第7回 アレグレット Hob.III/41 ト長調
有名なハイドンの弦楽四重奏「ロシア弦楽四重奏曲」Op.33より、第5番の第4楽章をピアノ用に編曲したものです。この第5番は私自身ハイドンの弦楽四重奏曲の中でも特に好きで、第1楽章冒頭のフレーズから広がる幸福なメロディーを聴くと、幸せな気持ちになります。Allegrettoからはじまるのどかなフレーズを変奏した後、ピアノ編曲では中間部が少し省略され、最後はPrestoで弦楽器がのびのびと、自由に弓を走らせます。
「ハイドンの伝記」
ハイドンの伝記は、アントン・グラッシィという、彫塑家でウィーン皇室および王室の陶磁器工場のモデル・マイスターを務めていた人が直接ハイドンから聞いた情報を集め、アルベルト・クリストフ・ディースが本としてまとめています。ハイドンは、「自分の生涯の話など誰にも興味は起こさせないだろう」と言い、自分の手で報告書を書かず、また有識者が書くのも許さなかったそうですが、アントン・グラッシィはハイドンという記念すべき人物が、伝記のための資料を残さないまま死んでしまうことを遺憾に思い、幾度かハイドンを説得したところ、最後にはハイドンも快く了解したようで、これが伝記として伝わっています。アントン・グラッシィが初めて訪問した頃のハイドンは、身体は弱り、声はしわがれ、記憶力は沮喪していて、口が重くなっていましたが、アントン・グラッシィは何回も同じ質問を繰り返し、辛抱強く尋ねる事を続けた結果、信頼の置ける色々な出来事を記入した日誌のようなものを作り上げる事が出来ました。その伝記には、ハイドンの性格や行動、さらに容貌や生活習慣まで細かく書かれていてとても興味深いので、次回からこの伝記に書かれているハイドンについて、書いていきたいと思います。