ピティナ調査・研究

第33回 ディヴェルティメント ヘ長調「先生と生徒」Hob.XVIIa:1

ハイドンの世界

この曲はハイドンが作曲した唯一の四手連弾作品で、1楽章は7つの変奏曲つきのソナタとなっており、先生が先に旋律を弾き、生徒がその後を真似して追いかけるような作風になっています。2楽章はハイドンらしさにあふれたとても愛らしいメヌエットです。今回は入江一雄さんに先生パートを弾いていただきました。ソロとはまた違った楽しさのある作品ですので、ぜひ弾いてお楽しみください。

Divertimento 'Il maestro e lo scolare' F-Dur Hob.XVIIa:1
第1楽章
第2楽章
共演:入江 一雄(いりえ かずお)
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、東京藝術大学・同大学院修士課程を首席で卒業・修了。在学中にアリアドネ・ムジカ賞、アカンサス音楽賞、安宅賞、同声会賞、三菱地所賞、第1回大賀典雄賞、大学院アカンサス音楽賞、クロイツァー賞各賞受賞。07年、明治安田クオリティオブライフ文化財団音楽奨学生。08年、ロシアン・ピアノスクールin東京ガラ・コンサートに出演。第77回日本音楽コンクールピアノ部門第1位。併せて野村賞、井口賞、河合賞、岩谷賞(聴衆賞)受賞。埼玉県和光市より表彰を受ける。09年、ベルリンで開催される「YONUG EURO CLASSIC」にて、東京藝大シンフォニーオーケストラにソリストとして参加し、細川俊夫作曲「沈黙の海」を協演。10年、日本ショパン協会主催「ショパン・フェスティバル2010in表参道」のランチタイムコンサートに出演。11年、河合楽器主催「東日本大震災復興支援 チャリティーコンサート」に出演。藝大フィル、日本フィル、東京フィル、セントラル愛知等のオーケストラとの共演や、ピアノトリオを主とした室内楽にも力を注いでいる。これまでにピアノを栗原ひろみ、國谷尊之、故・竹島悠紀子、ガブリエル・タッキーノ、植田克己の各氏に、室内楽を岡山潔、山本裕康、松本和将の各氏に師事。
ハイドンひとことメモ
「ハイドンの妻」

ハイドンが1760年28歳の時に結婚した、3歳年上のマリア・アンナ・アロイジア・ケラー(1729~1800)はウィーンでかつら屋を営んでいたヨハン・ペーター・ケラーの娘で、音楽には興味がなく嫉妬深い性格だったそうで、音楽史に名を残す悪妻のひとりと言われています。

自分の夫が芸術家であることに全く無関心だったため、ハイドンの自筆譜を紙切れ同様に扱い、包装紙代わりや野菜包みに使ったというエピソードや、浪費家であった彼女の借金の返済にハイドンが奔走していたという話も伝えられています。

そもそもなぜマリアと結婚することになったのでしょうか、これには理由があるのです。もともとハイドンはマリアの妹テレーゼに恋心を寄せていたのですが、残念ながらテレーゼは修道院に入ってしまい、結婚に至らす落胆していたハイドンを見ていた彼女の父親から、ハイドンより3歳上の姉、マリアをおしつけられるような形で結婚してしまったのです。

結局、生涯を通してハイドンとマリアは上手くいかず、16年間の結婚生活で子供も出来なかった上に、互いに愛人が存在し、ハイドンは43歳の時に歌手のルイジア(19歳)に愛情を抱くようになり、それ以降ハイドンとマリアは別居することになったのですが、結局マリアが71歳で亡くなるまで別れず、亡くなった後も再婚しなかったとのことです。

ユーモアのセンスがあるハイドンですから、もしマリアについて本でも書いていたらとても面白かったのでは、と想像しているのですが、何と曲では残しているのです。題名はずばり「悪妻」。彼女の死後作曲したとのことですが、曲で残すとは...さすが大音楽家ハイドン!

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