ピティナ調査・研究

027.いつも広い空間に音を飛ばすつもりで

100のレッスンポイント

 良い音を創り、人の心に届かせるには、空中に音を飛ばすような感覚で弾かなくてはなりません。
 それには、出した音の行方を聴く事が大事です。
 この100のポイントの一番で述べたように、その出した音が、自分の耳にも帰ってきて、美しいと持った時、良い気持ち(リラックス状態)になり、また、次の音を楽に気持ちよく出すという良い循環になるのです。

 私の教室では、コンクールの時期にホールでリハーサルをします。800人が入るホールで、コンサートグランドピアノを弾くのですから、当然良い音が出るはずです。が、、、うまく響かせている人と、こもったような音を出す人とがいます。ホールの反響板のおかげで、一定の響きはあるのですが、いつもよりは響きがあることに満足してしまい、うわべだけしか弾かないで、結局、こもった音や、薄っぺらな音になってしまうことがあります。
でも、そのことに気づけば、やはり随分成長します。ホールでの経験はとても貴重で、自らの音を改めて良く聴くことができます。また同じピアノでの他の人の音を聴き「ステキだなあ」とあこがれる機会になります。

 普段の練習でも、大きなホールの一番後ろの席の人まで、音を届かせるつもりで練習して欲しいと思います。ピアノは自ら響こうとしています。それをうまく使って、思い切り音を出す練習をしてみましょう。大きな音が出ることに躊躇してはいけません、楽に大きな響きが出ることをうれしく感じると良いと思います(「試してみよう」をご参照下さい)。

 自宅で練習する時、狭い部屋の中で思いきり弾けないこともあるかもしれません。音の跳ね返りが強くて耳に心地よくないので、ついつい、ほどほどのタッチで弾いてしまうとか。床がフローリングだと、さらにきつい音が跳ね返ってくることもあります。ちょっと弾いただけで、よく「響いている」つもりになりがちです。そのような人が実際ホールで弾くと、魅力のない音だったりします。 練習室に絨毯を敷く、カーテンを使う、壁に布のタペストリーをかけるなどすると、聴こえてくる音はまったく違ってきます。長い時間自分の音を聴き続けても疲れない、心地よい空間をつくることも、良い音を創るために、気にすべきことかもしれません。
ホールでの経験はとても大事ですが、普段の練習でも常に、自分の音がどのように空間に広がって行っているかに興味を持ち、遠くまで、「想いを伝えられる音」を出すつもりで弾きたいものです。

試してみよう

ダンパーペダルを踏んだまま、ピアノの低い方の音を、腕も使って思い切り何度も弾いてみます。どんどん響きが足されて「良く鳴る」状態を体感すると良いと思います。低音は、1本の弦は長くて、たくさん空気を振動させます。しかもペダルを踏んでいるということはダンパーを上げて開放弦にしてありますから、どの弦も全て振動し、音が重なっていくわけです。ピアノの木枠も、とても響くようになっています。「こんなに鳴るんだ!」と驚くかもしれませんが、怖がらず、何度もたっぷり鳴らすと良いです。そのうち快感になります!