第19回 手のフォームを改善するトレーニング方法 糸数ひとみ先生
小学生、特に低学年の生徒さんですとまだ体の発達が十分でないことも多く、よい姿勢で弾くのが難しいですよね。
私が考えるトレーニングの例を、3つご紹介させていただきます。
① 脱力した状態を知る
まずは、肩と肘が楽になっている状態を体感させます。
生徒さんに両腕を前に出してもらい、それを指導者が両手で支えます。そして、「眠っているつもりになってね」と声をかけ、腕を軽く上へ放りあげ落ちてきたところを受け止めます。
初めは緊張からか、生徒さんが自分の力で途中で止めてしまい、なかなか腕が「落ち切る」状態になりません。しかし、何度も繰り返したり、立場を反対にしたりすることで、腕の重みと完全脱力とを実感させることができます。
② 脱力した状態で、実際に音を出してみる
①で脱力を体感させることができたら、今度はピアノに向かって、実際に音を出させてみましょう。
第1段階として、両手の3の指で単音を同時に弾きます。その際、短すぎないけれどもスタッカートで、「タァン」という音のイメージをもって弾くよう指導してください。最初に打鍵するときは指先で腕の重みを支えることを意識して、手を鍵盤から離すときには手首を少し上げつつ、ピアノの蓋側に音を送り出すイメージです。なお、肩と肘に余計な力が入っていないことと、手首が下がっていないことを常に確認するようにしてください。
単音でうまくできたら、今度は1と5の指を使って2音にして、同様のトレーニングを行います。2音でもうまくできたら1, 3, 5の指で3和音にしてみるなど、音数を増やしていきましょう。
③壁たて支え体操
もう1つ、手のフォームをしっかりさせるための「壁たて支え体操」もおすすめです。第1関節や第3関節(指の付け根)がつぶれてしまう生徒さんには、特に有効です。
まずは、壁に向かって1メートルぐらいの位置に立たせます。そして両手を壁に向かって伸ばし、お椀をイメージした手のフォームを作って少しずつ壁に体重をかけさせます。このとき指導者は、第1・第3関節がつぶれていないかみると同時に、手首が壁に触っていないことも確認しましょう。
このトレーニングを、
- 前傾(壁に向かって体重がかかった状態)
- 元に戻す
- 脱力確認(立ったまま腕をぶらんぶらんと振って肩から力を抜き、まるでこんにゃくのように各関節を緩める)
という流れで繰り返します。何度も行ううちに、腕の重さを支えることのできる手が作られ、手首が下がってしまう癖も治っていくでしょう。
ご参考としていただけましたら幸いです。
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