ピティナ調査・研究

こどものためのJAPAN7-1:田中カレン作曲 『地球』 初級編

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ピアノ曲 MADE IN JAPAN

前回ご紹介させていただいた田中カレンさん作曲『地球』。今日は初級編(「★」=バイエル後半&「★+」=バイエル終了ぐらい)の5曲を、音源とともに1曲ずつご紹介させていただきます!

一筆書きのような・・・

以前、田中さんにインタビューさせていただいた際、こどものための作品の作曲について、「湧き出たものを書き取るといった、一筆書きのような楽しい作業」というお話を伺いました。今回ご紹介する初級編の作品にも、一筆書きのようにシンプルで、かつ研ぎ澄まされた美しさが感じられます。とても自然なのに、心にジワリと沁みこむメロディー、そしてそこに光を当て、影を象るハーモニー。作曲というのは、やっぱりカミワザなのだ、と改めて感じずにはいられません!

表
目指せ、センス・アップ!

そんな素敵な作品を素敵に弾くには、演奏者にももちろん高いセンスが求められます。ただ、それがなかなか難しい・・・。幸い田中さんの楽譜には、スラーや強弱、速度などが、細やかに書き込まれています。まずはそれらを丁寧に弾き込むことで、センス・アップをはかりたいものです。加えて、同じように見えるメロディーでもハーモニーの変化に合わせて歌わせ方を変化させたり、臨時記号がついた音に少し陰影を加えたりしていけると、より生きた演奏につながりますね。

各曲ご紹介:「ジョージ」編

以下、音源動画とともに1曲ずつご紹介させていただきます。まずは、この曲集の縦軸となる「ひとりぼっちのゾウガメ ジョージ」にまつわる3曲、第4番「ジョージのつぶやき」、第8番「ジョージの歌」、そして第12番「ジョージの夢」です。田中さんご自身が前書きにも書かれているとおり、ゾウガメのジョージは、ガラパゴス諸島に現存する地球上で最後の一頭のゾウガメです。人間による乱獲等によって絶滅の危機に追い込まれたそのジョージの心が、3曲の物語となって綴られています。

第4番 ひとりぼっちのゾウガメ ジョージのつぶやき
演奏:須藤 英子

「ゆっくり優しく」、胸の内をつぶやくジョージ。
臨時記号による転調ごとに、つぶやきにも気持ちが入ります。短い中にも、たくさんのメッセージが込められているような曲です。

第8番 ひとりぼっちのゾウガメ ジョージの歌
演奏:須藤 英子

「のびやかに、自由に」歌うジョージ。大きく8小節フレーズでとらえ、その中で強弱記号を表現すると、歌いやすくなる気がします。おおらかさの裏側に、深い悲哀を感じるような曲です。

第12番 ひとりぼっちのゾウガメ ジョージの夢
演奏:須藤 英子

冒頭、4/4拍子と3/4拍子が交互に登場し、一見難しく見えますが、大丈夫、左手は「ドソレラ」の繰り返しです!この美しいオルゴール場面の後にくるジョージの夢物語が、なんと明るく楽しいことでしょう。まさに夢のような、儚く幸せな曲です。

各曲ご紹介:「エネルギー」編

次にご紹介するのは、「エネルギー」にまつわる2曲、第3番「太陽エネルギー」と第11番「バイオエネルギー」です。この曲集には、他にも上級レベルの第7番「風力エネルギー」が収められていますが、各々ソーラーパネルや微生物、また立ち並ぶ風車等が思い浮かびますね。どの曲からも、刻々とエネルギーが生み出されていく様子とともに、太陽やバイオ、風そのものの力が感じられる気がします。なおこの2曲は、先の「ジョージ」編よりはやや難しいテクニックが必要となっています(16分音符のアルペジオや音階、また左手のメロディーを歌わせるなど)

第3番 太陽エネルギー
演奏:須藤 英子

「明るく楽しい」前半&後半と、雄大な中間部。朝日や夕日など、太陽の様々な姿が思い浮かぶような曲です。途中の16分音符は、強弱を丁寧に表現できると美しく聞こえるでしょう。

第11番 バイオエネルギー
演奏:須藤 英子

冒頭、6/8拍子の伴奏型の上で、3/4拍子的なメロディーを歌わせるのが、難しくもあり楽しくもあります。途中、右手が16分音符で動き出す部分は、練習曲のようにならないよう、イメージを膨らませましょう。淡々とした営みの中に、静かで強い生物の鼓動を感じる、まさに「生き生きとした」曲です。

次回は、中級編4曲をご紹介予定です。どうぞお楽しみに!!

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