こどものためのJAPAN7-2:田中カレン作曲 『地球』 中級編
ハーモニーの感じ方には、その人その人の感性がよく現れますね。それまでの長三和音が短三和音になったとして、物悲しさを感じる人もいれば、厳しさを感じる人もいます。ただ、何も感じないというのはもったいないですね。例えば一つ一つの臨時記号を大切に捉えることで、楽譜に書き込まれている様々な表情記号の意味も、深く理解できるようになることでしょう。難しい和声分析はできなくても、楽譜上の細やかな音の変化からハーモニーの移ろいを感知できるよう、レッスンでは促していきたいものです。
以下、中級編の作品を、音源動画とともに1曲ずつご紹介させていただきます。まずは、第2番「グリーン」と第9番「大地」。両曲とも和音をふんだんに用いた作品で、地に根を張る自然の美しさが感じられます。図らずも、放射能の影響に鬱々とした日々を送る昨今・・・。私自身はこの2曲を弾きながら、震災前の日本の土壌の豊かさや、それをいつか取り戻す日のことに、ついつい想いを巡らせてしまいます。
「やさしい」風に緑がそよいでいるような、さわやかな作品。何気ないハーモニーの変化は、風向きの変化でしょうか・・・。中間部の裏ノリのリズムが、ポップでチャーミングです。
「美しい大地と豊かな収穫を思いながら」と冒頭に記された、実に優しく暖かい作品。左手にメロディーが移る中間部は、歌い方がどうしてもぎこちなくなりがちなので、要注意です。豊かな長調の中に時々現れる短三和音が、時に物悲しく、時にどこか懐かしく感じられます。
次にご紹介するのは、第6番「オゾン」と第10番「生命の水」です。地球を覆う清らかな気体や、生命の源となる柔らかな液体・・・。どちらも分散和音をメインとした作品で、その繊細な移ろいから、自然の神秘が感じられます。ミクロあるいはマクロ的な、ちょっと超越したイメージを持って弾きたい作品です。
思わず天空をイメージしたくなるような、田中さんらしいクリスタルな作品。和音は一つも出てきませんが、ハーモニーの中で各音を捉えると、なめらかに流れます。 左手が歌う中間部は、強弱記号と相俟って、非常に美しく感動的です。
細かい音符や手の交差がふんだんに使われる、テクニック的にかなり難しい作品。さらにそれらを、「柔らかに」、また「軽やかに」音にするには、まさに「水」をイメージすることが重要でしょう。速い音符を、分散和音的にハーモニーとして捉えることも、「柔らか」さや「軽やか」さにつながります。
最終回の次回は、いよいよ上級編6曲をご紹介予定です。どうぞお楽しみに!!