こどものためのJAPANピアノ作品集9-1: 湯山昭作曲 『お菓子の世界』 特集1
今回ご紹介する作品集は、湯山昭先生作曲『お菓子の世界』(全音楽譜出版社刊)です。1973年に作曲されて以来、日本のピアノ作品集の中では他に類を見ないほどの大人気ロングセラーとなったこの楽譜!日本のピアノ教育界を代表する作品集と言えましょう。発表会などで取り上げられる先生方も多く、子どもから大人まで熱烈なファンも多いこの作品集。ただ、26曲全曲を取り上げる機会はなかなか少ないのではないでしょうか。今日は、この作品集をより楽しく有意義にお使いいただくために、いくつかヒントをお伝えしたいと思います!
『お菓子の世界』は、1971年にNHKの「ピアノのおけいこ」という番組のために最初の曲「お菓子のベルト・コンベヤー」が作曲され、翌々年1973年に全音楽譜出版社の委嘱によって続く25曲が作曲されました。以前、湯山先生にインタビューさせていただいた折にも、その楽しい作曲経緯をお話しいただいています(→インタビュー記事へ!)。湯山先生の代表的な作品集には、他にも手の小さいこどものためにオクターヴ奏法を使わずに書かれた『こどもの国』等がございますが、この『お菓子の世界』は、音域に制限を設けずに、大人も子どもも弾いて楽しめ聴いて楽しめる曲集として書かれました。「ピアノという楽器を思いっきり歌わせお喋りさせたい」と、先生ご自身もこの曲集への想いを楽譜の前書きにて語られています!
『お菓子の世界』には、様々なスタイルの曲がバラエティ豊かにおりこまれています。「柿の種」や「甘納豆」といった、 題名からも推測できるような和風の曲から、「チョコ・バー」や「チューインガム」といったジャズ風の曲まで、その顔ぶれはとても豊かです。まずはその曲調を、以下一覧表にてご覧ください。
顔ぶれが多彩な分、曲の難易度も各々です。以下、先ほどの曲調、また調性や演奏時間と一緒に、各曲の難易度を一覧にしてみました。難易度は、リズムやハーモニーの難しさ、 調号や転調等から、A(バイエル後半以上)、B(ブルグミュラー以上)、C(ソナチネ以上)の3段階としています。ただ難易度がAであっても子ども向きとは限らず、大人でもその魅力を存分に楽しめる作品ばかりです。 なお終曲は演奏時間も長く、全曲の総集編としての役割を果たしていることから、例外的に難易度Dとしました。
この曲集の曲順について、「ステージで演奏しても効果があがるように、まえの響きをうけて次の曲に続く」という音楽的な工夫がされていることが、楽譜の前書きからも伺えます。26曲全曲を演奏すると約1時間かかるこの曲集ですが、序曲「お菓子のベルト・コンベヤー」を経て、3つの間奏曲を交えつつ色々なお菓子が登場し、終曲「お菓子の行進曲」に至って、これまでのお菓子がカーテンコールのように全て登場するという魅力的な構成は、ステージプログラムとしても存分にお楽しみいただけるものでしょう!例えば、発表会で分担して(終曲は先生でしょうか...)全曲を演奏する、あるいはこども向けのコンサートで全曲演奏するなど、その使い方はアイディア次第ですね。
来月10月8日の「ピティナ公開録音コンサート」では、コンサートとしては至上初めてという全曲演奏に、私・須藤英子がチャレンジさせていただきます!当日は、作曲者・湯山昭先生もご来場され、一言アドヴァイスをいただける予定!ぜひご参加いただき、お楽しみいただければ幸いです(ご来場ご予約はコチラまで)!