ピティナ調査・研究

第23回 ソナタ第56番 Hob.XVI/42 ニ長調

ハイドンの世界
SONATA No.56 Hob.XVI/42 Andante con espressione-Vivace assai

あたたかい木漏れ日があたりを照らしているような雰囲気をもつ名曲です。ハイドンが好んで使ったニ長調の美しさが曲全体を包み込んでいます。2楽章形式のこの曲は、他の曲とは少し変わった形式をもち、第1楽章は複合3部形式と変奏曲が合わさったものです。テーマが変奏される過程は聴いても弾いても息をのむほど美しく、私はハイドンの変奏曲つきソナタの中で、この曲は特に大好きです。2楽章も、愛らしいメロディーが鮮やかに、けれどさりげなく変化していくハイドンらしい気まぐれな雰囲気をもち、最後は慎ましやかに終わります。

ハイドンひとことメモ
「第23回 ハイドンの弦楽四重奏曲 ─弦楽四重奏曲について─」
ハイドンは「弦楽四重奏曲の父」と言われています。たくさんの素晴らしい弦楽四重奏を作曲したばかりでなく、弦楽四重奏というジャンルを切り拓いていった功績者として認識されています。ハイドンに影響されたモーツァルトは、後にハイドンに献呈した「ハイドン・セット」という弦楽四重奏を作曲し、その後ベートーヴェンシューベルトなど、様々な作曲家が作曲したことによってこのジャンルは重要なものとして確立されました。はじめは83曲とみなされていたハイドンの弦楽四重奏曲ですが、後に偽作などが含まれていることが発覚し、現在は全68曲とされています。多くが6曲か3曲でまとめて作曲されており、現在も演奏される機会が多い曲もたくさんあります。次回から、この魅力溢れるハイドンの弦楽四重奏について詳しく書いていきたいと思います。