第25回 指先が弱い生徒への指導法 渡部由記子先生
素敵な音は素敵な形から
まず、「なぜ指の形が大事か」ということを、生徒さんや保護者の方に理解していただくことが大切です。
ピアノは指先に体重を乗せて弾く楽器なので、「指先がふにゃふにゃ」ということは、ふにゃふにゃのバチで太鼓をたたくようなものです。一生懸命にたたいても、いい音は鳴らないですよね。素敵な音は素敵な形からしか出てきません。
「小さな子に指の形が...と言うとピアノが嫌いになってしまうのでは」と心配される方が多いのですが、一度ついてしまった悪い癖は、直すのにその3倍の時間がかかると言われます。ですから、怖がらずに初めからちゃんとやることが大事です。
指先の問題は、指先だけをよくしても仕方ありません。まずは、しっかりと指先に体重が乗せられる姿勢を身に着けることです。
①身体にあった足台(事典など厚い本で調整も可能)
②椅子の高さ(腕が床に平行よりほんのちょっとへの字型)
③ピアノと椅子の距離(肘はピアノと体の間。脇と体の間はこぶし1個分。)
④座り方(少し前に膝を少し開いて座り、親指の付け根に体重を乗せる。上体は床に垂直。肩は脱力。)
いい音が出る指の形は、指の全ての関節が出ていて、指先と鍵盤の角度が45度になるように置いた状態です。次のような方法で形を作ってみます。
- 軽くグーを握って、そうっと指先を広げてみる
- 自分の手より少し大きめのボールを握ってみる
- お水を飲むように指先を集めた形にして逆さにする
これをまずはテーブルの上でやってみます。できたらピアノの鍵盤の蓋の上、次に鍵盤の上で音を出さずに乗せるだけ、そして3の指だけをそーっと押してみると、pppくらいのかすかな音が出ます。それから、形が崩れない程度に、ほんのちょっとずつ重みを足していきます。例えば料理用のはかりで、1g、2g...と増やしていき、5gで指先がへこむなら4gに戻す...などと、本当に少しずつです。
最初は3の指からスタートします。3の指が一番コントロールが効きやすく、また3の指の根元の山がしっかりとできれば、他の指の根元も崩れにくいからです。それから、2→4→5→1の指と、1本ずつ丁寧に指導していきます。
どうしても関節がへこんでしまう場合は、関節の裏側に逆の手の指を置いて補助したり、いい形でテーピングして音を出してみる、などをして、いい形を覚えることもあります。
既にピアノを始めている方を直す場合は、一曲で一音ずつ選んで直すようにしています。全部一度に直して進もうとするから、「できない、できない」で挫折してしまうのです。
これはとても根気のいることで、半年単位で上達を考えなければなりません。焦らず、ほんの少しでもよくなったことをオーバーに褒めていただいて、自信をつけさせてあげてください。
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