ピティナ調査・研究

026.響きと脱力

100のレッスンポイント

「響く」という言葉を広辞苑で調べてみました。

1、音が広がって聞こえて行く。鳴りわたる。
2、余韻が長く続く。
3、音が反射して伝わる。反響する。
4、振動が伝わる。
5、印象深く伝わる。
などが音楽と関係ある意味でした。

ピアノを弾く時は常に「響く音を出そう」と意識したいものです。

小さい子にピアノの音の「響き」を理解させるためには、以前にも述べましたように、(右の)ペダルを踏み、ダンパーが利かせずに鳴らした音を聴かせるのが、わかりやすいと思います。ペダルを踏むと、一つの音を出すだけで打鍵していない弦もすべて振動させることになります。

ペダルを踏まない状態でも、踏んだときと同じように、音が響きわたるようにしたいです。そのためには響きを聴くことです。出した音がどのように空気中に残っているでしょうか?音の行く末をどこまでも追うことが大事です。

「響き」を聴くことに慣れるためには、初めのうち、長い音の伸びを聴くことからはじめると良いと思います。また、和音のほうがよりわかりやすいです。
和音をしっかりと打鍵し(弦をより振動させ)それが広がっていくイメージを持ちましょう。腕が硬くなったまま、打鍵後に何もしない場合は、減衰するに任せるような音になって、伸びがありません。そこで、弾いたあと、指先に重みを乗せたまま腕の力を抜き、響きを聴いてみましょう。音が伸びるように感じられるのではありませんか?
「空中に音の振動が伝わっていく」ことを実感しましょう。ピアノの場合、音を出してしまった後に、鍵盤をいくらがんばって押さえても、出た音自体は変えられません。腕の力は抜いたほうが楽です。そして、響かせることができます。😃

 音を弾いたあと、腕などをよく動かしている人がいます。必要以上に動かす事には注意したいですが、硬く力みがある人は、脱力をするため、腕を自由に動かせるように意識して、そのやり方で「響き」が増すかどうかを確かめてみるとよいかもしれません。

バスティン・メソッドでは初めに音の響きを聴かせます。グーモーション(握りこぶしの形)で鍵盤を弾き、手首のほうからゆっくり上げていく練習をします。手首や、腕の力が入らないようにする「脱力」と、音を聴く習慣を身につけるのに、とても有効です。その練習に際しても、オーバーな肘の動きにならないように気をつけると良いと思います。

長い音で、響くことに注意を払えるようになったら、どんな時でも、脱力や音の鳴り方、伸び方に注意を払えることを目指しましょう。良い音は出ているでしょうか?良い音にあこがれ、より良い音を目指して欲しいです。

特に p の音は、気が抜けたように出てしまうことが多いです。
小さな音ほど、可憐な美しい音を出せれば、聴く人を「ハッ」とさせます。
鳥肌が立つような美しい音は、「 pp 」の部分で多く経験する気がします。
そのような音を出すには、手の付け根の部分をぎゅっと締めるような感じにし、支えをしっかり作って、指先に神経を払い出してみることです。
そうやって美しい音を出す経験を積み重ねていき、自然に耳や心が要求するようになれば、ステキな音が心にも響くようになります!

試してみよう

音が空気の振動によって伝わることを実感するために、太鼓をたたいてみましょう。思い切ってバチを太鼓の中央にあて、良い音を響かせたいですね。
 無意識に、裏側から太鼓の表面に触ってしまっている子がいますが、それだと太鼓の振動を妨げているので、音はうまく出ません。太鼓の表面は振動しやすい状態にしておく事が必要です。
 打ったバチをそのまま離さず、表面に当てたままの子もいます。その場合も、バチが表面の振動を抑えつけるので、音は飛びません。
ピアノで、鍵盤を押さえ込んでいる状態(押し付けられたような音が出る)に似ていると思います。ピアノは構造上、弾いた瞬間に弦からハンマーが離れ、弦が振動するようにできています。タイコをよく響かせるコツを知ると、ピアノでもうまく音が出せるようになる気がします。
 クリアーな、響きのある音を出すためには、指先の緊張も必要です。その練習として、小さな箱をたたいてみるという方法もあります。この時も、箱のふた側を持ってしまわず、側面を持ちます。最も響くのは、打った瞬間に指を離したときです。ポーンといい音が出ます。同じようにピアノを弾く場合はスタッカートになります。
箱をたたいたあと指を離さず、そのまま指を押し付ける場合や、同じく表面から指は離さないけれども、腕などから脱力する(力を抜く)場合も試して、音が違う事を確認してみるとよいでしょう。(ティッシュの箱などでお試しください)

エピソード

音が響くことをイメージさせ、よく聴かせるために、納豆の糸にたとえた事があります。 納豆を混ぜると弾力のある糸が出ますね。ピアノの音が伸びるように、指先をぷつっと離してしまわず、糸を引いているように慎重に、音を響かせます。
イメージがあるとその気になるものです。一時期、私の教室では「指先に納豆がくっついているような音」がはやりました。