの条件と、機能や表現力など楽器になにを求めるかによって、アコースティックピアノにするか電子ピアノにするか、大きく分けて二つの選択があります。
ここでは、アコースティックピアノ、電子ピアノ、それぞれの魅力について簡単にまとめてみました。
- 音量、時間を気にせず弾ける
- 軽量で多様なデザイン
- 録音・メトロノーム・音色変更などの多機能
日進月歩、その性能も高まっている電子ピアノ。上位機種ともなると、連打性能も高く、ハーフペダルなど微細なニュアンスまでペダルでコントロールできるものも出ています。
- 細かなタッチの違いで音色が変幻自在に
- 弦の振動・共鳴を感じることで響きや音色を聴く力が身につく
- 一度購入すれば永く使える(楽しめる)
アコースティックピアノは主に木材・羊毛・金属でできており、時間の経過や環境の変化、そして調整によって刻々と変わる、まさに生の楽器です。その変化に合わせることが演奏を楽しむことでもあり、音楽で最も大切な『対話』を感じることができます。
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最初は電子ピアノしか持っていなかった生徒もレッスンを重ねるうちに、要求されることが電子ピアノでは表現できないと気づき、ピアノを購入されるようです。(中略)アコースティックピアノならではの表現の面白さを知ると、電子ピアノでは物足りなくなってしまうようですね。
音と音のつながり、立体的な音響を考えながら演奏すること、消えるような繊細な音にも良い響きを持たせることなどはやはりアコースティックピアノでないと難しいと思いますね。(中略)
一度その楽しさに触れれば病み付きになると思います。 -
どの作曲家の作品も、それぞれの曲に合った様々なタッチが必要になりますが、アップライトピアノだと'こう表現したい'と思っても楽器がなかなか反応してくれません。グランドピアノだと響きに対する意識がぐんと高まり、自分で'音をつくる'ようになりますね。
- 『キーボード・電子ピアノ・アップライトピアノ・グランドピアノ...各楽器ごとの特徴』はこちら
あなたにぴったりのピアノさがし
電子ピアノとどう付き合っていくべきか、現代のピアノレッスンにおいて多くの指導者の皆様が直面する問題だと思います。
当協会では、電子ピアノをテーマとしたイベントを多数開催してきましたが、その一部を「ピティナ・eラーニング」にて公開中です。生徒さんに電子ピアノの相談をされて焦らないために、知識をアップデートしておきましょう。
生徒さんは「いつ・どこで・どんな」楽器を選ばれ購入されているのでしょうか?
ご家庭の楽器はピアノ学習者の上達・成長を左右する大きな要素です。できれば購入される前に一言、先生にご相談されることをお勧めします。お教室の会則に「楽器を購入される前に必ずご相談ください」と記載されている先生もいらっしゃるようです。
- Q1.お値段の違いって何ですか?
- 楽器の価格は"表現力"と正比例といってもよいでしょう。
アコースティックピアノの場合は材料、設計、製造工程、サイズ、デザインなどによって、電子ピアノの場合は同時発音数、音源のサンプリング方法、鍵盤の材質やセンサーの精度、スピーカーのワット数などによって価格も表現力も変わってきます。 - Q2.電子ピアノって寿命があるのですか?買い替え時っていつ?
- 電気製品としての寿命は平均的に10年少々といわれます。
しかし、教具=楽器としての寿命・限界が先に来ることがほとんどです。例えば、タッチとペダルで音色のコントロールが必要になれば...テキストに表情記号や曲想を示す楽語が出てきたら...2声以上の弾き分けが必要な楽曲になれば、今、使っている電子ピアノではうまく表現できない...とピアノ学習者自らが感じる時期が訪れるのではと思います。
ぜひ楽器のステップアップも勧められてはいかがでしょうか。
生徒さんの普段の頑張りや可能性を一番よくご存じなのはピアノの先生でしょう。 ぜひ、生徒さんと一緒に楽器店へ出掛けて、生徒さんの家庭環境や目標に最適な楽器選びをお手伝いいただきたいと思います。先生と一緒に選ばれた楽器ならきっと上達され長続きするでしょう!
インターネットで様々な情報が錯綜する現代、「百聞は一見にしかず」です。お店に展示してある様々な機種を弾き比べてみることをお勧めします。
ピアノの専門知識を有する楽器店販売員、ピアノの構造や経年変化を熟知する調律師からのアドバイスなどが得られるとさらに心強いですね。
- ピアノ学習者のレッスンライフをサポートしてくださる楽器店のスタッフもいらっしゃいます
【参考記事】地域の音楽教育を支えるエリアミュージックサポーター - 意外と知っているようで知らないピアノの中身!先生がピアノの中身を勉強するためのこのような企画もあります
【参考記事】あらためて...「ピアノの調律」を知る!
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①弾きやすさ(タッチ感)
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②ダイナミクスレンジ(強弱の幅)
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③音色、音質、楽器全体の響き
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④タッチによる音色の変化
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⑤デザイン
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①椅子に座って、いつも演奏する姿勢で弾きましょう
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②低音から高音まで全音域を鳴らしてみましょう
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③単音だけでなく両手や和音を用いて、できればペダルも使って楽器全体の響きを確認しましょう
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④今、生徒さんが弾いている曲も弾いてあげましょう(ご家庭に置いて練習するイメージがわきやすい)
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⑤聴くときは、近くからと少し離れたところからと両方で確認
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⑥できるだけ静かな環境で弾き比べ(聴き比べ)をしましょう
- BGMや雑踏などでにぎやかな家電量販店では本来の音色が判別しにくい場合も...
ピアノ学習者にとって『良い楽器』とは、使用環境やお好みによっても異なります。あらゆる選択肢や条件の中で、最終的にどの楽器を選ぶかはピアノ学習者とそのご家族です。正しい情報の提供、適切なアドバイスを心がけていただき、一人ひとりの音楽性を育み上達・継続につながる楽器を一緒に選んでいただきたいです。