ピティナ調査・研究

【楽曲紹介】1821年生まれの作曲家たち 

生誕二百年を迎える音楽家群像
【資料】生誕200年を迎える音楽家群像~その作品

金澤氏による「総説」と併行して1820年代生まれの作曲家(その多くはピアニスト・コンポーザーたち)作品をほんの一部ご紹介します。音源が日本国内初演となることはもちろん、言及されること自体が「100年以上ぶり」となる作曲家や作品も含まれています。
それらが忘れられた理由は有名作曲家の作品より「劣る」からでしょうか。ぜひ耳にして確かめてみてください。複雑な情緒を湛えた曲から重厚で古典的な作品まで、様々です。少なくとも「捨てがたい」個性を観ることはできるはずです。(ピティナ・調査研究事業部)

※2021年4月9日 リスベルクとヴォルフの作品を公開

(1)Charles Bovy Lysberg (1821-1873) シャルル・ボヴィ・リスベルク
   LE RÉVEIL DES OISEAUX, Idylle Op.39 鳥たちの目覚め――イディール (1853)

夜明けの木立ちの中の鳥の囀りを描く。明るく快活な表情の中に漂う重量感のない、どこか儚い印象はリスベルクの持ち味である。左手のバルカロール風のリズムに乗って、右手が高音域で煌めきを撒き散らすさまは、師・ショパンの「ベルスーズ」Op.57を範としたものだろう。主題が繰り返される度に、和音の変化、分散のあるなし、前打音やアクセント等、細密なヴァリアントが施される。暗譜を著しく困難なものとするこうした特性は’20年代世代に多く見られ、演奏家を敬遠させる大きな要因と考えられる。(2021.4.3) 金澤 攝
<収録日 2021.3.31>

(2)Auguste Wolff (1821-1887) オーギュスト・ヴォルフ
4 MÉLODIES Op.12 4つのメロディ (1850)

No 1 Andantino
No 2 Andantino
No 3 RÊVERIE Andantino
No 4 Animato ma non troppo vivo
敢えて「無言歌集」(Romances sans paroles)としないところに作曲者のこだわりが見て取れる。続く「3つのメロディ」Op.14と共に、洗練されたセンスとモダニズムが髄所に光っている。あくまで私の憶測だが、アルカンの「歌集」(第1.2集) Op.38 (1857)は、これらの作品から直接的にインスパイアされた可能性が高い。シャブリエ以降のフランス音楽を予言するかのようである。(2021.4.3) 金澤 攝
<収録日 2021.3.31>