ピティナ調査・研究

第15回 プレリーディングを苦手とする生徒への指導法 石黒加須美先生

指導者が答える お悩みQ&A
プレリーディングを苦手とする幼少期の生徒にはどのように指導するとよいでしょうか。
石黒 加須美先生にお答えいただきました。
いしぐろ・かすみ◎ピティナ一宮ステーション代表、ステップ課題曲選定委員、組織委員、当協会評議員。

幼少期ということで3歳~5歳くらいのお子さんを想定してお答えいたします。

まず、プレリーディングとは、読譜のための準備ですね。
読譜の準備には何が必要でしょうか?
たいていの子どもが必要とする順に列挙してみました。

  1. 左右の手の把握
  2. 拍と休符の把握
  3. 指番号の把握
  4. 音名の把握
  5. 音列の把握
  6. 音価の把握
  7. 拍子の把握
  8. 鍵盤の把握
  9. 大譜表上での音符の把握
  10. 音符とリズム符の合体の把握
  11. ブラインドタッチ(鍵盤を見なくても、音の位置がわかる)
  12. テンポにあわせて大譜表上の音符を目が追っていける力
  13. ブレスをし、終止を感じ、フレーズを表現する力
  14. 音程の把握
  15. 音型をパターンとしてみる力
  16. それらを聴きとる耳

プレリーディングが苦手ということは、指導者の教える順番が間違っているか、あるいはどれかをうまく習得できていないのでしょう。

上に挙げたどの項目でも、具体的にどこでつまずいて習得できないのかを指導者が把握し、対処することが重要です。今回は、特につまずく子どもが多い「拍と休符の把握」について、詳しく解説します。

☆拍と休符の把握

拍や休符の感覚がつかめないのはなぜでしょうか。
つまずくポイントとして多いのは、拍を刻めないこと、休符を感じられないこと、そして、強拍と弱拍を認識できないことです。

〇拍を刻むことができない場合

小さい子にとっては、音楽を聴いてただその拍を刻むのも難しいことです。
しかし、音楽に合わせて歩くことなら簡単にできるので、まずはピアノに合わせて歩かせてみましょう。
それができたら、手拍子でリズムを取らせます。
こちらも問題なく行えるようであれば、もう、拍を刻むことができます。最後に3の指を使って、片手だけで拍を刻ませてみましょう。うまくできるようになっているはずです。

人間がリズムを取るとき、体全体で、あるいは体の大きな部分を使って取るのは易しいのですが、小さい部分で取るのは難しいものです。このことを意識して指導するとよいでしょう。

〇休符を感じることができない場合

ただ拍が刻めるだけでは、リズム感があるとはいえません。
音楽における拍は均等ではなく、強拍と弱拍があります。
強拍と弱拍を意識して生きたリズム感を育むには、休符の感覚を身につけさせることが重要です。

休符を把握できるようにするには、どう指導したらよいのでしょうか。
まずは、曲に合わせて生徒さんに歩いてもらいましょう。次に、歩みは止めずに、休符のところで手をたたかせます。
たとえば、4分の4拍子の曲で、1拍目から3拍目までが4分音符、4拍目が4分休符のときは、4拍目で手をたたきます。
それができたら、今度は逆に音の鳴っている部分で手をたたき、休符のときには手をたたかないようにします。先ほどの例ですと、1拍目から3拍目までで手をたたきます。
なおこのときも、休符の拍で歩みを止めないようにします。

このエクササイズによって、休符の意識、また、休符があっても音楽は流れ続けているという感覚を養うことができます。この感覚が、強拍と弱拍の意識につながっていきます。

〇強拍と弱拍の意識が乏しい場合

生きたリズムを感じるには、強拍と弱拍、とくに弱拍を意識することが必要です。
弱拍の意識を育むには、次のような練習を行います。
まずは、ピアノに合わせて強拍で手をたたきます。
次に、その準備の拍のところ(たとえば、4分の3拍子なら3拍目)で手を上に持ってくるようにして、強拍(この場合、次の小節の1拍目)で手をたたきます。
この練習をすることで、準備の弱拍から強拍へ、という感覚を身につけることができます。
また、手をたたく方法以外にも、準備の拍(弱拍)のところで背伸びをし、強拍で戻る、という運動もよいでしょう。
最終的に、弱拍から拍子を判断できる子に育てるのが理想です。

今回は、拍と休符の把握を例に、つまずきやすいポイントと指導法を詳しくお伝えしました。ご参考にしていただければ幸いです。
読譜はピアノを弾く上で重要な力ですので、確実に身につけさせることができるよう、指導法を工夫していきましょう。

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