第27回 本番で緊張する生徒への声がけ&対策 菅原望先生
私自身、どんなコンクールやコンサートに出演させていただく時も、思わず吐いてしまいそうなほど緊張します。
まず第一に必要なのは、その緊張をどうにかしようと思わず、緊張している自分を受け入れることです。
本番では、これから弾く曲のテクニック的な要素ではなく、これまでの練習やレッスンで積み上げてきた音楽について考えることが大切だと思います。大抵は「間違えたくない」、「うまく弾きたい」という思いが緊張に変化するので、そうではなく、「この曲をこう弾きたい」、「自分の演奏はこうだ!」と思うべきだと考えています。
そしてそれは、その日だけの問題ではなく、やはりその日までの音楽の組み立て、思い、そういったものを事細かく曲に盛り込み向き合っておくと、本番も音楽に没頭できるのだと、最近になって気付いてきました。
また、緊張すると身体や音楽も前のめりになりがちです。いつも練習の時から身体の状態を意識し、指に腕の重みがのることを感じ、鍵盤と身体の間の空間をよく感じて、ピアノのボディ全体で音を鳴らす意識を持つとよいと思います。
本番の呼吸も、浅くならないように意識することも大切です。
本番前の生徒さんへのお声がけは、生徒さん十人十色でどこに正解があるか、そもそも正解自体があるかもわかりませんが、緊張するということはそれだけ真剣だということであり、それはとても良いことだと受け止めてあげることが、まずは大事かなと思います。
私自身、練習でできたことを本番でできなかった場合に、それが本来の自分と思われることが悔しい、といつも思っていました。ですから、生徒さんには最後のレッスンの際には、次のようなことを伝えたいと思っています。
── うまくいけばそれが一番だとは思うけれど、本番がどんな演奏になったとしても、私はあなたがこれだけ弾けること、とても魅力的な演奏ができることを知っているから、本番は何も恐れずに弾いてきてほしい。
私自身、ものすごい失敗を重ねてきたこと、それでもピアノを続けて、しかもそれで生きていっていること、だから今失敗したって何も問題ないよ。 ──
そういったことを伝えようと思っています。
最後は笑顔です。聴く人は皆さん決して敵なんかではありませんから、お辞儀の時は笑顔を向けて、それが苦手な方は心の中で笑顔を作りましょう。笑いながら緊張をすることはむしろ難しいので、身体の力も抜けるはずです。
緊張への向き合い方は、音楽人生における課題の一つでもあります。それをなくすことではなく、どう向き合っていくかを、生徒さんと一緒に考えていただければと思います。
ご参考になれば嬉しいです。
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