ピティナ調査・研究

096.思想芸術家になろう、技術芸術家ではなく

100のレッスンポイント

前にも書いた言葉ですが、これは2000年元旦に文化勲章受賞されたある彫刻家の言葉です。

彫刻も、いくらテクニックがあったとしても「もう一度会いに行きたい」とは思わない作品もあるそうです。
心を打つ、心に残る作品は、その人の想いが感じられるものであるのでしょう。彫刻は絵のように簡単には運べません。ヨーロッパの小さな教会に佇む「その彫刻」に再び「会いたい」と思うと、そこに足を運ばなくてはなりません。

音楽のように瞬間芸術ではないので、ずっと残り、作家がなくなってもその作品や精神は残ります。以前はそのことを羨ましいと思っていましたが、実際には、鑑賞する人はその作品には二度と会わない事が多いので、同じことかも知れません。

出会った時に心に残り、生涯心に浮かんでくるものになるには、ただ技術的に優れているだけではなく、人の心をつかむ何かがないといけないようです。まさにそれが、芸術作品と言えるのでしょう。

ピアノの演奏も心に深く残り忘れられないものがあります。プロの演奏でもそう度々遭遇しないですが、生徒の演奏でも「あの時のあの子のあの曲」という中に、忘れられないものがあります。そこには心があるのだと思います。心を伝えるための「技術」でなくてはならないと思います。ただ早く強く弾けることを強いて、音符を写すだけのような演奏にならないようにしたいものです。

楽譜から作曲家からのメッセージを読み取った上に、それを理解したからこそ生まれてくる想いを音にする!
技と共に、心も精神も磨いていって欲しいです。

エピソード
~これまでに出会った芸術に対するメモノートより~

メモ1
いい音、ひびく音を探して!音はピアノの中に生きている。
海のなかで真珠を探すように、ピアノの中から探す!
自分で考えて、しっかり深く弾き響かす
(1998/10/31ゼルクマン先生、ロシアにて)

メモ2
芸術とは、決して科学の上にあるものではなく、心と自然の中に生まれる。
(1998/12/29 中村晋也先生、インド、アジャンタ石窟院を見て)

メモ3
先人の努力に学ぶ。
アジャンタ、エローラ(7世代に渡り堀つづけ彫刻した石窟群)を思いだし、努力をおこたるな! 彼らの偉業に比べると努力とは言えないレベルだから。
苦しければ石窟を思いだそう。
(1998/12/29 池川)

メモ4
ある作品を見て偉大な芸術家が話した。その作家が創っている過程の心をズバズバ想像してはなす。
見た瞬間、これだけのことが悟れる感性の鋭さ、ものを見抜く目、考える頭、言葉にできる力。脱帽。
あるものを見て聴いて、見抜く、聴き抜く、感じ抜く心を見抜ける心を磨きたい。(1999/3/9 池川)

メモ5
人に、言葉が伝わる作品を創れ!(2001/1/10 中村晋也)
何が言いたいのか、言葉でなくその人がいなくても、死んでも、いなくても、人に何かしゃべっている作品を残そう!(池川)

メモ6
自分の言葉を「かたち」
におきかえて言葉以上にものが言える彫刻をつくれ(中村晋也)

自分の言葉を「音」におきかえて、
言葉以上にものが言えるピアノを弾こう(池川)

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