第26回 「優しく、弱く」と言うと音が抜けてしまう時は 金子恵先生
内緒話をするイメージで
ピアノは鍵盤を下に押すという行為で音を出す楽器ですが、音楽的に音を出そうと思うと実に繊細な打鍵が必要となる楽器でもあります。小さなお子さんや手の成長段階でまだ筋肉ができていない人にとって、その微妙な打鍵をコントロールするのはとても難しいことでしょう。
ある程度、音量が必要な音は楽に出せますが、「優しく」「弱く」というイメージは、そっと撫でるような感覚で鍵盤を触るので音が抜けてしまうのかもしれませんね。
内緒話をするときのことをイメージしてみましょう。ひそやかな声で相手に聞こえるように喋るには、声が弱くても言葉の発音を意識的にはっきり言わないと相手に聞こえません。それと同じように弱い音は発音がはっきりしていないと、そっと触るだけでは音は抜けてしまいます。生徒さんに説明する時に、声に例えてみてはいかがでしょうか。
弱い音でも発音をはっきりさせるには
では、弱い音でも発音をはっきりさせるにはどうしたら良いでしょうか。
鍵盤を下に押すという行為は、ただ単に音が出ただけの状態です。音楽的に音を出すためには発音が大切ですから、まず音を言葉として捉えましょう。
私たちが言葉を話すとき口の筋肉を動かすのと同じで、ピアノの音は指を意識して動かすことが大切です。指の付け根を意識できているかどうかを、先生に確認していただきたいと思います。5本の指がそれぞれ独立して動くようにしておかないと16分音符などの速いパッセージが弱音できれいに弾くことはできません。
指の付け根を意識するウォーミングアップを
私自身、生徒たちに実践している練習があります。
5本の指を全部白鍵に置き、下まで打鍵します。その時ちょうど野球のボールを持っているような手の形にして、手首も楽にして支えます。この時、指の付け根で手の平を支えるような感覚で、決してギュッと力を入れすぎないでください。
指を下まで押している状態で1本の指のみ離鍵、打鍵を繰り返します。例えば、右手の場合、ド、レ、ミ、ファ、ソの音に12345の指を当てて、レミファソは2345の指で押さえておいて1の指だけド、ド、ド、と一音一音を出して反復するというものです。10回程練習したら今度は2の指でレ、レ、レ、とやります。次は3の指、4の指、5の指、というようにして、指の付け根を意識する運動をウォーミングアップでするのも良いでしょう。是非、先生と生徒さんが一緒に練習することをお勧めします。そして意識できた指で、優しく弱く弾く場所を引き続き弾いてみましょう。
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