ピティナ調査・研究

第21回 受験があってもピアノを続けてもらうには 中嶋宏美先生

指導者が答える お悩みQ&A
熱心に学んでいた生徒さんが、受験をきっかけにぱったりピアノをやめてしまうことがあり、悲しいです。受験があってもピアノを続けてもらうには、どのように指導したらよいでしょうか。
中嶋 宏美先生にお答えいただきました。
なかじま ひろみ◎ピティナ大阪なな色ステーション代表。

受験とピアノの両立は、指導者にとっても生徒さん自身にとっても大きな課題ですよね。
受験は避けられないものですから、小6や中3など節目の年までにある程度弾けるようにしておき、ピアノの楽しさを知っておいてもらうことが一番大事です。
始めた時期や進度によっても異なるので一概には言えませんが、ある程度弾ける子の場合、中学受験までに下記のレベルに到達させることを目標にして、私は指導しています。

  • チェルニー30番 終了
  • ソナチネアルバム 半分くらいまで終了
  • モーツァルトやハイドンなどの比較的簡単な
    ソナタや、ショパンの若い頃の小品(ワルツ
    など)が苦労なく弾ける

受験が終わってピアノを再開するときに、練習にストレスを感じないよう、きちんとした読譜力とテクニックをつけておくことが重要です。また、上記のような曲が弾ければ、保護者の方にも、ここでやめるのはもったいないと思っていただけます。

中学生になると、進度の個人差も大きくなり、生徒さんごとに目標も違ってくるので、具体的に曲目を挙げるのは難しいです。私の場合は、かなり弾ける生徒さんだと高校受験までにショパンのエチュードやバラード等が弾けることを目標にしています。

実際に受験が近づいてきたら、選曲を工夫することが重要です。ショパンの幻想即興曲や子犬のワルツなど、聴きなじみのある有名な曲や生徒さんが憧れる曲を渡すと、楽しんで練習してくれますよ。かなり進んでいる子には、ショパンのスケルツォやバラードなどの大きな曲を渡して少しずつ譜読みしてもらい、受験後に仕上げさせています。逆に進度がゆっくりな生徒さんの場合には、受験の息抜きとして、ポピュラーの好きな曲を渡してレッスンするとよいでしょう。ピアノを弾くことに対して満足感をもってもらえれば、一時的にやめたとしてもまた戻ってきてくれると思います。

また、受験後の状況を想定したフォローも大切です。新しい環境で忙しく過ごす中で、少しピアノの進度をゆっくりにしたいと思う生徒さんも出てきます。その時に、今まで熱心に学んでいた子ほど、以前ほど頑張れないことに対して罪悪感をもち、レッスンを続けるべきか悩んでしまうことがあります。それを防ぐために、「うちの教室ではゆっくりマイペースに学んでもいいんだよ」というメッセージを発して、安心感を与えることも重要です。

ご参考にしていただけますと幸いです。

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