ピティナ調査・研究

Vol.2 小林萌花さん(アイドル)

Enjoy! Piano ピアノで拡がる、豊かなミライ
Vol.2 小林萌花さん
ハロー!プロジェクト所属「BEYOOOOONDS」メンバー

2018年 「ハロー!プロジェクト"ONLY YOU"オーディション」に合格し、BEYOOOOONDSのメンバーとしてアイドルの道を歩み始めた小林萌花さんは、現役の音大生。ピティナのコンペティションにも参加経験のあるピアノの腕前を活かして活躍する小林さんに、「ピアノを弾くアイドル」としての想いをインタビューしました。

ピティナのコンペティションで「できた」というフィーリングをつかむ

アイドルのオーディションとしては珍しく、応募者の特技・一芸に注目した「ハロー!プロジェクト"ONLY YOU"オーディション」に、ピアノを特技として応募、合格されましたが、もともとピアノとの出会いは、どのようなものでしたか?

5歳の時、友人のピアノの発表会に連れて行ってもらい、「私もやってみたい!」と母に頼んだのがきっかけでした。始めた当初は、習い事の一つという感じだったのですが、やっていくうちに「コンクールに出てみたい」と思うようになり、ピティナのコンペティションを目指して、小学生の頃から本格的にピアノをがんばり始めました。

最初のコンクールの思い出は?

小さい頃は「ちょっと弾ける方かも」と思っていたのが、コンクールに向けて準備するにつれ、「自分ってまだ全然弾けないんだなぁ」と実感しました。自分がいるフロアが上がっていくごとに、どんどん自分が小さく感じるのと同じ感覚です。最初のコンクールは成績が悪くて、とても悔しかったのと同時に、コンクールは厳しい世界なんだと痛感しました。その後、一年に一度ピティナのコンペティションを受けるという習慣が何年か続きました。小4くらいの時に、初めて先生も私も「これなら予選突破できるかも!」と思えた瞬間があり、その時、これが「できた」というフィーリングなんだ、とつかめた気がします。今思えば、小さいながらにがんばっていたなと思います。

ピアノが嫌になってしまう時はありましたか?

結構いっぱいありました(笑)。どうしても、考え過ぎてしまうクセがあって。でも、年齢を重ねて音楽について深く知るようになると、「おもしろいな」と感じる瞬間が増えてきて、もっと続けていきたいと思いました。

高校3年で決意した、アイドルと音大生との両立

音楽高校に入学し、高校3年生の時に、「ハロー!プロジェクト」のオーディションを受けるという転機が訪れましたね。

「一緒に音楽をやる仲間がいる」という環境に惹かれて、音楽高校を受験しました。高校一年生の頃、音楽の知識や興味が一気に広がり、アンサンブルやソロでの演奏への気持ちが高まりました。しかし、1,2年過ごすうちに、将来の仕事のことを考えるようになり、プロのピアニストとしてやっていくには、音高の中でもすごい才能が必要だということを実感してきて、「自分の進む道は違うんじゃないか」と思うようになりました。

そんな時、「ハロー!プロジェクト」と出会いました。当初はアーティストとして興味があったのですが、ちょうど特技を持った人を募集する内容のオーディションを開催しているのを知り、「私にはピアノがある」と応募を考えるようになりました。「あんな風にやってみたい」という好奇心と、これまでがんばってきたピアノを活かして人生の行き詰まりを打開できるかもしれない、という想いで、応募を決意しました。ハロプロは歌もダンスもレベルが高い中、私はどちらも経験がなかったので、普通の募集だったら受けられていなかったと思います。

2019年BEYOOOOONDSのライブにて

オーディションに合格されてから、さらに音大に進まれ、音大生とアイドルの両立生活となりましたが、どのように時間を使っていますか?

両立すると言っても、どうしてもどちらかに偏ってしまうのは仕方のないことだと思っています。むしろ、仕事に集中しなければならない時期か、学業に集中しなければならない時期かを、7:3くらいの割合で偏らせながら、比重を変えてやっています。

ピアノから学んだ、「どんなに難しいことでも、やればできる!」という実感

テクニック以外で、ピアノを学んできて身についたことは何ですか?

「本番に向けて準備をする」ということ、そして「やればできる」という実感を持っているということですね。始めは「絶対こんなの弾けない!」と思うような難しい曲でも、いざ譜読みをして練習をしていくと、結果的に弾けるようになった、ということを何度も経験してきたので、どんなに難しいことでも、角度を変えて練習し挑戦すればできるようになるんだ、ということを学んだ気がします。ハロプロのダンスも、ダンス未経験の自分にとっては難しいな、できないかな、と思っても、「どうやったらできるようになるのだろう?」「どこが違うのだろう?」と、色々な見方から練習方法を考えてやれば、きっとできるようになる、と信じることができるんです。そうした自信はピアノから学んだのかな、と最近特に思います。

2020年バースデーイベントにて
「すごい」ではなく「聴いてよかった」「音楽の楽しみを共有できた」瞬間が一番嬉しい

「ハロー!プロジェクト」では、ピアノを活かしてどのような活動をされていますか?

楽曲の中でピアノ演奏を担当させていただいたり、楽曲制作にピアノで参加させていただいたりもしています。ハロプロでは色々なジャンルの楽曲を扱うので、クラシックのリズム感とは違う、特有のグルーヴ感やハネ感もあり、難しいけれど楽しいです。

これから、こんな風になっていきたい、という目標は?

ハロプロが好きな皆さんは音楽がすごく好きだと思うので、クラシックについても、聴くだけではない面白さのようなものを、演奏以外でも伝えていけたらなと思っています。実は演奏するのと同じくらい、音楽の知識を学ぶことも好きなので、コロナ禍にメンバーで始めたYouTube配信『お家でもびよんず学校』では、西洋音楽史や理論をものすごく簡単にして解説したり、バースデーイベントでピアノを弾かせていただく時も、その曲の構成や注目ポイントを話してから演奏するなど、クラシックを詳しく知らない人でも楽しんでもらえる工夫をしてみています。

ハロプロの活動の中では、「自分がピアノを背負っていなきゃいけない」、「ピアノをやってきた人間として堂々としていなきゃいけない」という一面もあるのですが、一方で、大学生となってまだまだ勉強し足りないことを実感して、もっと勉強しなきゃいけないな、という思うことがたくさんあります。なので、まだまだピアノには謙虚に向き合っていきたいな、という気持ちです。

ピアノを身につけて、一番よかったと思うのはどんな時ですか?

ハロプロで活動しようと思ったきっかけには、「誰かに喜んで欲しい」という想いが一番にあって、自分のピアノがどのレベルであっても、「何かを伝えたい」という想いで始めました。楽曲内やイベントでピアノを演奏する時も、「すごい」ではなくて、「聴いてよかった」「一緒に音楽の楽しみを共有できた」という時が、一番嬉しい瞬間です。

ピアノ弾きのアイドルの手

泊まりのコンサートなどでできない日以外は、必ずハノンなどをさらって指を動かすようにしています。

お気に入りの1曲

(2021/7/13東音ホールにて)

◆ プロフィール

2000年生まれ。ハロー!プロジェクト「BEYOOOOONDS」のメンバー。
8月7日メジャーデビュー2周年の日に2冊目のオフィシャルブック『BEYOOOOONDS②』発売。

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取材・文=岩山有子・二子千草
撮影=平舘平
協力=UP-FRONT PROMOTION -アップフロントプロモーション-
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