ピティナ調査・研究

040.休符は最大の表現

100のレッスンポイント

モーツァルトは「音楽の最高の効果は、流れる音の間に現れる無音の状態にある」と言ったそうです。

先日のピティナ・ピアノフェスティバルで、私の尊敬する土田英介先生が「ハイドンの曲を生かすのは休符だ」とおっしゃっていました。

音のない空間。

それは、場面が変わるところだったり、ほっとしてお休みが入るとき、次を驚かすための間、あるいは息つぎの為のものだったり、リズムを生かすためのものだったり、、、

曲の最後に休符がある場合が多いですが、聴く側は余韻に浸っているのに、演奏者がさっさと立ち上がったりすると、興ざめしてしまいます。

作曲者は、考えて必要だから空白を作っているはずです。
ですが、弾くことばかりに注意が働く傾向にあるピアノという楽器では、特に小さい子は「その音をどこまで保つか」ということに対して意識が薄いことが多いようです。
休符という音のない空間、「間」が曲の表情に大きく関係すると思います。

良く音を聴いて心の中で歌えている人は、休符がうまく取れています。聴く人の心の中の流れと一致して心地好く、音楽的です。
逆に、弾き急いでしまう演奏は、たいてい休符のところがより短く焦ってきこえます。

16分休符が沢山入っていている楽譜は書くのもめんどくさそうですが、わざわざそのように書いてある場合などは特に「意識的に空間を入れて生き生きと!」という意図を感じます。バッハの曲であらわれる突然の中断は、死や罪をあらわす、などとも言われています。

生き生きと弾いてほしいときや、意味を持ってほしいところなど、休符にイロイロな可能性を感じとって、演奏に活かして欲しいと思います。良い演奏家は無言の空間を巧みに、効果的に使っています。

エピソード

ショパンコンクールinアジアで、日本に居ながらアジア各地の子供達の演奏を聴く機会があり、びっくりしたことがあります。

休符のたび(フレーズの合間でも)に顔を変えるのです。
すごく暗い顔になったら、それ以上に暗い感じの音がでて、ニコッとした次の瞬間に出てくるのは、天使が出てきたかと思うような美しい音。休符が絶妙に生かされていました。
すごい形相の変化に思わず苦笑しながらも、その表現力にぞっとした思い出です。

顔はともかく、次の展開を想像したくなるような「間」の存在が、表現力アップにつながる大切な要素だと思います。