ピティナ調査・研究

035.夢の世界、理想の世界でよい

100のレッスンポイント

 楽譜に書かれている音楽を音にするということは、平面を立体にするくらい、異なるものに変えることです。

 一つ一つの音を今、現実に空中に生み出していく。
 音は空中に生まれては消えていきますが、人の心の奥に伝わり、消えないこともあります。

 何百年か前に生まれた楽譜が、時を経て受けつがれ、今、音になる。その事自体にロマンを感じませんか?
 当時の作曲家は、どんな考えでこれを書いたのか?
 昔の人と楽譜を通して会話をしているようです。

 音とリズムとハーモニー、更に楽語などのメッセージによって、より作曲者の意図を知る事が出来ますが、それ以上の細かい指示は楽譜には書けません。あとは演奏者の考えを加え表現してくださいと言うことでしょう。「こうでしょうか?」と尋ねるわけにもいきません。そして、音楽を伝えるのは、今生きている人から人へです。

 空中の振動によって、リアルタイムに、何が伝わるでしょうか?

 その人の心が伝わる気がします。
 ステキな音楽を表現する時、夢の世界の中に入っていくような気がしませんか?
 自分の音を聴きながら、楽しくなったり悲しくなったり、「きれい!」とにんまりしたり。
 夜寝る時、心の中で、今気に入っている曲が鳴り続けることがあります。心の中では自由です。いくらでも表現は膨らみ、音は冴えて(想像の中では)、限りなく美しい理想がそこにはあります。

 指導者も演奏者も、この理想の世界と、現実のギャップを埋めるために、何をすべきかを考え実行していけば、理想に近づいていくと思うのですが。「こう弾きたい」という理想がないことには、間違いなく弾けたことで満足することになりがちで、残念です。

 夢の世界で、天使たちが歌っているような清らかな音、考えさせるような不吉な和音。
 忍び寄る影、「何が起こるかな」という期待!!
 想像の中で、いくらでも、理想のレベルは上げられます。届いたと思ったら更に理想は高くなり、また追いかける。
 その過程が楽しいと感じると、幸せな練習が出来ますね。

 理想は絶対に下げす、美しさの限界も決めたくないですね。
「まだもっと」と理想を掲げ続けることにより、よりすばらしく人を感動させる演奏ができるのだと思います。

エピソード

今、まさにコンペシーズン。
 理想は高く、生徒をそこに引っ張り上げようと悪戦苦闘中。
 表現を含めて、すごく美しい音に出会ったらどうなると思う?と生徒に聞くと

「鳥肌が立つ!」なるほど!
 「感動する!」そのとおり!

 もう一つ、私が思っていること・・それは? 
 宿題にしました。皆さんもお考えください。