ピティナ調査・研究

028.ピアノはオーケストラ、いろいろな音を出そう!

100のレッスンポイント

 ピアノは「楽器の王様」と言われます。10本の指で、同時に違った音を出せます。メロディーと伴奏を一人で演奏できます。

 ピアニストは「一人オーケストラ」です。

 指揮者にあたるのは自分の脳と、心でしょうか?そこから指示を各指に出しています。指揮者なしに勝手に指だけが動いている状態にならないよう、心ある演奏をしたいものです。

 オーケストラにはいろいろな楽器があります。ピアノとそれらの音はまるで違いますが、1曲の中で、色々な楽器の音のイメージで弾く事は可能です。

 ベースの音は、チェロの音のイメージ。とても哀愁のある歌うメロディーはオーボエの音の感じ。やさしいフルートの音色、など。

 これまでの連載でも、色々な想像をしてそのイメージから音を創ろうとお伝えしてきました。
 触感をヒントにやわらかい/硬い感じ、冷たい/暖かい感じ。
 色や見た目をヒントに心を打つ赤。あるいは涼しそうなブルー、キラキラした感じ。
 感情をヒントとして、元気な感じ、寂しい感じ。
 でも楽器の音は「これは○○の音」と言えますからより具体的です。イメージするにはわかりやすいかもしれません。

 オーケストラでは何台もの弦楽器が伴奏のパートを担当しても、やさしい音がします。その上にオーボエのメロディーをくっきりと鳴らすことができます。あるいは管楽器総出で迫力ある和音を鳴らしたり、オーケストラ全員でスケールの大きい音響を創ることができます。そのようなことが一人でできたらすばらしいですね。それができる可能性があるのがピアノです。

 多くの作曲家がすばらしいオーケストラの作品を書いています。ピアノ曲にも「オーケストラで響きを考えて作曲したのでは」と思う事は良くあると思います。
 楽器それぞれの音色の特徴や、たくさんの楽器が合わさったスケールの大きな音楽を想像して、ピアノの音色を多彩にし、シンフォニーのようなスケールで曲が弾けると良いですね!

エピソード

その1 
以前、生徒がモーツァルトの9番コンチェルトを2000席の大ホールでオーケストラと共演した時、低音部のピアノの音が、ホルンの音そのものに聴こえた事があります。「本当に錯覚かしら?ピアノの音が?」と感動したことを覚えています。

エピソード

その2 
私の生徒(高校生)がある大先生のレッスンを受けた時のこと、先生が「この部分はオーボエの音色で!」とおっしゃいました。私もたまたま同じ指摘をしていたところだったので、心の中でとても喜んでいたところ、その先生はふと、「あなた、オーボエの音色知ってる?」と付け加えました。なんと驚くかな、その彼女は「知りません」と答えたのです。
 私がレッスンで同じ事を言ったとき、確かにうなずいていたはずなのに?何故??
 彼女は、私に言われたときは、「フーン?オーボエの音色ね?」とわからないまま生返事をしていたのでしょうか。
 オーケストラ演奏を聴いたことはあっても、「オーボエの音」をはっきり認識してはいなかったと言うことでしょうか?意外にピアノを習っていても、他の楽器を聴く機会はないのかもしれませんね。
 そのとき、耳の経験を積むため、他の楽器の音を聞かせるために、生徒を音楽会に行かせなくては!と意を決しました。