ピティナ調査・研究

第4回 ソナタ 第47番 ロ短調 Hob.XVI:32

ハイドンの世界
SONATA No.47 Hob.XVI/32 h: Allegro moderato-Menuet-Finale

ハイドンのソナタの中でも、よく弾かれる名曲です。ロ短調の、あたたかくもあり、厳しくもある雰囲気の中で、初めの音から最後の音まで曲を一貫してhの音にこだわりをみせています。冒頭の、何かを予感させるようなモチーフが1楽章を支配し、ロ長調の2楽章のメヌエットは、あたたかい光があたりを照らしているような美しいフレーズが響きます。3楽章の冒頭にはハイドンがよく使った連打の音型が多用されています。まるで心臓の音のようで、曲全体に緊張感が走っています。私がこの曲に出合ったのは14歳の時で、長い間この曲と向かいあってきましたが、弾くたびに違う感動を与えてくれます。昔も今も変わらずこの曲を心から大切にしています。

第1楽章
第2楽章
第3楽章
ハイドンひとことメモ
「ハイドンの兄弟」
ハイドンの両親、マティアスとマリアの間には12人の子どもが生まれ、ハイドンは2番目に生まれました。18世紀当時は子どもを育てる環境が整っていなかったため、子どもが生まれても次々と死んでしまい、ハイドン一家も12人のうち6人死に、姉とハイドン、弟と妹が2人ずつ生き残りました。この中で、音楽家として活躍したのは、弟のミヒャエルとエヴァンゲリスト、そしてヨゼフ・ハイドンの3人で、特にミヒャエルはモーツァルトと親交が深く、たくさんの曲を残しました。46歳で母マリアが他界した後は召使いだった19歳の女性が後妻となり、さらに5人の子どもを生みました。